16 十階
エレベーターの外に出た。
十階の廊下には、やはり誰も居ないようだ。
アシスト情報のミニマップを確認してみると、すでに屋上の状態が表示されている様だ。
ひし形で赤く表示されたマークが、三人の強化人間だろう。
一応、屋上のマップイメージを頭に入れておく。
後はもたもたせず、階段まで行ってしまう方がいいだろう。
階段は左側だと言っていた。
数メートル進むと、階段への入り口があった。
ドアが開いたまま、固定されている。
入り口の前で、立ち止まり壁に背をつける。
屋上へのドアの前に、見張りが二人居るという話だったよな。
覗き込むようにして、階段の上の方を見る。
踊り場が見えるが、誰も居ない。
見張りは、もっと上に居るのだろう。
ドアの脇に、二人で立っているのかもしれない。
あぁいうのは、一人が不意打ちでやられてもすぐ分かるようにする為の筈。
見張りの役目が屋上に人を入れない事なら、下の階の通行人を見張る必要はない。
両方共が、一番上に居る可能性は高いな。
踊り場に着けば、オレが隠れる場所は無いだろう。
見つかった場合、銃口がこちらを向く。
高い場所に居て飛び道具を持っているなら、断然むこうが有利だ。
かといって、わざと音を立てて下におびき出すのも得策ではないだろう。
無線などで実行犯達に報告されたら、その時点で隠密行動が取れなくなる。
とりあえず、踊り場の一段か二段下まで行ってみるか。
しかし、未来の技術を持つサイボーグの一行が相手だ。
高度な技術を使った罠とか、レーザー遮断機等で作動する警報とかがあるかもしれない。
いや、違うな。
高度な未来の技術を、罠に使ってる可能性は低い。
警備室にアナログなトラップを仕掛けたって事は、未来の技術とかを安易に使わない予定のはずだ。
おそらく、ハイテクに疎い現代人の犯行に見せ掛けるつもりなのだろう。
あぁいうワイヤーとかを、わざと証拠として残していくのだ。
という事は、オレにも簡単に見つけられるような罠、絶対に見つけられないような罠、そのどちらかしか仕掛けられない事になる。
そして、プレイヤーのようなもっと上の未来技術の追跡者を警戒しているなら、絶対に見つけられない罠というのは存在しない。
ようするに相手は、未来の技術を使えない状態にある。
相手も追い詰められば、そんな事に拘っていられなくなるだろうが、その時はその時だ。
身を低くして、音を立てないように慎重に階段を上る。
ゆっくり過ぎる位で丁度いい。




