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古代文明人の生き残り  作者: 十良之 大示
第2章:森林国アハムテヘト
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035:善戦

 鎧の男――オートマタが動き出す。

 まるで鎧の重さを感じさせない敏捷な身のこなし。刃が一瞬でアスタの首元に迫り来る。



「拘束の意味を理解してるのか、こいつ?」



 だが素早いと言っても目で追えない程ではない。近接戦を得意とするアスタからすれば、まだ遅いと言えるだろう。

 アスタは半身になって剣を躱すと、がら空きの胴体目掛けて拳を叩き込む。



 〈透し・(いかづち)



 鎧と接触した(てのひら)からパチっと火花が散ったかと思えば、それは直後に稲光をもって鎧全身へと電撃が駆け巡る。


 本来身を守るべき鎧も、アスタの魔法格闘技の前では恰好の的にしかなり得ない。そこに頑丈さなど一切考慮される事もなく、人体に直接ダメージを与える檻となる。これが生身のヒューマンであればこの一撃で戦いは終了だ。


 だが相手はヒューマンではない。それだけが気がかりではあったのだが――



「…………!」



 手から剣が離れる事は無かったが、オートマタはその場で膝をつく。



「あの男には通用しなかったが貴様には効くようだな」



 本来あるべき光景にアスタは笑みを浮かべた。



「ではとっとと終わらせてもらうぞ!」



 そしてすかさず二撃目を放つ。

 膝を折るオートマタにこれを防ぐ術はない。全身に電流が奔り、ガチャガチャと小刻みに鎧が音を鳴らす。



「……ジジ……、……対……象ノ…………ヲ、分セ………………シマ……。……了」



 兜の下からポツポツと紡がれる声。先程よりも凝り固まった音声になっているという事は、攻撃が通用している証拠と判断しても良いだろう。

 だが妙だ。兜の下から覗かせる視線は、未だアスタを捉えて離そうとしない。



「まだやるつもりか?」

「…………」



 オートマタは答える代わりに立ち上がってそれを示す。



「成る程。いい度胸だ。ならば次で終わらせてやる!」



 バチバチッと拳に電気を纏わせてアスタが駆ける。



「目標確認。コレヨリ拘束行動二移行シマス」



 だがアスタの拳が届くより先に、新たな声がその場に乱入する。



(後ろ……⁉︎)



 介入してきた声に慌てて背後を振り向く。

 するとそこにあったのは一振りの刃。ギラリと刀身を光らせて、アスタの首を落とさんばかりに迫っていた。



「チッ!」



 瀕死の敵に刺そうとしていたトドメの一撃を中止し、旋回させた拳で剣の横っ面を叩く。

 そこにいたのはもう一体の鎧の男。新手であった。

 しかも――



「対象ヲ確認」

「対象ヲ確認」

「対象ヲ確認」



 続けざまに一体、二体、三体と次々に出現する。



「くそッ、鬱陶しい奴らだ」



 忌々しそうにアスタは悪態を吐き、拳を構える。

 オートマタが合計五体。しかし性能が一体目と同程度であれば、何とか勝つ事は出来るだろう。

 幸いな事に相性は良い。確実に一体ずつ倒していけば数は減らせる。スピードも対応できない程ではないのだから。


 しかし安堵したのも束の間。

 木陰からまた彼らはやって来る。

 ガシャリ、ガシャリと音を立てて。



「…………全く、全員集合ってか? 冗談じゃないぞ……!」



 ゾロゾロと連中は並び揃う。

 総勢二十。とてもじゃないが、流石に一人で対応できる数ではなくなった。



「あなたがこの国の王?」



 そして更に一名、彼らの間を闊歩して登場した一人の少女。歳はアスタと変わらないぐらいだろうか。だが纏う雰囲気は一般人と明らかに異なる。



「そうだ。そういう貴様は何者だ?」

「帝国四神の一人、“玄武”マリアナ・ヴェンデッタ」

「帝国四神だと⁉︎ ……そうか、ならば貴様もオートマタというわけか」

「……! 私たちのことを知っている……?」



 マリアナの無機質な表情に驚きの色が浮かぶ。



「聞きたいことが増えた。あなたは生け捕り。でもその前に教えて。結界の解除の方法」

「ふん。我が教えると思うか?」

「思う。捉え、拷問すれば高確率でヒューマンは口を割る」

「ふん、面白い。そう思うならば我を捕まえてみるがいい。返り討ちにしてくれるわ!」

「あなた達はいい。彼が逃走に徹した時、万が一にも逃げられないよう包囲して待機」



 マリアナの指示に従い、他のオートマタがアスタらの周りを取り囲むようにして待機する。


 好都合だ。

 わざわざ戦力を分散させてくれた事にアスタは感謝する。あれらが一度に襲いかかってくれば一たまりもないが、相手が目の前の一体ならばそれに集中すれば良いだけのこと。


 勿論、見た目が少女だからといって侮るつもりは毛頭ない。しかし多対一より一体一の方が現状勝利が見込めるのは後者のはずだ。

 それにオートマタが自分を監視するのであれば、その間民達が逃げる時間を稼げるというもの。アスタからすればありがたい話であった。



「良いのか? 我を貴様一人で止められるとでも?」

「可能。それ程時間もかからない」



 マリアナがきっぱりと言い放つ。

 慢心や自信というよりは、確固たる確信を帯びたはつげであった。



「いい度胸だ。なら本当に可能かどうか、試してみるがいい!」


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