第13話 教会でのお勉強に大苦戦
マッシュポテトを作った翌日。
午前中はいつも通り、僕は畑の水撒きを行った。
それからお昼ごはんを食べた後、父さんに連れられ、教会にやってきた。
教会までは僕が歩いて1時間ほど。父さんなら20分くらいで行けるそうだ。
だけど、明日からは一人で来ないと行けないため、今日は僕が道を覚えられるように僕の歩くスピードに合わせてくれたよ。
教会はこじんまりとした割とよくあるイメージのものだ。僕は教会に入る前に何の神様なのかを父さんに聞いてみた。
「ねぇ、父さん。ここの教会は何の神様なの?」
「ここは農作物や畜産物の神様だぞ。この神様のおかげでうちもたくさんの芋が取れているし、農耕のスキルを授かる人が多いんだ。だからクーフも教会ではしっかりとお祈りをするんだぞ?」
「そうなんだ。お祈り頑張るね。」
そして僕は父さんに連れられ、教会へと入っていた。
教会へ入っていくと、黒の装束をまとったガタイの良い、短髪で白髪の男性が待っていた。
「こんにちは、神父さま。」
そういって父さんは頭を下げたので、僕も真似をして頭を下げた。
「こんにちは、アルフ。おや、そちらの男の子がアルフの息子だね。」
「はい、神父さま。クーフ、自己紹介をしなさい」
「こんにちは、神父さま。クーフといいます。よろしくお願いします。」
「こんにちは、クーフ君だね。こちらこそ、よろしくね。」
「では、神父さま。クーフをよろしくお願いします。」
「ああ、わかったよ。」
そう言って父さんは畑仕事の為、先に帰った。
「では、クーフ君。今日から教会で学ぶにあたって、まずは一緒に勉強していく仲間を紹介していくね」
「はい、よろしくお願いします」
「ははっ、ここで学ぶ間はそんなにかしこまらなくて良いよ。それじゃあ奥の部屋へ行こうか」
そして神父さまに案内されて、奥の部屋行くと20人ほどの子供たちと3人ほどのシスターらしき女性が居た。まあ子供と言っても、皆僕よりも年上なんだけど。
その全員が扉から入ってきた僕を見ていた。
「みんな少し良いか?今日からここで一緒に勉強をすることになったクーフ君だ!まだ3歳と少し年齢は低いがみんな仲良くしてやってほしい」
「「「はい!」」」
「ではクーフ君からも自己紹介をお願いできるかな?」
「はい!クーフといいます。3歳です。文字の読み書きと計算の勉強ができるように頑張るのでよろしくお願いします!」
そう言って僕が挨拶をすると、女の子たちからは「可愛い」という声があちこちから聞こえてきた。だが、男の子からは「あいつ勉強できんのか?」「遊びじゃねぇんだぞ」といった声が聞こえてきた。
なので、今後は男の方はなるべく関わらず、女の子に取り入ることにした。
ちなみに教会に通うのは7歳~12歳くらいであり、家庭の事情により家で勉強できる環境がない人は教会で教えてもらえることになっている。
まあ一言でいえば、貧乏な家庭は教会へ行き、裕福な家庭は家庭教師もしくは親が教えるといった感じだと父さんから教会へ来るときに聞いた。
なので、民度が低いことを僕はすでに了承済みなのである。
「クーフ君、困ったことがあればすぐに相談するようにね。それから文字の読み書きや計算はシスターたちから教わるようにね」
「うん、わかった。ありがとう!」
僕はあえて言葉を崩した。その方が心の距離感が近くなって魔法を教えてもらいやすくなるかもしれないからね。
それから一人のシスターが僕の横へやってきた。
その人は小柄なピンク髪の若く人懐っこい感じで、どうやらこれから僕に勉強のことを教えてくれるようだ。
「こんにちは、クーフ。私はフォーシラというわ。これからよろしくね!」
「フォーシラさん、クーフです。お願いします」
「あら、礼儀正しいのね。もっと砕けた感じでいいわよ。まずはクーフ君は文字の読み書きはしたことあるかしら?」
「ううん。僕、数はわかるけど、文字はわからないよ」
「そう、じゃあ一つずつ教えていくわね。ここに表があるから説明していくわね」
そういってシスターフォーシラはあいうえお表みたいな木版で説明を始めてくれた。
うん、すごく難しい。変に日本語の記憶があるからか、難しすぎる。僕は何度も頭がパンクしそうになっていた。
だけど、フォーシラさんへの印象を良くして勉強を付きっきりで教えてもらうために、今日は自分の名前“クーフ”だけは覚えて書けるよう一生懸命勉強をしたよ。教える側も成長してくれるのを感じる方がやりがいあるもんね。
ちなみに文字を書くことに関してはチート能力として備わっており、文字がキレイだとすごく褒められたよ。
まあ書くといっても紙ではなく、机に土が敷き詰めてあって、そこに鉛筆サイズの木の枝で描くって感じなんだけどね。だから余計に勉強しにくいんだよね。
そんなこんなで今日から始まった教会でのお勉強は1日2時間くらいである。そうでないと、明るいうちにお家に帰れなくなっちゃうんだよね。
そして今日は必死に勉強していたら、もう帰る時間になっていた。僕は一人帰り道、効率よく文字を覚えるためにはどうすればいいか考えていた。
家に着くと母さんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、クーフ。今日のお勉強はどうだった?」
「難しかったけど、楽しかったよ!」
そう言って僕は笑顔で母さんに微笑みかけた。
「あらそう、よかったわ。あなたにはまだ早くて、嫌になってしまわないか心配だったのよ」
「すっごく楽しかったから大丈夫だよ。僕ね、もっと勉強したくなったんだ。このお家に本とか文字の書いたものってあるの?」
