4章 2&3 裏話、実況
出来ました。
間違えて消してしまうと、やっぱりキツいです。
何回目になるやら……
「あー、あー、失礼しました。
私、先程、大舞台で、武闘大会、開催の幕を上げさせて頂きました。
ルー・ルーセントと申します。
此れより、実況席にて、予選の実況をさせて頂きます。
皆様、宜しくお願いいたします。
さて、只今、Aブロックの予選出場者五十二名が大舞台に上がっております。
ここで、私と共に、実況席にて、解説等をして頂く、二名を紹介いたします。
まずは、私の右隣に座っている女性、今大会、出場者の愛用の武器を、形、重さ、バランス等を、そっくりに木材で作りあげた、木工魔法技師のアンリ・マーガスさんにお越し頂いてます。
本日は、宜しくお願いします」
「ひゃ、ひゃい、宜しくお願いします」
「焦らなくても、大丈夫ですよー?
普段、話される通りで大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます。
……改めて、宜しくお願いします」
「はい、宜しくお願いします。
次は、反対の隣の席に座っておられます。
此の方、帝国帝都に有る、傭兵ギルド本部、ギルド本部長、タイタン・ギガボルトさんにお越し頂いております」
「……宜しく」
「えー、両名をもう少し説明しますと、アンリさんは、傭兵としても実力者で、ランクは、何とAランクでございます。
木工技師として、木材に拘りが有り、あの魔獣の森にて、木材を取りに向かわれる強者でございます。
そして、ギルド本部長、タイタンさんは齢七十を超える年齢ですが、どう見ても五十歳くらいに見えます。
傭兵としても、未だ現役!
SSランクの持ち主でございます。
さて、両名の説明も終わりましたところ、出場者も出揃いました。
お二人は、Aブロックで、気になる選手はおりますでしょうか?
まずは、アンリさん、如何でしょう?」
「私、ですか?
そう、ですね……この中でというなら、武器の作成の時、思いましたが、あの小さな女の子でしょうか?
あの時は、あの娘の性格や、やり取りで、そこまで思わなかったのですが、今、こうして見ると、あの中で異様な感じがします」
「えーっと、あの女の子ですか?」
手元の出場者名簿を確認しながら、ルーは尋ねる。
「あ、有りました。
彼女の名前は、リシェル・シュザット。
ランクは、Cランクですね?」
「Cランク?
嘘でしょ?
そんなはずはないわ!」
「いや、そう言われても、実際、彼女はCランクになってますよ」
「……あの嬢ちゃんなら、アンリ嬢ちゃんの言う通り、本来はAランクだ」
「嘘?」
「だが、本人がランクを上げる事を拒んだから、Cランクのままだ。
あの嬢ちゃん、この三ヶ月前に帝都のギルドに来てな、依頼を受けまくっていたな。
それからギルド、受付で常に話題が上がっていたのは、嬢ちゃんだよ。
曰く、高ランクの魔獣を倒しまくる。
曰く、依頼成功率百%とか、嬢ちゃんが向こうにいた時は、そんな話題で一杯だったな。
ああ、それで、話は戻るが、ワシが気になるのは、嬢ちゃんを含め、四人だな」
「四人、ですか?
それは、どの選手達ですか?」
「それは、始まれば分かるさ。
ほら、そろそろ始まるぞ?」
「え、あ、本当だ。
皆様、失礼しました。
まもなく、Aブロック予選、始まります。
舞台を注目して下さい」
『Aブロック、予選、始め!』
「さあ、只今、審判から試合開始の合図が掛かりました!
各選手、動き出し、各場所で戦いが繰り出されております!」
「……やっぱり、あの娘、凄い」
「おっと、解説のアンリさん注目の選手、リシェル選手、前評価通り、強い、強い!
舞台の角端にいた、リシェル選手、四人の選手に囲まれましたが、一瞬で、それぞれ一撃で倒しました!
リシェル選手、次は中央に向かい歩いて行き、次々に、ライバル選手を倒して行きます!
ここで、他の選手にも、動きが有りました!
どんな攻撃も、自慢の筋肉で受け止め、笑顔で、相手を倒し、投げては場外へ!
正直、笑顔は怖いです!
筋肉自慢の選手、ゼノ・ノートン!
……全身も、武器も真っ黒!
まるで影その物!
相手の攻撃は、すり抜けているみたいに見えるのに、攻撃は全て気絶を与えております!
影の怪物、ナーグ・ハインド!
……その姿は、騎士そのもの!
いや、かつては実際、騎士であった美青年!
振る剣は確実に、相手の急所に打ち込まれ倒して行く。
凄まじい、傭兵騎士、ミッシェル・ライオット!
そして、中央まで、やって来ました。
リシェル選手!
この時点で、舞台に立っているのは、四人!
