私の、会いたかった人。
ユリア視点です。
ベロニカとエドワーズがお部屋で仲良くしていらっしゃるのは大変喜ばしい事なのですが、待ってるこっちもそろそろ退屈になってきたので突撃することにしました。
「やっほー、そろそろ落ち着いた?」
私が2人に向かってそう声を掛けたとき、ベロニカはエドワーズのお膝の上に座っていました。相変わらず仲いいなぁ。
「ご、ごめんなさい……待たせてしまったわね」
「気にしないで~。久々に会えたもんね?」
私がニヤニヤしながら言うとベロニカは顔を真っ赤にしてしまいました。
((か、可愛い……))
私とエドワーズの心の声が一致したような気がしました。
「まあ、その……なんだ? お疲れ様、ベロニカ」
「……はい。もう、大丈夫ですわ」
そうは言うものの、ベロニカの表情はまだどこか不安そうで、よくよく見るとずっとエドワーズの服の裾を掴んでいました。
(そりゃそうだよ。あんな人に出会うなんてベロニカも思ってなかっただろうに……)
ベロニカを未然に守れなかったことを悔やんでいると、エドワーズが口を開きました。
「遅くなって、本当にごめん。ベロニカ。怖い思いをさせてしまった」
「お気になさらないでください。助けに来てくださって、本当に嬉しかった」
「ベロニカ……」
……おっと、また2人だけの世界に入っていきそうです。
「……エドワーズ、仕事とかはないの?」
「? ああ、向こう3ヶ月分は終わらせてきた」
「え、すご……でも、そろそろ帰るよね? ベロニカと」
「特に用事があるっていう訳でもないしなぁ。ベロニカに任せるよ」
「私ですか?」
「一足先に帰るか、みんなと一緒に帰るか?」
「そうですわね……まだ皆さんと一緒にいたいです」
「分かった」
それにしても、こうも皆が仲良くしていると……なんだか寂しくなってきてしまいます。
(なるべく考えないようにしてたのになあ……というか、最近はそれどころじゃなかったけど)
そう考えていたのが顔に出てしまっていたのでしょうか、2人が心配そうな顔をして私の方を見ていました。
「……私は、大丈夫だよ」
「ユリア……」
「もうすぐ会えるって」
「……」
何で、私より2人の方が落ち込んでいるような顔をするの? 私は平気だよ?
そう言いたかったのに、何故か声が喉の奥に引っかかって出てきません。
(何で……?)
訳が分からないまま呆然としていると、不意にぎゅっと抱きしめられました。見上げると、そこにはベロニカがいました。
「大丈夫ですわ。すぐに会えますわよ。私たちもいますし、寂しくないですわ」
「うん……」
そっと背中をさすってもらって、少し落ち着いたような気がしました。
「少し、外に出ません? 歩いていたら、気が紛れるかも」
「そう……だね。ありがとう。ごめんね、しんみりさせちゃって」
「気にしないでくださいまし。私たちは友達なのですから」
「ありがとう……」
私は本当に、いい友達を持ちました。彼女の言葉通り、少し外を歩いてきましょう。
「私も一緒に歩きましょうか?」
「ううん、大丈夫。ありがとうベロニカ」
「いえいえ」
「ちゃんと前見て歩くんだぞ」
「子供じゃないから分かってる」
私は2人のいる部屋から出て、最低限の荷物だけ持って『アイリス荘』を出ました。
慌ただしかった1日はもう終わりに差し掛かっていて、夕日が沈みかけていました。だんだんと人通りも少なくなっていって、遠くにちらほらと帰路に着く人たちがいるだけでした。
(やっぱり、寂しいなあ……)
一度考えてしまうとそれを頭から消し去ることは難しくて、さっきみたいに寂しさが溢れるような気分ではなくなったけれど、それでも寂しさはずっと残っていました。
私が何度目かのため息をついたとき、馬が走ってくる音が聞こえてきました。
(珍しい、もう夕方なのに。急ぎの用でもあるのかな)
こんな風に、彼がここに来てくれたらいいのに……。
そう思ってまた落ち込んでいると、その馬の音がだんだんと近づいてくるのが分かりました。そして……
「え……?」
特に何も考えずにその音の方を振り返って見てみると、そこには、私が会いたくて会いたくてたまらなかった人がいました。
読んでくださりありがとうございました。




