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こんなんなりましたけど?  作者: 槙 秀人
episode2・まじっすか…これが真相?本能寺!
9/10

夢から覚めない夜と、中国大返しの狂気

「あれ!?なんで?」


目を開けた瞬間、俺は混乱した。

てっきり現実に戻っていると思っていたのに――

俺はまだ“そこ”にいた。


しかも、縄でぐるぐる巻きにされ、誰かに背負われている。


状況が理解できず、俺は思わず声を上げた。


「どゆこと!?」


背負っていた男が振り返り、安堵したように笑った。


「おお……気がついたか。よかった」

「よかった、じゃねぇよ!なんで俺、縛られてんの!?」


「お前、夜に毒蛇に噛まれたんだよ。三日前のことだ」

「……は?俺三日も寝てたのかよ!?」

「ああ、正直もうダメかと思ったぞ」


男の説明はこうだった。


俺は野宿した夜、寝ている間に毒蛇に噛まれた。

患部はひどく腫れ、熱も出て、意識も朦朧としていたらしい。


「放っておくわけにもいかんし、かといって俺もここに留まるわけにはいかん。だから、お前を縛って背負って馬で移動してたんだ」

「……マジかよ」


つまり――

現実の俺は病院に担ぎ込まれ、治療が間に合った。

だから“夢の俺”も死なずに済んだ。


そういうことか?


(あっちはあっちで大騒ぎだったろうな……寝てただけなのに蛇に噛まれてるとか、説明できるわけねぇし)


俺は頭を抱えたくなった。


だが、そんな俺の混乱などお構いなしに、俺達を乗せた馬は進み続けていた。


そして――

俺は“あの歴史的瞬間”を目の当たりにすることになる。


◆ 中国大返しの狂気


山道を抜けた先で、俺たちはとんでもない光景を見た。


地響きのような蹄の音。

土煙を巻き上げながら、馬が次々と駆け抜けていく。

その後ろには、槍を担いだ兵たちが息を切らしながら走っていた。


「止まるな! 京都まで突っ走るぞ!」


秀吉の軍勢だ。


その顔は――

笑っているようにも見えるし、狂気じみているようにも見えた。


いや、あれは多分ナチュラルハイだ。

疲労と緊張と使命感が混ざり合い、常人では理解できないテンションになっているのだろう。


「すげぇ……」


俺は思わず呟いた。


歴史書で読むより、遥かに迫力がある。

いや、迫力というより――

執念だ。


秀吉の軍勢は、まるで“時間そのものと戦っている”ようだった。


兵たちの顔は土と汗で汚れ、足取りは重い。

だが、誰一人として歩みを止めない。


その姿は、恐ろしくもあり、美しくもあった。


「これが……中国大返しか……」


俺は感動すら覚えていた。

だが、その感動の裏で、冷たい現実が迫っていた。



◆ 光秀の運命


秀吉の軍勢が通り過ぎたあと、俺たちは再び歩き始めた。


その頃、秀吉たちの動きを知った明智勢の空気は重かった。


誰もがわかっているのだ。この先に待つ未来がどんなものであるのか…


……このあと、五日もすれば光秀は敗走する事になるだろう。

その後、数日で山中にて討たれるはずだ…


「……南無」


俺は思わず手を合わせていた。


光秀は悪人ではない。

むしろ、真面目で、誠実で、優しい男だ。


だが――

歴史は彼に残酷すぎる。

もし光秀が生き延びたら……


(天下はどうなっていた? 俺が何もしなければ……歴史は予定通りに進むのか?)


龍馬の件が頭をよぎる。


俺が助けたことで、歴史は大きく変わった。

海援隊は貿易商として成功し、未来の子孫が俺を探しに来た。


あれは“良い改変”だったのかもしれない。


だが――

光秀の場合はどうだ?


彼を助ければ、歴史は大きく変わる。

もしかすると、日本の形すら変わるかもしれない。


(……俺に、そこまでの責任は負えねぇよ)


俺は深く息を吐いた。


そして、夜になった。


焚き火の明かりが揺れ、兵たちの影が地面に伸びる。


俺は横になり、目を閉じた。


(今度こそ……目が覚めたら現実だろ)


そう思いながら――


俺は眠りに落ちた。



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