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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月10日 日曜日
34/61

27話 決着

◆リザ◆


どうしようもないバカだと思った。

武装イスティント』を出さないと脅しても全く意見を変えないし、現場に来てみれば周りの人を助けるとかいって瓦礫を退かし始めるし。

人間はホント理解に困る。

いやこれは誠が悪いのかもしれない。

そして、契約者のとこまで辿り着けば考えなしに突っ込む。

もう、諦めた。

なんだかんだ毎回生き延びているし私はコイツを放っておく。

まあ取り敢えず応援だけしておこう。


それにしても、学生服を着ている相手の契約者。

とてつもない魔力の量を纏っている。

しかし、片腕を失っているようでかなり追い詰められているように見える。

誠とエクソシストを二人敵に回すような真似をしているが意図が読めない。


まあ、がんばれ誠。


◆桐川絶◆


エクソシストの方──ロックと言っていたか──が日本刀に炎を纏わせてこちらへ向かってきていた。


「刃に宿れ『吹雪ゲシュテーバー』」


もう一方に握っていた、老人の使っていた方の刀の刀身に霜が降り始めた。

二刀流。

手数が二倍に増えるというのは言い過ぎではあるもののこちらの腕は一本なので不利だ。

シルト』と呼ばれる魔術を使うことには成功したが、詠唱は集中しなくてはならず、先ほどのように移動の間に使うならともかく、間髪いれない打ち合いでは使いづらい。


ロックは炎を纏う刀で斬りかかってきた。


普通なら先ほど同様、足へ魔力を集中させ一瞬速度をあげ、後ろへ回り攻撃するのだができない。

そう、もう一人の方。

小早川が目に魔力を集中し、ハンドガンを構えたまま動かない。

あの『武装イスティント』の能力が判明しない以上、奴に背中を向けるのは悪手だ。

つまり、戦いかたとして俺と小早川の間にロックを挟む位置関係で戦う。

これは推測だがロックごと俺へ撃ち込むという発想を小早川はしないだろう。


なので派手には動けない。

炎の刀をステップバックでかわす。

もう一方の刀で攻撃される前にこちらから動く。

魔力の集中で一瞬だけ速度を上げる。

老人はこれを連続で使うことができていたが、まだ無理だ。

一瞬だけ。

隙ができた横腹にローキック。


「グフッ……!」


入ったが、魔力を身体全身に回しているようだ。

貫通もしなければ、致命傷にはならない。

コイツ。

先ほどからわざと魔力の集中をせず、攻撃をしてきている。

つまり、隙を付きこちらが攻撃しても致命傷は免れるようそう動いている。

しかし、裏を返せば魔力の集中を使わない以上、俺の攻撃を回避することもできなければ、俺に攻撃を当てることも不可能だろう。

これでは決着の先延ばしになるだけで全く意味がない。

そろそろクールタイムが終了する。

片腕だからといっても『獅子レオン』の威力が半分になることはない。

これを当てロックを戦闘不能に、起きた爆風に乗じて小早川を取りに行く。


腹を蹴られたロックは呻いたが、霜の降りた刀の方で必死に斬りかかってきた。

もちろん、腕に魔力の集中をしていないのでかわすのは容易い。

刀身へ触れるのは危険なので、手元を殴りにいく。

目への集中のみを残し、他は腕に魔力を集中させ──


ロックの胸を貫通し(・・・・・・・・・)何かが俺へ向かってきた。


──弾丸。 小早川か。


まさか撃ってくるとは。

読み違えたか。

不味い。

魔力の集中を腕にしたせいで、回避が間に合わない。

ならば弾丸を殴って弾く。


「なっ……」


弾丸は左腕をすり抜け、肩へ抜けていった。

そういう武装イスティントか。

痛みはない。


「魔を防げ」


よくわからない以上取り敢えず保留だ。

ロックの刀はその間に俺の目の前まで迫っていた。

なんとか魔力を全身へ戻し、横へ思いっきり飛ぶ。

受け身をとったが、腹に激痛が走り動きを止めてしまった。

もちろん小早川は見逃してはくれない。


「『シルト』」


飛んできた弾丸は壁に当たり、止まっ──


「それはもう見てる」


止まった弾丸を押し込むようにして二発目が一発目に当たり、『シルト』を突き抜けた。

弾丸は腹部に命中。


「チッ……」


先に小早川だ。

奴の『武装イスティント』の能力に何かされた以上、あちらが先だ。

クールタイムを終えて爆発を起こすのはもう可能になっている。

足に魔力を集中させ、駆ける。

途中何発か撃ってきたが、ジグザグに駆ければ当たらない。