四人?
タイタン本部長、先程、仰有っていた四人とは……」
「ああ、この四人だ……ルー嬢ちゃんよ?
ワシを呼ぶのに、タイタン本部長って言い難いだろ?
もし、良かったら、本部長で良いぞ?」
「……本当ですか?
実のところ、ちょっと言い難かったです。
ありがとうございます」
「構わんよ」
「はい、さて、舞台に目を戻すと……何やら四人で話しているみたいですね?
ちょっと聞こえないので、此れを出したいと思います!
私が作りました。
その名も、魔法具、集音くん!
此れで、舞台の上で話し合っている声を拾いたいと思います!
行け、集音くん!」
ルーが、手のひらに乗っている、胡桃サイズの黒い玉に、玉から生えた双葉の芽みたいな物を、舞台に向け投げた。
『……嬢ちゃん、これからどうしたい?
出来れば、俺達と一対一で戦ってほしいんだが……どうだい?』
『良いですね、私も、貴方達とそれぞれ戦いたいです』
『本当かい?
悪いが、あんた達、一番手、譲ってくれねぇか』
『ふむ、良いでしょう。
先ずは、貴方に譲りでしょう』
「お、聞こえる……どうやら、ゼノ選手、ナーグ選手、ミッシェル選手の三名は、リシェル選手に一対一で戦いたいみたいですね?
しかも、リシェル選手は、それを承諾しているようです」
「流石に、三人で、嬢ちゃんを倒すのは、恥ずかしいか?」
「しかし、審判が、これを注意してますね?
どうなるんでしょうか」
「構わないじゃないかー、俺達はその戦い、見たいぞー!」
「そうだー」
観客から、様々なヤジが飛ぶ。
「おっと、観客からヤジが凄いですね。
本部長、本部長はどちらが見たいです?」
「そうだな……ワシは、一対一が見てみたい、だな。
アンリ嬢ちゃんは、どうだい?」
「……そう、ですね。
私も一対一を、見たいですけど」
「けど?」
「……私が、あの場で戦う事になるとしたら、三人で戦いです」
「だろうなー」
「やっぱり、私には、無理です。
一人でも、三人でも戦いたく無いです」
「構わぬ!
そのまま、やらせるが良い!
私達も、その戦い、見て観たい!」
来賓席より、国王の言葉が、大舞台、観客席に響き渡る。
「……流石、陛下だー!」
「いいぞー、どんどんやれー」
「お嬢ちゃん、頑張れー」
陛下の言葉は、国民を盛り立て、声援の声が大舞台に舞う。
「陛下からの許可が降りました!
まずは、中央に立つ、リシェル選手と、ゼノ選手の戦いが始まります」
『始め!』
「今、審判による戦いの合図が、再び入りました!
まずは、ゼノ選手!
いきなりの右ストレートを放つ!
が、これをリシェル選手、避ける!
避けて懐に入り、踏んだ?
リシェル選手、何と、ゼノ選手の足を踏んだーー!」
「おお、良い攻撃だ!」
「良いんですか?」
「勿論だ!
あの筋肉の塊だぞ?
あの体格の差だ、生半可な攻撃より、確実にダメージを与えられる!
見てみろ、ゼノは、今、隙だらけだ!
それに、踏むんじゃなく、槍で刺していたら、どうなる?」
「どうなる……ああ!
下手をすると、立てなくなる?」
「……なるほど、勉強になります」
「お、ゼノ選手、痛みが引いたのか、立ち上がりました。
今度は、リシェル選手からの攻撃、攻撃、攻撃!
槍で突く、スピードが速い!
ゼノ選手、防御してますが、そこから動けない!」
「……ゼノの奴」
「どうかしましたか?」
「嬢ちゃんを舐めておる、自分から一対一を望んでおいて、舐めておるわ!
……馬鹿め、嬢ちゃんの攻撃が、少しずつ威力も、スピードも上がっておるのに気付いておらん!」
「本当だ、少しずつですが、ゼノ選手の身体に傷が出来てきております!
ゼノ選手、苦悶の顔だ!
ゼノ選手、堪らず反撃!
あれっ?
今、リシェル選手に当たったと思ったんですけど……?」
「残像だな?」
「残像?」
「凄えな、あの嬢ちゃん、そんな事も出来るのか」
「居ました、いつの間にか、ゼノ選手の後ろに!リシェル選手、後頭部、延髄に攻撃!
クリーンヒットーー!
ゼノ選手、堪らずよろめく!
よろめきながらも、バックスイングで反撃!
リシェル選手、しゃがんだ、飛んだ、更にゼノ選手を足場にして、高く飛んだーー!」
「嬢ちゃん、トドメに入ったな!」
「一回転して、ゼノ選手の頭に会心の一撃!
決まったーー!
ゼノ選手、ダウン!