そう、帰りながら考えていたのは家でも文字に触れることだったのだ。
内容がわからなくても時間があるときに地面に真似て書く練習をすれば、形は覚えられるかなって思ったんだ。
「いいえ、うちにはないわ。本などの書物はたくさん紙を使うでしょ?紙へ書き写すにはとても大変な作業だから書物は高級品なのよ」
「そうなんだ。書物は高級品でも紙だけだったらどうなの?」
「紙も高級品よ。」
やっぱり異世界特有の製紙技術やら印刷技術が乏しいのか、残念だ。
「あ、ただね、書き損じた紙は使うことができないから教会で引き取っているわよ?引き取ったあとどうしてるかまでは知らないけど。何かに使いたいの?」
「ううん。お家にあったら勉強したあとに見たらわかるかなって思っただけだよ」
「ふふっ、勉強熱心なのね。そんなに最初から頑張らなくていいのよ。遅くても12歳までには覚えられるようになるわ」
「うん!わかった!ありがとう」
僕はそう言ったものの、文字の習得を早める気持ちは変わらない。なぜなら、魔法学園に行きたいし、その為には文字の読み書きは必須だろうし、文字の読み書きが早くできればもしかしたら神父さまが“優秀な”僕に魔法を教えてくれるようになるかもしれないし。
だから何としてでも紙を入手しないと。木版だと重くて持ち運びには不便だしね。
そして翌日、教会へ行った際に神父さまへ相談をした。
「こんにちは、神父さま。神父さまのお名前って聞いてもいいの?」
「こんにちは、クーフ君。私の名前はエルプーリだ。」
「エルプーリさんって呼んでもいい?」
「ああ、いいぞ!ただ他の神父さまにあったときは名前で呼ばれるのを嫌がる人もいるから気を付けるんだぞ?」
「ありがとう、エルプーリさん!他では気を付けるね」
「今日も勉強頑張ってな。(私のことを名前で呼びたがるなんて、少し変わった子だな)」
「はい!頑張ります!」
よしっ、急がば回れ作戦その1は成功したようだ。役職で呼ばれるよりも名前で呼び合う方が親近感湧くもんね!ただ、ここでいきなり紙のことを聞いてしまうと、色々と勘繰られて逆効果になるからここは慎重にいかないと。
そして今日も文字の読み書きの勉強をした。フォーシラさんの教え方はとりあえず全ての文字を覚えるような教え方であったため、覚えるのが難しいのだ。
僕が覚えやすいと感じるのは、単語を課題にして文字を覚える方がイメージと結びついて覚えやすいのだが、教わる側がいきなりこんなことを言ってしまうと、生意気すぎてもう教えてもらえなくなるかもしれない。
かと言って、昨日は文字を見ながら自分の名前のところだけを必死で覚えただけだ。今後もこんな覚え方は効率が悪すぎる。なので、ここは“猿もおだてりゃ木に登る作戦”を実践していこう!
「ねぇねぇ、フォーシラさん。僕ね、自分の名前の文字を覚えられたから今度はフォーシラさんの名前を覚えたいな。だからその文字教えてくれる?」
「えぇ、もちろんいいわよ!(あら、この子可愛らしいところあるわね)」
そしてフォーシラさんの名前の文字を覚えることができ、フォーシラさんの僕への印象もよくなったはず。
じゃあ次の作戦だ。
「フォーシラさんの好きな動物ってなに?」
「んー、私は犬や猫が好きよ。」
「じゃあ僕、今度はフォーシラさんの好きな動物の名前覚えるね!フォーシラさんのことたくさん知りたいから」
「わかったわ、じゃあまずは犬から覚えましょう。(キャー、この子可愛すぎるわ!)」
そして僕はその日、フォーシラさんのことを知りながら、文字を覚えることが出来た。
どうやらフォーシラさんの年齢は24歳でペットにできる動物が好きで、食べ物はパンとチーズが好きなようだ。
というか、パンとチーズがあることに衝撃を受けたよ。この2つとお芋で料理のレパートリー増えるのになあ。
だって、パンがあるってことは小麦粉があって、チーズがあるってことは牛乳かヤギの乳があるってことだもんね?バターもできるから、じゃがバターみたいな料理もできるし、他には牛乳と小麦粉でホワイトソースも作れる。
そんなことを考えていたら、よだれが出そうになるけどね。
それから2週間ほどで僕は文字をすべて読み書きできるようになった。
「クーフ君、もうこれで全部の文字覚えられたね!すごく早くてびっくりしちゃったわ!」
「僕一人だと覚えられなかったよ。フォーシラさんの教え方がすごく良かったからだよ」
「いいえ、私こそあなたからたくさん教わったわ!特に読み書きを覚えるのには文字を覚えてからと思っていたけど、クーフ君が好きなものをイメージしてから文字を覚えていたのを見て、それが早く上達できる方法だと学んだわ!こちらこそ、ありがとうね」
どうやら、フォーシラさんは僕の意図を汲み取ってくれて、指導していてくれたようだ。寛容な人でよかったよ。
「それでね、クーフ君。明日からは計算のお勉強になるわ。計算のお勉強の担当は私ではなくて、あちらにいらっしゃるマシミアさんから教わることになるわ。明日また紹介するわね」
「うん!わかった!」
マシミアさんという方は長身で黒髪ロングのスレンダー美人な年増なシスターさんだ。
フォーシラさんは人懐っこい感じの雰囲気だったから話しやすかったけど、マシミアさんという人はクールな感じだから、話し方に注意しないといけないな。フォーシラさんが気遣った表現をしていたし、なんだか地雷女子な雰囲気プンプンだし。
そして翌日から計算を教わることになったのだが、知っていることを知らないふりをして教わるのがこんなにも大変だとは思わなかった。




