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プロローグ


「とりあえず、明日のバイトはアメリカ大統領の暗殺を止めてもらう事になる。簡単な作業になるだろうが、それで歴史改変は防げるからな。今度はVRゲームじゃなくて、現実で時空管理局の一員として、暗殺と歴史改変を止める訳だ。同じシチュエーションをVRゲームでやってんだから、現実の方がずっと簡単な位だぞ。」


また、くだらない冗談を言い始めたな。

オレの目の前には、メガネを掛けた顔に傷のある男が座っている。

ガラは悪いが、頭はかなり良さそうなタイプのイケメンだ。

家から近い、というだけで選んだ夏休みのバイト、の面接官の山形さん。

この山形さんは、この会社の代表という事だった。

会社組織の事は良くわからないが、ようするに社長みたいなものだろう。

で、その人が面白くも無い冗談を言っている。


「どこの世界に、時給千円のアルバイトで、大統領救出作戦をやらせる会社があるんだよ。」ってツッコミでも、入れた方が良いのかな。

いや、調子に乗ったツッコミでマジ切れ、とかありそうなタイプだ。

歴史改変がどうこうってのは、会社の名前が元ネタかな。

《何でも屋 時空管》っていう、タイムマシンでも扱ってそうな名前だし。

さっきやらされた、適性検査のVRゲームが、会社名とかの元ネタなのかも知れないな。

あれのゲーム内容は、『未来を救う為の大統領救出作戦』だったし。


「暗殺阻止任務は一時間位だが、移動込みで六時間分出す。時給千円だ。おいしい仕事だろ。一般の高校生だし、始めてのバイトで初日って事だから、サービスだと思えよ。移動と手続きを含めても半日だな。昼までには終わる。身体は、結構キツイかもしれんがな。」


そろそろ、冗談はいい加減にして欲しいもんだ。


「今回は、バイトだけで現場に行ってもらう事になる。あと二人、高校生の女の子が一緒に行くから、細かい事はその娘達に聞け。基本的には、お前がリーダーって事で任せる。VRゲームでは、お前の成績が桁違いで良かったからな。」


「さっき渡したプリントの、『成功条件』っつう項目に沿って、三人で失敗しないようにうまくやってくれりゃいい。何回も言うけど、絶対にプリント持ってくんの、忘れんじゃねぇぞ。時間跳躍ってのは、コストがかかり過ぎる。現代でいえば、スペースシャトルみたいなもんだ。タイムマシンで成功するまでやり直すとかは、ありえねぇと思え。」


「とにかく明日は、朝六時にここに来い。以上。帰っていいぞ。」


何か、色々とおかしな発言が混じっていた様な。

しかしまぁ、明日朝六時とか、バイトだけで現場、っていうのは冗談ではないだろう。

それより、もっとちゃんと明日のバイトの事を聞いておかないと。

同行する女子達にも、余計な迷惑がかかるかもしれない。

面接に来る時に、ビルの前ですれ違った美少女。

あの娘が、一緒に行くバイトの一人って可能性もある。

初っ端から、悪い印象は避けたい。

オレは、山形さんに向かって精一杯の愛想笑いを浮かべた。


「ハハハ。そういえば今、アメリカの大統領が来日してるんですよね。それであの、リーダーって事ですけど、作業の詳細が良くわからないんで、もうちょっと教えて貰えますか?」


すでに、スマホに夢中になっていた山形さんは、あからさまに嫌そうな顔をした。

その顔も、スマホの画面に向けたままで、視線さえも合わせようとはしない。


「あのなぁ、オレは暇じゃねぇんだぞ。さっきVRゲームやってる時に説明しただろ。あん時と全く同じ事をやりゃいいんだよ。今回の未来予測は精度が高い。お前なら一人で出来るから、お前がリーダーだ。説明終わり。プリントを読めよ、プリントを。」


「興味あんなら、社内のその辺見てくのはいいけど、オレに話しかけるな。気が散るから。あと念押ししとくが、機密事項は絶対遵守っての忘れんなよ。秘密を漏らした場合、脳内の全思考をスキャンされる事になるぞ。」


ダメだ。

マトモに答える気は、一切無いらしい。

ホントこの人は、さっきからいったい何を考えてんだろ。

未来予測とか、脳内の思考スキャンとか、冗談はともかくだ。

オレが、明日のバイトグループのリーダーなんだろ。

詳細を把握せずに現場に行ってミスったら、この人も困るんじゃないのか。

もしかしたら、明日はオレがバイトグループのリーダーってのも、たんなる冗談なのかもしれない。

一緒に行く、女の子達の指示に従え、というのが本音で……。

それなら、そうと言って欲しいよ。

何でも屋、という怪しい業種のバイトに、応募したの自体がそもそもの、間違いなのだろうか。


つい先ほど、適性検査と説明されて、VR形式のテレビゲームをやった。


「こんな感じで、明日もやってくれりゃいい。それで、何の問題もねぇ。」


オレが、適性検査ゲームをクリアした直後の、山形さんの言葉だ。

ゲーム中、後ろにいた山形さんから出された指示に、的確に従ったからそんな事を言われたのだろう。

もともと、テレビゲームは得意だから、反応も早かった。

だからこその、褒め言葉だと思う。

こんな感じで、明日も指示にすばやく従え、という意味だと受け取った。

適性検査で合格をもらえたのだから、バイトとして勤まる、っていう判断の筈。

しかし今の状態じゃ、何がどういいのかサッパリわからない。


それにアレは、素手と超能力でテロリストを倒すような、SF世界のVRゲームだ。

タイムマシンを使った未来の悪人による、アメリカ大統領暗殺を阻止するという内容のもの。

実際にバイトとしてやる作業は、何をするのか皆目見当もつかない。

もしかして、誰かにゲームの攻略法とかを教えるのが仕事だったりするのかな。

でも、身体はキツイかもって言ってたな。


体力測定・採血・予防接種までもあったのだから、肉体労働に近いものになる筈だ。

依頼がありきの何でも屋だが、具体的にやる作業が決まっていないだけかもしれないな。

だとすれば、会社の運営自体も行き当たりばったりなんじゃないのか。

変な冗談で誤魔化してばかりだし、ちゃんとバイト代が出るのか正直不安だ。


しかし、被害が出てないのに、こんなヤバそうな人と揉めるのも嫌だな。

社外秘を他で喋って、とんでもない賠償金を払わされたってニュースは聞いた事がある。

バイトの話を他人とするのは当分やめておこう。

それは別に構わない。

だが、しかし……。




社外秘の内容。

そう、社外秘の内容が馬鹿にされてるようで嫌だ。

契約書の社外秘という項目には三つ記述があった。


社外秘1『業務内容の詳細』

社外秘2『死傷者の発生』

社外秘3『契約書を二枚書いた事』


これって、ほぼ間違いなく、いわゆるブラックバイトってやつだ。

このアルバイトの募集をみつけた情報サイトも、なんとなく怪しかったし。

そもそも、『裏の契約書』なんてのがあるのは絶対おかしい。

美少女のバイト仲間が出来そうだから、一応、当分の間はやってみるつもりだ。

けど、本当は逃げた方がいいのかもな。


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