「誠! 魔力戻しなさい!」


小早川は目への魔力集中を解除し、構えるが遅い。


「爆発《バース──」


「──許可する(パージ)っ!」


腹部へ貫くような痛みが走り、爆発のタイミングがズレ、その隙に小早川はバックステップ。

ゼロ距離で当てるはずだったが、小早川と約3mほど距離が生まれてしまった。


その距離に加え、小早川は顔の前で腕を交差させ防御の体勢は取っているようだった。


しかし、とはいえ即死ではなくなった程度で、戦闘不能には追い込んだだろう。


小早川は爆風によって後方へ飛ばされていった。


「誠っ!!!!!」


悪魔は割と必死になっているところをみるとやはり軽傷では済んでいなさそうだ。

案外あっけないものだ。

もう満足した。

腹部も増え出血が酷くなってきたし、ロックも片付けるか。


◆ロック◆


学ランは小早川へ爆発を撃った。

戦ってきてわかったが爆発は連続で撃てるわけじゃない。

小早川には悪いがこれでしばらく爆発は撃てない。


もうここしかない。


契約者は俺へ振り返り向かって走ってくる。


喰らい尽くせ(イェーガー)


これは炎を纏っている刀への詠唱ではない。

氷の方。

チーム戦には向かない無差別攻撃魔術。

刀身に前方広範囲に高速で飛んでいく氷の礫。

学ランは急停止し、拳で氷の礫を破壊し始める。

片腕一本故に全てを撃ち落とすことはできずに、三発契約者へ被弾した。


「うっ……」


腹部への直撃。

魔力を身体に回している奴に対して氷の礫のダメージなどさほどの物でもない。

しかし、それは当たり所によるというものだ。

今回直撃した腹部はハーデンバルトさんが『黒閃シュヴァルツ』を撃ち込んでいるし、小早川のダメージもある。

奴だって無理をしている。

現に氷の礫を回避ではなく、撃ち落とす方を選んだ。

もう奴には速く動き続ける体力は残っていない。

それに、『シルト』も使わないあたり、魔術を使えるだけでまだ使いこなせるわけじゃない。

契約者の怯んだ瞬間に足へ魔力を集中。

懐へ駆け込む。

今までは不意打ちによる即死を避けるため身体中に魔力を回していた。

契約者が体勢を立て直す前に斬り込む。

魔力を思い切り腕へ回した。


ボディーは完全にノーガード。


後は自分を信じるのみ。


そしてもう一つ。

小早川を。


◆桐川 絶◆


しくじった。

氷をもろに食らうくらいならば、身体に無理を言って回避をするべきだった。

片腕一本ということを頭では分かっていても、咄嗟の判断では考慮し損ねていた。

そのせいで、すべての氷を叩き落とせず怯み、ロックを懐へいれるへ目になった。

ロックはここぞとばかりに魔力を込め斬りかかる。

先ほどより段違いに速い。

防御を捨てて攻勢にでているようだが、俺が魔力を集中させればこれより早く殴りこめる。

こいつは何一つ学んじゃいない。

確かに腹のダメージはあるが、こいつの斬擊より速くボディーに一発叩き込むなど朝飯前だ。

残った左腕に魔力を集中しボディーへと叩き込み、あの老人同様風穴を開けてやる。


──血が飛び散った。


その血の出所は俺の左腕。


「なっ…」


激痛と共に左腕へ力が入らなくなる。

小早川の『武装イスティント』に左腕が撃ち抜かれていたことを思い出した。

というか、爆発を起こした時点でダメージ発現しないことからもう何も起こらないと思っていた。


──狙っていたのか。


自分へ攻撃を受けているにも関わらず、ロックのためにわざと残したのか?

あれはあれでクレイジーだ。

やはり、契約者は面白い。


炎を纏った刀がすぐそばまで来ていた。

腕に魔力を集中していたし、ロックの全魔力を込めた剣撃は容易には躱せない。

一歩引くのが遅れ、袈裟斬りを受ける。

動けなくなるほどの致命傷ではものの、攻撃はとまらず、もう一方の刀の追撃が見える。

足へ魔力を集中させ、ハイキックの要領で刀の腹を受け、身体へまで刃を届かせない。

反撃を掛けようと思った矢先、逆サイドから刀が迫る。

足のみで攻撃を防ぐとなると片足一本で自重を支えることになり、ふんばりが効かず次の攻撃へ移行できない。

いくら身体能力が高いとはいえ足のみでロックが全魔力を込めた二本の刀を永遠に防ぐのは難しい。

かと言って身を引こうにも片足しか地面にないせいで引くに引けない。


押されていた。


防ぎ損ねる。

鮮血が飛んだ。

足は火傷に凍傷で感覚が無くなり始めている。


自然と笑みが溢れていた。


ロックは一瞬だけギョッとしたが攻撃の手は止めない。


そう、これが俺の望んだ闘争だ。

だからこそ。

だからこそ?


