~・~ 4 (1) ~・~
つい先日抜糸して今日から練習を再開する。
学校のリンクに着いた。今日は振りの練習しよう。一様体が覚えてるけどまだ甘い。
本来は曲をかけてやりたいけどかけてくれる人がいないから仕方がない。
「よっし…」
久しぶりに滑る。脳震盪を起こしてから数日は運動したらダメってなってたからリンクにいけていない。
てか、頭に包帯が巻いてある状態で昨日学校にいったら俊太郎達に驚かれたなぁ…まぁそれもそうか。
「あ、いた」
え?声がした?放課後に?いや、そんなわけ……
声の主はみとだった。いや、まぁ学園の生徒だしいてもおかしくないけど仕事とかないのかな…
「どうかしましたか?」
「お願いがあって来た」
お願い?なんかあったっけ…
「僕にスケート教えてくれない?」
……スケートを教えて?え、僕が?
「僕に教わるよりあの例のコーチに教わったらいいんじゃない?」
「あの人捕まった」
ん、?捕まった?
「なんか、ストーカーしてたり景の事務所に乗り込もうとしてたんだって」
それもう依存じゃん。景依存症じゃん。
「だから僕のコーチいなくなって、新しいコーチ探してるんだけどフリーのコーチあんまりいないってマネが困っててどうしようってなってたの。そしたら、閃いたんだよね」
「僕に頼めば良い、と」
「そうそう。お金はちゃんと払うよ」
「……僕にはつきっきりで教えている時間もありませんし、そもそも苦手です。だから、質問を受け付ける形にしても良いですか?」
「分かった」
「あ、お金は入りません。僕は質問に答えるだけなので」
「それじゃあ割に合わないでしょ。質問に答えるだけとはいえ時間を奪っている事には変わらない」
「……じゃあ練習に付き合ってくれません?」
「良いけど何すれば良いの?」
「曲を流して欲しいんです」
「それだけで良いの?」
「うん。十分だよ。それに言ってたじゃん」
「え?」
「僕が滑ってるところを見たいって」
「え、いいの?いつかって言ってたから見せたくないのかと思ってた」
「大会では常に観客に見られてるんだよ?だから、見られるのに抵抗感はない」
「なら、景達呼んで良い?今多分演技の練習とかしてると思うから」
練習中なのに邪魔して良いの?まぁ、ダメだったら断るだろうし良いのか。
「いいよ」
そう言って僕は練習に入った。失敗しないように気をつけなきゃな。
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みとside
綺麗なスケーティング。滑ってるだけで絵になる。
あ、CD貰わなきゃ流せないじゃん。
「曲って何流すの〜?」
なんだっけ…メフィスト・ワルツ?と白の葡萄…じゃなくて…えぇっと……
「どっちが良いですか?」
衣装の参考にもしたいし、メフィスト・ワルツにしようかな。
「メフィスト・ワルツがいい」
「分かった」
貰ったCDをスピーカーに繋げる。これでいつでも流せる。
「えっ、たっか…」
何回転したのか分からない。3回転は確実にしてそう。
「うわ〜寒いね〜ここ」
「やっほ」
「やっほ〜朔は滑ってる感じ?」
「うん。さっきジャンプしてた」
「え、マジ!?見たかった〜」
曲かけてる時にいくらでも見れるでしょ。あ、飛んだ。
「見た?」
「…見た。え、しかも2回連続で飛んだよね」
「でも、得意なのはスピンなんでしょ?」
「ジャンプでここまでできるならスピンはどうなるの?」
「さぁ?」
「スピンはいろんな体勢で回れるのと回転速度が速いのが僕の強みだよ」
「!?あ、そうなんだ」
いつのまにか目の前にまで来て驚いた。なんで来たのかと思ったけど半袖になるためだったみたいだ。寒くないのかな?
「靴の色は白じゃなくて黒なんだね」
「確かに。でも、白より黒のほうがなんとなくかっこいい」
「確かに」
「あ、やっほ〜!」
景と謙斗が来た。これで全員揃ったかな?
「朔〜!揃ったら曲流すよ〜」
そう言ったら髪をハーフアップにして真ん中でポーズを取った。ハーフアップにする必要あるのかな?
曲が流れるのと同時に動き始めた。さっき滑っていた朔とは大違い。演技中と練習中ではあんなに違うんだ…
朔がこっちを向いた瞬間背筋が凍った。
なんでだ?なぜか冷や汗が止まらない。それはみんなも同じみたいだ。朔に釘付けになって朔の一つ一つの動きを目が追ってしまう。
一本目のジャンプはさっき初めて見たジャンプよりも回転しているように見えた。なら、これが4回転?さっきのは3回転だったの?
