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古代文明人の生き残り  作者: 十良之 大示
第2章:森林国アハムテヘト
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044:検索

 フランとの戦闘中にも、視界の端で番台(ナンバーズ)との戦闘を記録していた。

 一言で言い表すのであれば、目の前の男の強さは「異常」である。

 ただでさえ頑丈な鋼鉄の甲冑の上から、殴る、蹴る――たったそれだけで番台(ナンバーズ)が次々に破壊されていく。

 明らかにマリアナの認識するヒューマンの強さを遙かに凌駕していた。


 勿論第二世代以降のオートマタは素材からより頑強な物となっているので、マリアナにも同じ芸当が出来ないわけではない。しかしそれをやってのけたのはオートマタではない。

 マリアナは素直に男に称賛を送る。



「正直驚いた。ヒューマンが私達と渡り合えるなんて」



 地面に散らばった番台(ナンバーズ)を見渡す。



「おかげでここの結界を張る者の捜索が大幅に遅れてしまう」

「そりゃどういたしまして」



 皮肉げに微笑む男に、あまり感情が揺れ動く事のなかったマリアナの眉がピクリと反応する。



「……何が何でもあなた達どちらかに居場所を喋ってもらわないといけなくなった。アスタ・バレッジ=ズ・アナスタシア。あなたを排除する発言は訂正する。けどあなたは別」



 番台(ナンバーズ)の骸の上に君臨する男を睨む。



「あなたは危険。お邪魔虫という言葉も間違っていない。……あなたは彼らの仲間?」

「仲間かと聞かれると……別にそういうわけじゃないな。成り行き上こいつらに手を貸す形になってはいるが。ところで――そこに転がってる喧しい男は何で急に静かになったんだ?」

「緊急停止プログラムを実行した。再起動も私以外には不可能」

「へえ。そんな事が出来るのか」



 男は淡白にそう呟く。

 まるで露程も心配している様子が見られない。仲間ではないという発言は(あなが)ち間違いではないようだ。


 だがフランの仲間であるアスタの反応は当選違ったが。

 倒れて動けなくなったフランに、アスタが懸命に呼びかける。当たり前だが起動コードの奪われたフランが目覚めるなどという馬鹿げた現象は流石に起こらない。


 一応マリアナにも感情と言うべき機能が備わっているので、少年が真剣な顔をして必死に男を起こそうとする姿を理解できなくもないが、それにより奇跡が起こる事は決してない。


 故にマリアナは彼らを無視して目の前の男だけに集中する。



「他のオートマタにもこんな芸当が出来るのか?」

「私は特別。彼らを現場で指揮する為に与えられている様々な権限があるから」

「ま、そりゃそうだよな」

「今度はこちらの質問にも答えて。あなたの名前は?」

「今から消すって奴の名前なんざどうでもいいんじゃないか?」

「…………」

「はは、そんな睨むなって」



 男はぽりぽりと頭をかくと少し目線を外した。そして少し顎に手を当てたかと思うと、またマリアナに目線を戻す。



「……まあ名前ぐらいはいいか。俺の名はデレピグレオ。たまたまこのタイミングでこの国に居合わせただけの者だ」

「デレピグレオ……」



 マリアナが声に出してその名を反芻すると、すぐにオンラインで検索をかける。


 内部データ検索――該当者なし。

 帝国データベースにアクセス――該当者なし。

 各国データベースにアクセス――該当者あり。


【対象――ベルンシュタイン王国。

 王都侵攻戦において初めて表に姿を現したガリバ族の長。王都侵攻戦においてはその側近である二名が参戦し、当時帝国四神である“白虎”を捕縛。さらに帝国領防衛都市ハッタンの戦力を無効化し、王国軍と共にこれを陥落させる。

 その後、アルクライム・フォン=ウィンゲーツ・ベルンシュタインと同盟を結ぶ】


【追加検索――ガリバ族。

 金樹海に集落を持つとされる部族。ベルンシュタイン王国と同盟関係にある。人口は不明】



「――ガリバ族……?」

「へえ。知ってたのか」

「あなたの名前を検索にかけただけ」

「……成る程、インターネットみたいな機能まで持ってるのか」

「けど情報を見る限り、あなたは王国と同盟を結んではいても森林国とは手を結んでいないはず。何故彼らに手を貸そうとするの?」

「さっき言ったろ。成り行き上だって」

「……そう」



 デレピグレオの返事にマリアナはそう短く返した。


 金樹海と言えば番台(ナンバーズ)を総動員しても未知しか得られる事のなかった森の名称だ。

 空を飛ぶことのできるマリアナが開発されてからも一度空中から探索を行った事もあったが、先行隊の調査結果通り何も特筆すべきものはなかった。

 分かったのは森の特異性のみ。無作為に自分の居場所が転移させられてしまうというものだ。マリアナは空に逃げる術があった為、金樹海の中に降り立ってもすぐ脱出する事が出来たが、番台(ナンバーズ)らを出口へ誘導するのは実に骨の折れる作業であった。


 何せ転移の周期はバラバラで予測は不可能。実験的に転移の周期と転移場所を研究した事もあったが、何一つとして答えは出ぬまま徒労に終わってしまった。

 以来、あの森の調査は優先度が最下位となり、放置され続けていたのだが――



(あの金樹海に住んでいる? どういう事?)



 疑問符が急浮上するがこれはチャンスだ。

 オートマタとしての(さが)とも言える。不足する金樹海のデータを採集するまたとない機会であった。



(知りたい事が増えた)



 マリアナは空中での姿勢制御を片方の手だけに任せ、銃口をデレピグレオへと向ける。



「……金樹海で暮らすガリバ族、その族長デレピグレオ。――気が変わった。あなたもやっぱり生け捕りにする事にする」



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