048.ワカサギ釣りの萩月去るは消える駅、春先、次は乗り継ぎ酒匂.840
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いま しお味をバカにしたな!
フィッシング環状線『萩月』の車内で小さな怒号が響いた。
子供姿の四方山さんは、コンソメスナックを頬張る私をぽかぽかと叩く。いつもよりもさらに小柄な体格からくりだされるパンチは全く効かなかったけれど、代わりに数個のスナックが床に放り出された。
うっすらと水気のつのる床に落ちたそれらにはすぐに薄黒い影がさして、しおらしく潰れた。
「そんな、バカになんてしてませんよ」
私は指先についたコンソメの粉をペロリとやると、また次いつ怒られるかしらと四方山さんの顔色をうかがいながら菓子の袋をカバンにしまう。
私はただ、しお味よりもコンソメ味の方が好きって言っただけなんだけど……。どうやらこの歳の四方山さんにはそれがお気に召さなかったらしい。
ていうか、普通逆じゃない?
「あ、おい。今『子供なんだからコンソメ味の方が好きなんじゃないの』って思っただろ」
「お、思ってませんよ」
「『家に来た小学生にはコンソメパンチ出しておけばアリみたいに群がって楽だ』って思っただろ!」
「それこそ思ってませんよ!」
私のことを勝手にスピーカーにしながら、「やれやれ」四方山さんはやっと腰を落ち着けて、背負っていたリュックの中から小魚のお菓子を取りだした。あれだけ言うんだから、しお味なんだろう。
「その通り、ワカサギの唐揚げだ。食べろ」
遮ろうとする私の手をするりとかいくぐって、四方山さんの手が口につっこまれる。変なところ器用なんだからなあ、もう。
しぶしぶ口にした唐揚げは……うーん、なんだろ、油っぽくて……たしかにしお味で……ほんのすこしざらっとして、最後に小骨のような後味で消えた。ごくり飲みこんで、喉の奥にひとかけら残った魚の残骸に下を伸ばす。えっえっ。変なとこに付いちゃったなあ。
「どうだ、美味いだろう」
「……そうですねえ」
否定はしない。とりあえずね。
「……というか、以外と小さいんですね、ワカサギって。鰯くらいあると思ってました」
「調べとけよ。年魚で寿命が一年だぞ。そんな大きくなれるもんかい」
ましてこんな凍りついた湖の中だ──。
私は足下、車両の床にあけられた直径十センチほどの穴を見た。そのすぐ脇で、さっき落としたコンソメスナックが不安そうに震えている。
穴の下ではガッチリと固まった湖面が列車の進むのと同じ速さで後ろに向かってゴオオと流れている。人間がすっぽり落ちてしまうことはないにしても、何か貴重品でも落としたら大変だ。私はカバンの口を確かめて、車内放送が流れるのを待った。
──『まもなく、湖上駅、湖上駅。お出口はございません。列車が完全に停止してからアイスドリルをご使用ください。ご入り用の際には、車掌、または萩月係員までお知らせください』──
雪のような音と共に、ゆっくりと列車が止まる。
四方山さんは早速取りだしたアイスドリルを手にうずうずと私の方を見たり、床を見たり、天井を見たりした。天井には最近じゃ珍しい白熱電球がぶら下がっていて、たまにジジジと音を立てて明滅した。『あたたかみ』とか『雰囲気』とかが大事らしい。
「危ないから私がやりますよ」
四方山さんは忠告を無視してアイスドリルに振り回されながらなんとか湖面に穴をあけきった。掻きだされた氷がかき氷のように床に散らばる。数度手で払って、量も冷たさもどうしようもないとわかって放っておくことにする。
四方山さんはというと、「ほれ」、穴あけとは打って変わって器用な手先でうねうね蠢くエサを釣り針にくくりつけていた。
「……ありがとうございます」
おい、お前付けてみろよ。からかわれないように慎重にお礼を言う。真下に垂れさがった釣り糸の先でそれが動く度、ぎゅっと握った釣り竿がほんの少しだけ揺さぶられるのがわかる。うね、ぐい、うね、よろ。…………。釣りよりも、次のエサをどうやって付けてもらうかの方が重要だった。
私の気持ちなんて知らず、四方山さんは自分の釣り糸を床の穴から湖の穴から通して、その奥へと垂らした。
 ̄丁 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「どう思うね」
「どう、とは?」
「この釣り針はどうなると思うね」
ああ、いつものだな。
思う。
いつの間にか四方山さんの持っていた釣り竿には幾重にも巻かれたリールがついていて、やろうと思えばいくらでも深く釣り針を垂らしてしまえるようだった。
そうだな。
いくらでも垂らせる釣り竿に、見えない水の底の世界。
…………。
「この湖の底が空に繋がってるとか」
「うむ」
カリカリカリ。
四方山さんはリールを繰る。
 ̄T ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
│
カ│繋がってる、とは?