「負けたくない」


自然そんな言葉が口にからでた。


不自由で生きた心地のしなかった毎日。

それが無くなればなんでも良いと、闘いの果てが敗北であっても良いと思っていた。

しかし、今俺は勝ちたいとそう思っている。

それは名誉のためでも、死ぬのが怖いからでもない。

ただ才能で蹂躙するだけの無意味な勝利ではない。

俺の全身全霊、全力を尽くした闘いの上で得る勝利が欲しい。

ここまで来て、負けたくはない。

あの老人だって、コイツも小早川も俺より身体能力は下なんだ。

なのに、何度何度も立ち向かってくる。

この強い想いを持った人間達に勝ちたい。


そんな、今までなかった感情が湧いてくる。



あぁ。

これが『想い』か。



「勝つのは……俺だ……!」


俺の『想い』に呼応して『武装イスティント』が光り始めた。

この土壇場でもう一段階『獅子レオン』は強く、高みへ昇る。


クールタイム短縮。


まだ『爆発バースト』を使ってからまだ10秒ほど。

今までなら撃てなかった。

殴り付けることのできる状態の腕ではないが、相手へ向けるだけなら造作もない。


小爆発クイックバースト


威力も1/3だが、クールタイムも1/3にし、爆発を起こす。

ゼロ距離なうえに、こいつのボディーはがら空き。

1/3の威力でも殺しきれる。


先程よりも規模は小さいが爆発が血だらけの腕から前方へ発生する。


これで決着だ。

右腕は消滅、左腕と腹には重症を負わされた。


本当にギリギリだった。


しかし、何にも変えがたいもの「勝ち」を手に入れた。


◆ロック◆


まだ爆発は来るはずがないと鷹をくくっていた。

その爆発へは対処できない。


放たれた爆発は俺を包み込み、爆発の直撃を受けた。


──『シルト』が展開されていなければ。


突然現れた『シルト』は俺を爆発から守った。


俺には『シルト』を高速で発生させるのは無理であるし、そんな余裕はなかった。


こんなに高速で『シルト』を貼れるような人は一人しか知らない。


しかし、ハーデンバルトさんは……。


ふと、ポケットが発光していることに気がついた。

ポケットの中に入っているものは一つだけ。

ハーデンバルトから預かったの指輪。


あの人はこれに詠唱を済ませていたのか。

しかし、何がトリガーとなって『シルト』が発現したのかは今となってはわからない。

俺が無意識に使ったのか、ハーデンバルトさんの残留思念なのか。


ほんとあの人は……。


これはハーデンバルトさんがくれた好機。

逃さない。


喰らい尽くせ(イェーガー)ァァァ!!!」


爆発で起きた煙の中から契約者に向けて刀を突きだす。

契約者はやはり反応が遅れた。

炎を纏う刀は胸に突き刺さる。


「っ!! 爆発バースト


連発かよ!

胸を刺されてなお、左腕を俺に向けた。

俺は刀を引き抜かず必死に一歩下がる。

一瞬、契約者が口角が上がったようにみえた。

武装イスティント』が起こした爆発は一瞬、パンっという音共に火花が散っただけだった。


ブラフか!!


一歩分、相手と距離が出来た。

俺も奴も一歩間合いを詰めなければ攻撃は当たらない。


次の一歩を相手より先に、

次の攻撃を相手より先に当てた方が勝利をつかむ。


「先はすまなかったな」


契約者は胸に刺さった日本刀を抜き、放った。


「もうお前を侮らない」


あの契約者の眼を初めてみたとき、何か空っぽのような、そんな気がした。

今は違う。

小早川と同じ契約者の眼。

その眼光はしっかりとこちらを見据えていた。


「俺のありったけの才能とちっぽけな想いを込めてお前を殺す」


「……両方ともちっぽけだよ」


「……」


「俺は、ハーデンバルトさんの想いを背負ってる。 小早川の想いも、殺された町中の人の想いも背負ってる。


てめぇ一人には負けねえよ」


にらみあって3秒後。

両者同じタイミングで一歩を踏みだした。

強く、速く、前へ。

速度はほぼ同じ。

奴は右足、俺はハーデンバルトさんの刀。

全身全霊を込め、雄叫びを挙げながら、互いへ向けて放つ。


刃が、つま先が首へ届く。

先に当たった方が勝つ。


契約者の方が一瞬速い。


いや。

諦めねぇ。

諦めねぇ!

ハーデンバルトさんの想いは無駄にしない。

小早川の分も俺が成し遂げる。


つま先が先に首もとへ到達した。

踏み込みが甘かったのか。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


──その時、一瞬だけ、誰かに背中を押された気がした。


鮮血が飛び散る。

つま先は首の皮一枚のみを切り裂き止まっていた。


俺の刃は契約者の首をはねた。


これで終わりだ。


ハーデンバルトさん。


「終わりましたよ」


少しはあなたに近付けましたか?

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