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~・~ 10(2) ~・~


コンコンコンコン


ドアが叩かれる音で起きた。


昨日夜遅かったから今日は午後から行くつもりだった。だから、目覚ましはかけずに寝たけど…誰?


眠気に抗いながら前髪だけ整えながら扉を開けた。


眩しくて目が開けられない。


「…だれ……」


「俺!」


俺で分かるわけないじゃん。本当に誰なの。


うっすらだけ目を開けたらみとだった。朝からテンション高いなぁ…


「…どうしたの……」


「ちょっと来て!」


いきなり腕を引っ張られた。


ドタン!


寝起きだったからバランスを崩して転倒した。痛みで一瞬だけ目が覚めたが眠気がすぐに戻って来た。


「あ、ごめん。引っ張りすぎた」


「いや、大丈夫…」


顔面は避けたし手をついたから怪我はしていない。ただ膝が痛いだけ。


「一階に来て!」


「今行くから……」


眠い。寝たい。今何時。体感8時。


「やっとね完成したんだよ!」


何が。主語がない。主語をくれ。


「あ、みと!さっき大きい音したけど大丈夫?」


「勢いよく引っ張りすぎて朔が転んだ」


「あ、みとが転んだんじゃなくて朔が転んだの?」


「バランス崩した…」


3人集合していた。謙斗と景が着替えてるからこの後仕事に行くのかな。


時計を見たら8時を過ぎたところだった。僕の体内時計は狂っていなかった。


「朔おはよ!めっちゃ寝起きだね」


「珍しいな。お前がそんな姿見せるなんて」


「…寝てた…でも、ノックで起きた……」


目がやっと慣れて来た。そして、思い出した。今カラコンをつけていない。正面を向いたらバレるかもしれない。大ピンチ。


「朔もこの時間まで寝たりするんだ」


「僕だって寝るよ…昨日寝るの遅くなったし…疲れたし……」


「起こしちゃってごめん」


「良いよ…別に…それより何が完成したの…」


「そうそう!頼まれてた衣装が完成したんだよ!」


…あぁ…そういえば衣装頼んでたわ。すっかり忘れてた。


「ありがとう…」


受け取ったし部屋に戻ろうかな。髪整えなきゃだしパジャマのままだし……ん?パジャマのまま?