リ│繋がってるんです。ゲームみたいに
カ│下と上がね
リ│あるいは上と下がです
カ│底が無いというのかな
リ│まあ
カ│それには同意だ
リ│水底は天井になるんです
カ│ロマンかね
リ│落とし物は空から降ってくる
カ│魚の雨っていうのも、もしかしてそれかね
リ│深海魚が空から降ってくる
カ│……もしかして
リ│ええ
カ│雨も海だと言うんだね
リ│面白いでしょう
カ│面白いかもね
リ│四方山さんはどうです
カ│そうだな私は
リ│はい
カ│対称だと思うけれどね
リ│は、タイショウですか
カ│ワカサギを釣る私たちが
カ│同時に彼らに釣られるのだ
リ│釣り糸を垂らしたのは私たちなのに?
カ│そう
リ│墓穴を掘ったわけですね
カ│そうでもないさ
リ│というと?
カ│まだ私たちの釣り糸は垂れている
リ│カリカリと深くまで
カ│彼らも釣り倦ねているのさ
リ│私たちを?
カ│そう、こちら側を
リ│フィッシング世界大戦なんですね
カ│宇宙戦争かもしれないよ
リ│多元宇宙戦争ですか
カ│随分静かな大戦だが
リ│釣りですからね
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カ│もう春だな
リ│そうですね
カ│この駅も直になくなるだろう
リ│氷が溶けて
カ│湖が湖になって
リ│また来年ですね
カ│
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カ│次は酒匂に行こう
リ│このままですか
カ│乗り継ぎがいるだろうね
リ│酒匂には何が?
カ│さあ。しかしきっと
カ│私たちのおしゃべりは続くだろう
カ│
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│カ
│リ
│カ
│リ
│カ
うろだく続はりべゃしおのちた私│カ
とっきしかし。あさ│カ
?が何はに匂酒│リ
ねうろだるいがえ換り乗│カ
かすでままのこ│リ
うこ行に匂酒は次│カ
│リ
│カ
ねすで年来たま│リ
てっなに湖が湖│カ
てけ溶が氷│リ
うろだるなくなに直も駅のこ│カ
ねすでうそ│リ
なだ春うも│カ
│リ
│カ
│リ
│カ
│リ
│カ
ねらかすでり釣│リ
がだ戦大なか静分随│カ
かすで争戦宙宇元多│リ
よいなれしもか争戦宙宇│カ
ねすでんな戦大界世グンシッィフ│リ
を側らちこ、うそ│カ
をちた私│リ
さのるいてね倦り釣もら彼│カ
でまく深とリカリカ│リ
るいてれ垂は糸り釣のちた私だま│カ
?とういと│リ
さいなもでうそ│カ
ねすでけわたっ掘を穴墓│リ
うそ│カ
?にのなちた私はのたしら垂を糸り釣│リ
だのるれら釣にら彼に時同│カ
がちた私る釣をギサカワ│カ
かすでウョシイタ、は│リ
ねどれけう思とだ称対│カ
いは│リ
は私なだうそ│カ
すでうどはんさ山方四│リ
ねもかい白面│カ
うょしでい白面│リ
ねだんう言とだ海も雨│カ
ええ│リ
てしかしも……│カ
るくてっ降らか空が魚海深│リ
ねかれそてしかしも、ものういてっ雨の魚│カ
るくてっ降らか空は物しと落│リ
ねかンマロ│カ
すでんるなに井天は底水│リ
だ意同はにれそ│カ
あま│リ
なかのういとい無が底│カ
すでが下と上はいるあ│リ
ねが上と下│カ
にいたみムーゲ。すでんるてっが繋│リ
?はと、るてっが繋│カ
│
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。る繰をルーリはんさ山方四
。リカリカリカ
」むう「
」かとるてっが繋に空が底の湖のこ「
。…………
。界世の底の水いなえ見、に竿り釣るせら垂もでらくい
。なだうそ
。たっだうよるえましてしら垂を針り釣く深もでらくいばえ思とうろや、ていていつがルーリたれか巻もに重幾はに竿り釣たいてっ持のんさ山方四かに間のつい
。う思
。なだのもつい、ああ
」ねう思とるなうどは針り釣のこ「
」?はと、うど「
」ねう思うど「
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