「え、今何回転した?」
「多分4回転……」
「嘘!?」
「静かに」
4回転回って着氷するとか人間技なのかな?普通できるの一回転なんじゃないの?
え、また4回転、!?僕の見間違い?いや、あれは多分4回転……
もうすでにジャンプを2本飛んでるのか…あと、何本飛ぶんだ?
ていうか今踊ってるだけなのになんでこんな心が落ち着かないんだろう……
「え、今3回連続で飛んだ⁉︎」
「あんなの人間技じゃねぇな」
何回転してた?驚きすぎて回転数見えてなかった。
今まだ1分くらいしか経ってないのにこの運動量?こっわ……それに怖いのは表情のせいかもしれない。不気味な笑顔をしてる。朔は普段笑わないから余計に不気味に感じるのかな?それとも、朔の表情管理が凄いのか?
「なんか動きの緩急が激しいね」
「それな。腕とか足、体が上がったり下がったり」
「体力持つのかな?」
また飛んだ。今度は分かった。3回転だ。え、待って2回連続でとんでるんだけど。さっき3回連続で飛んだばっかりなのに?しかもなんか、序盤のと比べるとすごく緩やかに見える。本当はそんな事ないんだけど。あれだよね。序盤に凄い上手い歌聞くとその他がしょぼく聞こえる現象。違うかな?
序盤に4本飛んだなら後半何飛ぶんだ?2回転とかか?
あ、スピンだ…って回転はっや。よくバランス崩さないな。てか、朔って折りたたみ式なの?もう足と体の間に隙間ないじゃん。え、今何した?あ、足変えたのか。どんな体勢で回ってんの、あれ。もう一本の棒だよ棒。いや、あれYか?ギリYに見えなくもない。
「体柔らか」
「それな。あいつ人間だよな?」
実はタコだったり。
あ、やっと緩やかになった。
今まで寒かったのが暖かくなった感じがする。さっきまでは狂気、恐怖って感じだったけど今は華やかって感じがする。
長い髪が靡いて長い手足が華やかに舞う。指先まで記憶に残る。
あ、またスピンだ。今度はT字で滑ってる。本当にぶれないな。体幹どうなってるんだろう。筋肉でどうにかなるのかな?
また足変えて今度こそ分からない。足を手で掴んで体を横にして回っている。あれ何字だろう。O字?
なんて考えてる間にスピン終わっちゃった。回転の次はまた緩やかゾーンって…緩急の鬼かよ。
あ、曲の雰囲気が一気に変わった。
「え、まだ飛ぶの?」
「それな」
今のも3回転…この調子だとあと何本も飛ぶのかな?体力持つのかな…
持ったら怖いんだけど。てか、緩急凄すぎて風邪ひきそう。ここ寒いから余計に。
「体力どうなってるの?」
と言った瞬間また3回転を飛んでもう一回飛んだ。
ここで2回連続!?もう後半で体力切れる寸前じゃないの!?
曲的に多分ジャンプもう一個くる?いや、流石に体力がもたないでしょ…?
え、まだジャンプ!?確かに今曲で爆発音みたいなの鳴ったからそれに合わせて飛んだの?
流石にもうジャンプない?
「なにあれ、足絡まってない?」
曲がもう一段階盛り上がった。そして、朔の足と腕が良く分かんなかなっていた。もしかしてこれが…なんだっけ……えぇっと……思い出せないや。
「腕もタコかな」
朔だけ腕8本ない?2本じゃできないよあの動き。
あ、タコゾーン終わった。でも、曲は落ち着く事がないから朔も落ち着いてない。動きがもう説明がつかない動きになっている。
表情が楽しい、嬉しい時の笑顔じゃなくて不気味な嘲笑うような笑顔をしていて直感的に怖いと思う。そして、驚異的な体力にも凄いというより今は狂気に感じる。
化け物、悪魔みたいだ。
その後のスピンも異常な回転数、柔軟性だった。途中で足を変えてしゃがむ体勢なのは変わりないのに足の位置を変えるだけで別物のスピンになる。両手を大きく広げているから今すぐにでも飛んでいきそうな気がする。
しかも最後のスピンなんて頭より足の方が高いしただでさえ速度速かったのにさらに加速していた。遠心力が半端ないはずなのにふらついたら軸がぶれないのは凄い。
スピンが終わったと思ったら氷スレスレでまた回転していた。遠心力さらにかけてどうするの。
そう思っていたら今までの遠心力が無くなったかのように曲と一緒に止まった。
僕らは圧倒されてその場に立ち尽くす事しかできなかった。