「…ちょっと待って。着替えてくる」


衣装を返却して急いで着替えに行った。


何やってるんだ。僕は。パジャマのままで人前に出るなんて。しかも髪もボサボサだし。寝ぼけてるにも程がある。こんなだらしない姿を見せるなんて。


ついでにカラコンも入れておこう。


よし、これで大丈夫かな。身だしなみ大丈夫。できれば顔を洗って歯も磨きたい。でも、流石にそんな時間はない。


急いでリビングに戻って来た。


「あ、通常の朔に戻っちゃった」


「あの寝ぼけてる朔も新鮮で良かったんだけどね」


「流石に勘弁して」


あぁ…失態晒しちゃった…いつもみんなより早く起きるから…


「ねぇねぇ着替えきて悪いんだけど着てみてくれない?」


「え、?これを?」


…別に減るもんじゃないし良いけど髪型ちゃんとしないと似合わないと思う。前髪もセットして後ろ髪はハーフアップとかにしておかないと…


「で、髪型もいじらせてくれたり…」


「お面あるよ?」


…仮面舞踏会みたいな仮面だな。目のところが小さいから視界が良くないけど。だからこそみんなからも見えないのか。


しかもちゃんとこの衣装に合いそうなお面をしてる。用意周到すぎないか?絶対やる気満々じゃん。


「ちょうど今前髪で隠れてる部分は隠れるよ?」


「そうそう。顔の半分は俺らに見られない」


この有無を言わさない圧。断っても何か言って言いくるめる気だな。これ。


「……どうせ反論しても意味ないんでしょ…」


「よくわかっていらっしゃる」


「…はぁ……お面取らないでよ」


僕は観念して衣装に着替えた。


袖が片方無くなってるけどこれはこれでありだと思った。ただ寒いだけ。花も中心につれて段々赤くなっている薔薇に変わってる。


いくらなんでも変わってるところがありすぎるでしょ。好きにしてって言ったのは僕だけど。


「着替えてきたよ」


戻ってみと達に見せた。


「え、めっちゃくちゃ良いじゃん!朔のスタイルの良さが際立ってる!」


「朔って赤が似合うんだね」


「ふ〜ん。かっけぇじゃん」


割と好評だった。良かった。これでなんか違うとか言われたらどうしようかと思った。でも、リメイクした本人から感想が聞けてない。大丈夫だったかな。


「…感極まって泣きそう」


「え、嘘。大丈夫?」


「想像以上に似合いすぎてるし、俺がやったんだって思うとなんかもう…」


えぇえ?それで泣くの?いや、泣いちゃダメっていうわけじゃないけど…


「みと良かったね〜」


「じゃあもっとかっこよくしないとだね。朔そこの椅子に座って」


指さされた椅子に座った。髪は晴信がやるみたい。


「ねぇねぇこれ付けられる?」


「これ?全然大丈夫だよ」


一体何をつけようとしてるのか。


今までは人に髪を触られるの嫌いだったのに…なんでこう晴信だったら許してしまうのか。晴信なら痛い事しないって分かってるからかな…


「朔の髪はサラサラだね」


「別に普通だよ」


「髪質が良いんだよ」


晴信の方がサラサラだと思うけどなぁ。僕なんてただシャンプーしてトリートメントしてるだけだし。


「…朔って結構筋肉質なんだね」


謙斗が喋ったと思ったらいきなりどうしたんだろう。筋肉質?どこをみて判断したの?着替えてるとこ見てないのに。


「細いけど引き締まってる」


「こいつ見かけによらず筋肉あるぞ」


「だよね!ちょっと触ってみたい」


手をワキワキさせながら言ってくる。え、きもt……なんでもないです。


身の危険を察知して自分の体を守るべく椅子の上で丸まった。


「でた。謙斗の筋肉フェチ」


「え、だってスポーツ選手の筋肉触る機会なかなかないじゃん!」


「…確かに。ちょっと朔腕貸して」


なんか…逃げた方がいい?腕貸したとして何するの。絶対触るよね。


「…大丈夫。変なことはしない。触るだけ」


「それを変なことをするって言うんじゃないの?」


「…言わない」


いや、言うよね。今一瞬迷ってたよね。


「…じゃあマッサージしてあげる!」


口実作って来た。ていうか腕のマッサージを今受けてもねぇ…何もしてない疲れもない腕をマッサージして何があるのか。やらなくて良いけどどうせやるなら大会終わりとかにしてよ。


「ねぇ朔お願い」


「……腕だけだからね」


そう言って謙斗達に腕を貸した。


本当に僕この人たちに甘くなってる。もう少し気を引き締めないといけないのに。


「凄い!細いのにがっしりしてる!羨ましい〜」


「力入れてみてよ」


ゆうてあんまり変わらないよ。と思いつつ力を入れてみる。そしたら謙斗達が固いって驚いていた。そんなに驚くことかな。


「おぉ…本当だ。かてぇな」


「どんな筋トレしたらこうなるの?」


「軸を作る筋トレ?」


「軸?」


「ジャンプをする時にかける回転を速くする筋トレ」


「へぇ〜じゃあ俺らがやってもあんまり意味ないのか」


まぁそうかもしれないけど他に役立つかもしれない。僕はスケートでしか役立ったことないけど芸能界には役立つ機会があるかもしれない。


「朔〜お面付けて」


あ、いつのまにか後ろ髪ができてる。


「じゃあ前髪やりますか」


「朔が前髪を上げるの初めてじゃない?」


「だな」


まぁ普段は上げないし。みんなに前髪を上げたところ見せるのは初めてか。


「…よし。できた」


渡された鏡で見たら綺麗に前髪が立ち上がっていた。後ろもハーフアップになっていて髪が外に跳ねていた。僕1人じゃ出来なさそうなアレンジだ。


「…何この溢れ出るイケメン感」


溢れ出てないと思うけどな。ていうか、ないけどね。


「ねぇこれにイヤリング付けたらさらにかっこよくならない?」


確かに。付けてみるかな。持ってるのでこの衣装に合うのあったっけ…


「ちょっとアクセサリー持ってくる」


アクセサリーをまとめて入れてある箱を持って来た。自分で選ぶよりみんなに選んでもらった方が良いだろう。


「え、朔ってピアスなの!?」


「そうだよ」


そう言ってピアス穴を見せる。普段は透明のピアスをつけてるから気づかなかったのかな。


「は?お前開けてんのかよ」


「これで開けてないの景だけだね」


意外だよね。一番開けてそうな人なのに。リングのピアスとかつけてそうなのに。


「だって痛ぇじゃん」


「一瞬だけだよ」


3秒数える間に終わる。だからそんなに痛くない。注射よりも痛くない。


「とりあえず選ぶか」


みんなで考えた結果、黒のひし形のピアスになった。


「もう朔ヤバいよ。イケメンだよ。自信持って顔出して良いよ?」


「でも逆に顔出したら大惨事にならない?」


「注目の的になるな」


注目の的とか勘弁だ。絶対に見せてたまるか。


「写真撮って良い?」


「良いけど」


撮るなら立った方がいいか。椅子から立ち上がり壁を背景に立った。


「何かポーズ取って」


「何が良いの?」


「じゃあ…なんかこんな感じのやつ」


どんな感じ?待ってなにそれ……あ、スパイラル…アラベスクスパイラルかな?


「これ?」


「あ、そうそう!」


「綺麗に一直線だな」


そんなに褒めてくれるんだ。お世辞だったとしても嬉しいな。でも、褒めてくれるからって見せるわけにはいかないんだ。


この先どんどん隠すのは難しくなっていくと思う。でも、絶対に隠しきれるだけ隠しきる。見られてたら一巻の終わりだから。


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