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久々のお出掛けです。

 私たちは王宮を出た後、街中までは馬車で行ってそれからは歩くことにしました。


「ユリアは行きたいところとかある?」

「あんまりよく分かんないかな……」

「分かった。じゃあ今日は行き先とか決めないでのんびり散歩しようか」

「うん!」


 というか、ジークは王子様なのに意外と外のことを知っているみたいです。ちょっと羨ましい感じもします。


「ジークはよく外に出るの?」


 街中に出てのんびり歩いているときに、そう聞いてみました。

「行ってた、かな。小さい頃によく王宮から脱走して街まで出てたから。見つかったらすごく怒られたけど」

「なんか意外かも」

「僕も元気な男の子だったってことだよ」


 流石に私が家から脱走したら怒られるじゃすまないですね……攫われちゃうかもしれないですし。

 ほんとに冗談じゃないんですよ。最近はかなり減りましたけど、それでもまだ貴族が身代金目的などで危険な目に合うのは無くなっていません。怖いのでどうにかなってほしいですね……。


「ん? ユリア、どうしたの?」

「何でもないよ、ちょっと考え事」

「そう? 何かあったら僕にすぐ言ってね? できることは少ないかもしれないけど、力になれるように頑張るから」

「ふふ、ありがとう。そんなに深刻な事考えてたわけじゃないから大丈夫だよ」

「そっか」


 ジークは笑って繋いでいた手を握り直しました。私が少し力を入れて握り返すと、ジークは少し驚いたような顔をした後破顔して……え!?


「ちょ、ちょっと待ってジーク、ここ、道の真ん中……!」


 何で、私、ジークに抱きしめられているの!?

 人が周りにいないわけないし恥ずかしい……でも、それ以上にジークの暖かい腕の中にいるのがとても幸せでした。


「じゃあ、道の真ん中じゃなったらいいの?」

「……もう、知らない」


 口をついて出てきたのはこんな可愛げもない言葉でした。でも、ジークには私の気持ちが伝わったようです。


「此処の近くのに僕がよく行ってるカフェがあるんだ。そこなら個室もあるし、恥ずかしくないよね?」

「……分かったよ」


 何が恥ずかしいものか! と言いたいところでしたが、ぐっと我慢しました。


「いらっしゃいませ。2名様でしょうか?」

「ああ」

「会員証をお持ちですね。こちらへどうぞ」


 そんな短い会話の後に、カフェの一角にある個室に案内されました。

 私はどうしようかとすこし悩んだ末、ジークの隣に座ることにしました。


「……ユリア」

「何?」

「ぎゅーしてもいい?」

「どうしたの? 急に」

「なんとなく」


 そこまで言うとジークは、私の了承も待たずにいきなり抱きついてきました。


「ちょ、何どうしたの? 何か嫌な事あった?」


 どことなく必死そうな彼を不思議に思い、そう問い掛けてみました。すると、驚きの返事が返ってきました。


「だって、ユリアすぐどっかに行っちゃいそうだから」

「……どういうこと?」

「ユリアは僕がいなくても生きていけるでしょう? しっかりしてるし。でも僕は、ユリアがいないとダメなんだ。ユリアがいないと不安で頭がいっぱいになるし、ユリアが僕のことを嫌いになったりしたら、なんて考えただけでもすごく怖くなる」

「そっか……」


 私は一呼吸おいて、ジークに話しかけました。


「ねえジーク、私はジークが思ってるほど強くないんだよ。そりゃ前までは自分1人がいいって思ってたけど、ジークに出会って、ジークを好きになって、誰かと一緒にいるのが嫌じゃなくなったんだよ?」

「ユリア……」

「それに、私だって不安になることあるよ? もし心の中で嫌われてたら、とか数えだしたらキリがないぐらい」

「僕はユリアを嫌いになったりしないよ?」

「私もジークを嫌いになったりしないよ」


 ジークの真似をして言ってみました。ジークはまた笑ってくれました。


「ユリア、ありがとう。大好きだよ」

「私も。ジークのこと大好き」


 なんかよく分からないけれど、流れでこんな風になってしまいました。

 私たちはその後夕方まで、そのカフェでいちゃいちゃしていました。






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