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スタート 0.3  作者: プーリ
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45/53

45

「失礼します」

 部屋の中では大量の段ボールがあった。

「久しぶりだな、どうした?」

「あのフライングのレースでお話が…」

「申し訳ないね、今忙しくて」

「異動ですか?」

「本部に異動だよ、ありがとう」

 岡本さんはそう言いながら握手を求めてくる。

「あのレースは君のミス、仕方ないよ」

「う~ん…」

「舟券は返還になり、お客様は損をしていない。あのレースの売上は減ったが、1日の売上を考えると、他の日より多く、損というレベルではない」

「どういうことですか?」

「君にも多くの仕事オファーがあった、誰も損をしていない」

「だから分からないんですよ」

「何が?」

「自分が動画を加工してまでフライングにさせられた理由が」

 岡本さんは手を止めこっちを向いた。

「誰も損をせず、1ヶ月過ぎた。もういいだろう」

「自分は1つのレースも諦めたくないんですよ」

 段ボールを組み立てながら岡本さんは話す。

「そろそろ退室いいかな?」

「自分を応援してくれている人にとっても、まだあのレースは続いています。失礼しました。」

 敗北の退室だ。

 間違いなく決定打に欠けていた。

 見えているゴールがあるにも関わらず、ボールを見失っているようなもどかしさ。

 きっと岡本さんは何かを知っている。

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