動かない、ゼノ選手、気絶だーー!
審判、リシェル選手に勝利宣言!」
「……よく、武器、壊れませんでしたね?」
アンリが、疑問を持って本部長に尋ねた。
「槍に魔力を通して、武器強化したんだろう。
実際、連続突きで、少しずつ魔力を通していたからな」
「あ、それでゼノ選手に傷が付いていたんですね?」
「そうだ!」
「なるほど……あ、次の相手、どうやら、騎士、ミッシェル選手が対峙するみたいです。
リシェル選手、連戦ですが、大丈夫でしょうか?」
「本人が戦うなら、良いんじゃないか?」
「しかし」
「決めるのは、あやつらだ。
そら、始まるぞ」
「……始め!」
「……さぁ、始まりました。
今度も、先制はミッシェル選手。
速い!
突きを繰りだし、元の位置に戻る。
一連の動作が速くて、リシェル選手、反撃出来ない!」
「あの動きは、毎日、何百、何千と繰り返えなければ、出来ないな」
「凄いですね」
「生半可では、出来ないな」
「あ、今度は、その場で、剣を何度も振った?
いえ、腕の動きが速すぎて、ブレてしか見えません!
リシェル選手も、槍をその場で一振り……何でしょう?
何か、弾いた音が聞こえましたが?」
「……魔力の刃だな?
剣を振った時、魔力の刃を飛ばし、嬢ちゃんが魔力を通した槍で弾いたんだろう」
「そんな事、出来るんですか?」
「出来る、かなり難しいがな。
しかし、嬢ちゃん、よく気付いたな?
……まさか?」
「どうしました?」
「いや、まさかな……」
「今度も、ミッシェル選手の攻撃。
またしても、同じ動作、魔力の刃……今、聞こえました。
風刃、風刃と言うみたい……て、リシェル選手も槍を回して、風刃?を出しました!
本部長、本当に難しいですか?
リシェル選手、更に、一連の動作を利用し、舞台を削り進む、大きな風刃を出しましたが、ミッシェル選手、避けた!
直ぐ様、反撃、剣を振り抜いたーー!」
「……馬鹿な」
本部長の呟きは聞きとられず、そのまま試合は続く。
「リシェル選手、受け止め、力負け?
飛ばされた、いえ、威力に合わせ飛んだみたいです。
直ぐ様、反撃、槍で、得意の連続突き!
って、あれ?」
「……何だ?」
「いえ、私、何か、同じ様な事言ってませんか?」
「言ってるな、多分、嬢ちゃんが意図的にやっているみたいだぞ?」
「やっぱり?
そうでしたか……あ、今度はリシェル選手の攻撃。
槍先を後ろに降ろし、大振りしたーー!
が、ミッシェル選手まで、全然届かない?
しかし、ミッシェル選手、慌てて右に避けた?」
ザンッ
「ああーー、リシェル選手が振った先、かなり遠くまで切れ込みが入った?
これって、さっきの風刃?
とてつもなく巨大な風刃を出していた?
あ、リシェル選手、続けて、体勢を崩したミッシェル選手に、物凄く速い、一撃を繰り出したーー!
これは、クリーンヒット!
ミッシェル選手、大きく飛ばされたーー!
ミッシェル選手、何とか立ちましたが、
降参、ミッシェル選手、降参しました。
どうやら、両腕が折れているみたいです!」
「物凄い一撃だったな?
……嬢ちゃん、途中で、槍に魔力を通すのを止めたみたいだな」
「え、どうしてです?」
「魔力無しで、あの威力だ……魔力そのままの状態なら、槍が身体を突き抜いていたわ」
「それは、リシェル選手、良い判断でしたね?
それより、アンリさん?
どうしました、先程から、静かですけど?」
「……え、あ、すみません、あまりにも凄すぎて呆けてしまいました」
「ああ、なるほど。
確かに、凄かったですよね!
しかし、リシェル選手、強いですね?」
「強すぎだ……どうやったら、そこまで強くなれるんだ?」
「いや~、本当です。
あの歳で、どうやったらなれるんでしょうね?
あ、次の、最後の勝負が始まるみたいです。
……って、また連戦ですか?
はぁ、もう、凄いとしか、言えません。
次の相手は、ナーグ選手ですね。
いったい、どんな戦いになるのでしょうか?」
「始め!」
「さぁ、始まりました。
って、両者、動きません!
どうしたのでしょうか?
……あれ?
ナーグ選手の影、伸びてません?
……やっぱり、伸びてます、リシェル選手に影まで伸び重なりました。
この後、どうなるんだ?」
「まさか、あれは影魔法?
闇属性だぞ?
あいつ、まさか、魔人か?」
「そんな?
あ、リシェル選手、何やら、動揺しています。
……ナーグ選手、今まで取らなかった帽子を取った?
