01 起床
眠い。
いくらバイト先の《時空管》のビルが近いとはいえ、朝六時に到着する為には朝五時には起きていないといけない事になる。
初日から遅刻は嫌だったので緊張していたのだろうか、朝四時半には目が覚めてしまった。
今からもう一度寝たら、絶対に起きれないだろう。
早く起きすぎて食欲もないから、朝飯を食べる気もしない。
とりあえず寝巻きを脱いで、動きやすいと思われる私服に着替える事にした。
「服装は何でもいいけど、動きやすい格好で来た方がいいよ。」
と《時空管》のタマラさん言われたからだ。
あの人たしか、医者だって言ってたな。
それに、凄い美人だった。
当然のように、美女には好かれたい。
良い印象を与える為には、それなりの身だしなみは必須だろう。
さらに今日は、美少女と一緒にバイトする可能性がある。
美少女ではなくても、同世代の女子二人である事は確実だ。
夏休み前に買ったばかりの、新品のTシャツとズボンを選んで着替えた。
相変わらず黒一色で、これぞオレって感じ。
そういえば、昨日面接でやったVRゲームのキャラもこんな格好だったな。
ま、オレはブーツとかベストとかは、持ってないけど。
駅前のビルまで、ゆっくり歩いても十分はかからない。
山形さんの性格から想像すると、到着するのが早すぎても怒られる気がする。
出発間際に、昨日買った焼きそばパンを食べるとしても、あと五十分は時間を潰さなければならない。
とりあえず、持っていく物の確認だ。
まず、『スマホ』。
『モバイルバッテリー』。
まぁどう考えても、この辺はいるだろう。
現代社会においては、どんな時でも必須と言っていいしな。
腕時計を持ってないから、時間の確認のためにも必要だ。
『財布』。
困った時、必要になるかもしれない。
金を稼ぐのに金が必要というのもなんだが、そういうもんだろう。
『家のカギ』。
こんな朝早くに、カギを掛けずに出て行くのも無用心だ。
帰ってきたけど家に入れない、ってのもアホみたいだしな。
まぁ、ここまでは普段出かける時でも持っていく物だ。
さて、バイト専用アイテムの確認だ。
『タオル』『水筒』『IDカード』『印鑑』『プリント』。
……これだけだな。
タオルと水筒は真夏だし、たぶん必要。
で、『IDカード』。
オレの写真が貼ってあって、佐藤 翔と書いてある。
当たり前だけどな。
それがオレの名前なんだから。
IDナンバーは『50516』か。
また見ればわかるだろうけど、一応覚えておく事にしよう。
うーんと、50516、ゴーゴイム、ゴーゴイム、50516っと。
次に、『印鑑』。
佐藤、という印鑑だ。
これも当たり前だな、オレの苗字なんだから。
この印鑑は面接の書類作成時にも、何回も使った。
バイト代を受け取る時にも必要だと言う話なので、持っていく。
銀行口座への振込みではなく、現金での手渡しとなるらしい。
日払い制ってやつだ。
最後に、『プリント』。
これが問題だな。
絶対に持って来い、と何回も念を押された。
こんなもん、本当に持って行くべきなのだろうか。
プリント、ようするに、印刷物。
黒いインクで文字だけが印刷されたコピー用紙、それが全部で四枚。
内容はというと、全てが面接でやった適正検査に関する物。
ようするに、VRゲームについて書かれた書類だ。




