中_楽しい時を一緒に
「あ“ぁ~~~出なかったぁ。」そう言って机に項垂れている親友の梨花を私はストローを啜りながら眺める。
私たちは開場までまだ時間があったので近くのカラオケボックスに来ていた。
「ちょっと、呟くわ。」言うが早く被ったグッズたちを綺麗に並べ終えると財布から一枚の紙?のような物を取り出す。
「何それ?」私が問いかけると「あぁ、これ?」そう言って私にさっき出した紙を私に向ける。
それはかわいくデコられた梨花の推しのトレーディングカードで、そこには梨花のIDが綴られていた。
「う~ん。交換する際のお守り?みたいのなものかな。」そう答えるとさっき並べたグッズの隣にそっと並べる。
慣れた手つきで入力を済ませるとパパっと送信する。
「ね、鈴音はさ、今日この方観に来てるじゃん?」
そういって、さっき購入したパンフレットのキャラクターを指さす。
この中の方こういう作品にもご参加されてるのですが…どうですかね?
そうおずおずと私にCDのジャケットイラストを見せてくる。
イヤフォンを要求する手にはて?と思いつつ私はイヤフォンを差し出す。
私がイヤフォンを装着したことを確認すると再生ボタンを押す。
梨花が流したそれはとても短いものだった。
聞き終えた私は赤くなっているであろう顔のままきつく涙目で梨花を睨む。
「えへっ。どうだった?」全く悪びれた様子もなくてへへっと私に問いかけてくる。
そう、私が声優さんを調べるようなり、認識はしていたが踏み込むまいと一線を引いていたジャンルの音声であった。
「いやぁ、鈴音だったらきっとこっちに来てくれるだろうなって。」
梨花こうやっていつも容易く私を沼に嵌めてしまう。
呆れつつも一応怒った素振りとしてポカポカと軽く梨花を叩く。
ひとしきり叩くと「最低よ。この後お姿を拝見するというのに…。」と精一杯の悲しみを込めた声で梨花に伝えてみる。
暫くの無言の後、私たちはどちらからともなく笑いをこぼす。
私が梨花といて楽しいと思う瞬間はこういう所で、私に退屈する暇を与えない。
まぁお互いが相手の思考を尊重し、深く理解しあっているから出来る話でもあるのだが、
遅かれ早かれ私もそっちの世界へ足を踏み込んでいたことは容易に想像がつくが…。
お互いこういったものは共有し語り合いたいタイプなので、梨花にいくつかオススメを借りる約束をした。
暫くMVが流れる曲を探しつつ時間を過ごしていると梨花の呟きに動きがあったので、出る時間より少し早いが会計を済ませることにした。
無事、梨花の交換を完了させると私たちは入場待機列の最後尾に加わった。
「それにしても、もっと交換成功率が上がる方法ってないのかなぁ?」と梨花がうわごとのように呟く。
「交換成功率ってなに?」優しげに梨花は微笑む。「推しって人の数だけいるじゃない?ランダムグッズだったら当然、探してる人とダブった人がたくさんいるわけですよ。なのに上手くマッチングしないんだよねー。」
私は梨花の言葉を聞きながら考え込んでいると私たちの番がわってきた。
席を見つけ一旦着席すると、梨花はテキパキと観劇の準備を進める。
私も見様見真似で準備してると急に梨花が声を上げる。
「あっヤバ。ペンラの電源はいんない…。」私は無言で新しい電池を差し出す。
「鈴音ありがとう~。やっぱり鈴音はなんでも持ってるね!流石普段から大荷物ちなだけあるねぇ。」大げさに私に抱き着く素振りを見る梨花に照れ笑いしながら私たちは着々と準備を進める。
そんなこんなで注意事項を読むアナウンスが会場に流れる。
暫くのざわざわ音の後、時計の針が12を指す。
会場が暗転し、スクリーンに5の数字が表示される。
5から順番に表示される数字に私たちは声を揃えてカウントダウンをする。
クラッカーの弾ける音と共に飛び出してきた影たちに私たちは黄色い歓声を飛ばす。
次々に曲がうたわれてゆく、途中途中でMCが入りつつあっという間に最後の曲が終わる。
終演のアナウンスが流れるなか私は放心状態だった。
「鈴音!!!どうだった!!!」興奮冷めやらぬ状態の梨花がとう。
「凄かった…」何とかひねり出した言葉した様子の私をみて梨花はとりあえずツールを仕舞って外へ出るように促す。
外に出るとどっぷりと日は沈み。会場をペンライトをを一緒に写真に収めようとするお客さんでキラキラと輝いていた。
私たちも同じようにカメラを構え写真に収める。
「鈴音!またこうやってイベント一緒にこようね!!」梨花からのお誘いに私も満面の笑みで頷く。
お久しぶりですの方
お久しぶりです、愛羽真琴です。
初めましての方
初めまして、愛羽真琴です。
いよいよ次週鈴音と梨花のお話は最後となります。
次回公開予定日:2026.08.29
本巻
『娘を悪役令嬢にはいたしません!!』https://ncode.syosetu.com/n7207hh/