って、な、どういう事でしょう?
ナーグ選手の顔、リシェル選手にそっくりです?」
「しかも、体格も同じみたいです!
あ、あれは?」
「どうしました、アンリさん?」
「ナーグ選手の持っている、剣」
「剣?
……持っていますね、あの真っ黒な剣がどうかしました?」
「私、リシェル選手の武器を作った時、槍の他にも、有料で剣も作ったんです。
その剣にそっくりです」
「どういう事ですので、本部長?」
「……考えられるのは、〈闇属性、幻夢魔法、写し身〉という魔法……闇属性は、余りよく分からんのだが、相手の魔力を吸いとり、その量により相手の姿、記憶、癖等を写しとる事が出来る魔法が有るのを聞いた事がある」
「そんな魔法が……あ、舞台の外に、兵士が集まって来てます。
あ、黒いリシェル選手……魔人ナーグが攻撃を始めました!
あの動きって、私の勘違いなら言って下さい。
リシェル選手と同じ動きに見えます!」
「ワシもだ」
「私も、です」
「次は、リシェル選手が攻撃を始めました。
先程、ゼノ選手にやった連続突きみたいですね?」
「うむ、少しずつ魔力を込めているな」
「魔人ナーグは、全部避けてます!
その避け方、正に、リシェル選手その物!
一向に当たる気配がありません」
「むぅ、やはり、嬢ちゃんの実力は、とんでもないな?」
「どういう事です?」
「嬢ちゃんの槍を、避けている動作は、やっぱり嬢ちゃんの動きを写し真似た物だ。
という事は、嬢ちゃんは凄いという事だ」
「なるほど……よし、決めた」
「何を決めたんだ?」
「それは……こうです」
ルーは、先程使った魔法具、集音くんを取り出し再び舞台に放り投げた。
その時、リシェルは攻撃を止め、後ろに飛び、距離を取った。
『……そう、そうだったんだ。
何で、こんなに苛ついていたんだろう?
分かってしまったら、どうって事無いのに』
『何を言っているの?』
『んー、貴方の魔法、貴方が生きて行くには、必要だったのかも、知れないけど……それ以上は望まない方が良かったかもね?』
『……どういう事?』
『そのままの意味だよ。
決着、つけようか』
「どういう事でしょうか?
今のやりとり」
「……どうやら、嬢ちゃん、何かに気付いたみたいだな。
ほれ、動くぞ!」
「リシェル選手、攻撃に出ました。
魔人ナーグ、風刃?
やっぱり、風刃も使えるのですか?
リシェル選手、避けない!
槍で一払い、そのまま石槌で鳩尾を突いた!
魔人ナーグ、膝をついたーー!」
『ぐぅっ』
『何で、って顔だね?
これが、答えだよ』
『どういう事……』
『分からない?
貴方は、普通の人より魔力は多いけど、それだけだよね?
私、自慢するつもりは無いけど、貴方の十倍以上有るんだ』
『それが、何?』
『貴方は、男で、私より筋力が有る。
だから、最初は分からなかったんだ。
つまり、貴方の真似魔法は、私の魔力を真似出来ない、それと貴方の身体能力は変わらない。
私は、貴方より力は劣るけど、それを補う、違うか……それを越えて私自身の魔力を使えば、貴方に負ける理由は無い』
『そんなの、分からないだろ!』
「どうやら、〈影魔法、写し身〉ではなかったみたいだな?
真似魔法?
既存か、オリジナルかは知らんが、今の話だと、制限が有るみたいだな?
身体能力と魔力、後、記憶か?
それらは真似出来ないみたいだ」
「じゃあ、先程、言ってた〈写し身〉の方が優れているという事ですか?」
「いや、〈写し身〉は技は知っているが、練習しなきゃ使えないはずだ。
だから、どっちが優れているか、一様には言えないな」
「なるほど……あ、魔人ナーグ、立ちあがりましたが、リシェル選手一瞬で両肩、両膝を潰しました」
「決着、だな!」
「おや?
リシェル選手、倒れた魔人ナーグの背中に手をあてました?
……ああ、魔人ナーグの姿が、リシェル選手から、見知らぬ青年の姿に!」
「あれが、本当の姿か?」
「魔人ナーグが、兵士に寄って連行して行きます。
どうやら、捕縛みたいですね?」
「そうだな、まずは調査から始めるみたいだな」
「ええ、そうですね。
しかし、此れでAブロック、予選勝者は、若干十二歳、リシェル・シュザット!
明日、行われる本戦に進出です!
皆さん、拍手を!」
ワァアアアーーーーーー!
こうして、Aブロックの予選が終了した。
以上、実況を終わります。
本編の中に、実況を入れられない技術不足の私です。
これからも、よろしくお願いします。




