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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第1章「軽井沢の迷宮」

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第一話:きらめきの予感、夏の足音【加筆・修正版】(26年5月26日)

※26年5月26日に再度、加筆&修正を行いました。より良いものにできたと考えていますので、一度読まれた方も再度お読みいただけると嬉しいです。


この作品は幼馴染の杏奈と、主人公・浩紀の、少し騒がしくて温かく、ときにはせつない物語です。

まずは1話目だけでも読んでもらえたら嬉しいです。

そしてもし少しでも「いいな」と思っていただけたら、ブクマや評価などで応援していただけると、執筆の大きな励みになります。

今後ともよろしくお願いします。

セミの声が遠くで鳴き始めた7月の朝。窓から差し込む強い日差しが、永徳高校2年生、桐谷浩紀きりたに・ひろきの部屋を照らしていた。


浩紀はベッドから起き上がると、いつものように規則正しい動作で身支度を整える。

鏡に映るのは、178cmのしなやかな体格。生徒会副会長とテニス部のダブルエースの一角を務める彼は、学内でも一目置かれる存在だが、その表情に慢心はない。

むしろ、どこか自分を律するようなストイックさを持っていた。


「おはよう、浩紀。今日も早いな」


リビングへ降りると、兄の博康ひろやすがすでにコーヒーを淹れていた。

兄を前にすると自然と背筋が伸びるような感覚に襲われる。

東京大学に通う博康は、高校時代は生徒会長を務め、テニスでも全国3位という「伝説」の持ち主だ。

両親がアメリカで仕事をしているため、今は兄弟二人暮らし。

浩紀にとって兄は、最も身近な目標であり、そして最も高くそびえ立つ壁でもあった。


「おはよう、兄さん。……また香澄さんのことでも考えてたの?」


浩紀が食卓につくと、博康は苦笑いを浮かべた。

博康は、かつて付き合っていた幼馴染の姉・香澄への未練を今も抱えている。

兄の淹れるコーヒーは、いつだって完璧なのに、どこか「諦め」のような苦さを含んでいた。


朝食を済ませ、身支度を整えた頃、玄関のチャイムがいつもの時間に鳴った。


「ヒロ! 遅れるわよー!」


扉を開けると、そこには黒髪ロングの美少女、河合杏奈かわい・あんなと、その妹のかおるが立っていた。

杏奈は女子テニス部主将で、すらりとした手足に華奢でスマートなのに、女性らしいカーブもしっかりとある理想的な体型をしており、まさに男の理想を具現化したような外見をしていた。浩紀とは物心がつく前からの幼馴染だ。浩紀はずっと、そんな彼女に一途な想いを寄せている。


「おっ、杏奈ちゃんに薫ちゃん。おはよう」


博康が玄関に顔を出すと、杏奈の表情がパッと華やいだ。


「博康さん、おはようございます!」


博康を見上げる杏奈の瞳は、朝の光よりも眩しく輝いて見えた。

それは、俺に向けられる「家族のような安心」の眼差しとは違い、一人の男性を追う熱を帯びた恋の光であった。

それを見るたび、俺の胸の奥には、自分でも名前の付けられない小さな棘が突き刺さる。


(……ああ、やっぱり、俺じゃダメなのか)


無意識に表情を曇らせた浩紀の肩に、博康の手がそっと置かれた。

兄は杏奈に聞こえないほどの小声で、核心を突く。


「浩紀、そんなに眉間にシワを寄せるな。杏奈ちゃんのことなら、お前が誠実に接していれば大丈夫だよ」


兄は、俺が口を開く前に、俺の心の揺らぎを正確に射抜いてみせた。


「……分かってるよ、兄さん」


完璧なアドバイス。完璧な余裕。

兄を尊敬しているのは本当だ。けれど、何でも分かっているようなその態度が、自分をいつまでも『守られる子供』として扱われているようでもどかしい。

ありがたさと同時に、埋めようのない差を感じて、奥歯を噛み締めた。


そんな浩紀の葛藤など知らないかのように、博康は二人を見て少し意地悪く笑った。


「浩紀と杏奈ちゃんは、相変わらず仲良しだなぁ。もう夫婦みたいだぞ」


「「……違うから!!」」


間髪入れずにハモった二人の否定。その見事なシンクロ具合に博康はさらに声を上げて笑う。

だが、その光景を後ろで見つめる薫の瞳だけは違っていた。

薫は髪をポニーテールにしており、杏奈に比べると少し背も小さく小柄で守ってあげたくなるような雰囲気を持つ美少女だ。


姉(杏奈)と浩紀の間に流れる、誰にも入り込めない絆の深さ。それを突きつけられるたび、薫の瞳には寂しげな色が宿る。しかし、彼女は俯くことはなかった。

その瞳の奥には、押し殺した気持ちとともに、決してあきらめきれない執念が静かに、しかし確かに燃え続けていた。


ーーー


通学路は、夏の香りが濃くなっていた。

三人が学校の門へ近づくと、後ろから快活な声が飛んできた。


「よっ、御両人! 今日も朝からアツアツだねぇ」


声をかけてきたのは、浩紀の親友でありテニス部のダブルエースの一角、太田俊おおた・しゅんだ。いつも明るく友人も多い。


「太田、変な言い方するなよ。ただの幼馴染だって」


浩紀がため息をつくと、杏奈も「そうよ、太田くん!」と頬を膨らませる。

しかし、その横で薫は「御両人」という言葉に反応し、少しむっとした表情で視線を逸らした。


「じゃあ、私はB組だから。ヒロ、また放課後の練習でね!」


校舎に入り、杏奈が自分のクラスへと向かっていく。

その後ろ姿を、浩紀は一瞬だけ切なげに見送った。

浩紀と太田が2年A組の教室に入ると、そこはすでに賑やかだった。

教室の真ん中、ひときわ明るい笑い声の中心にいるのは、畑中沙織はたなか・さおりだ。

茶髪のショートカットが似合う彼女は、細身でありながら驚くほど出るところが出た、男性の視線を集めてしまうようなメリハリを持つ完璧なスタイルの持ち主で、男子からも女子からも慕われるクラスの人気者であった。


(あ、桐谷くん……)


周りの友人と談笑しながらも、沙織の瞳は一瞬だけ、教室に入ってきた浩紀を捉えた。


それは一目惚れであった。

初めて浩紀を見た瞬間に、彼女は恋に落ちていた。

それ以来、彼女はこうしてチャンスをうかがいながら、少し離れた場所から彼を見つめる日々を送っている。

周囲への細やかな気配りや、絶やすことのない優しさ。それに、スポーツや勉強も完璧にこなす姿。そうした「外から見える」彼の魅力を知れば知るほど、彼女の想いは制御できないほどに強くなっていった。

そして何より、彼女の心を完全に決定づけた瞬間があった。


ーーー


ある日の移動教室の際、沙織は廊下で他の生徒とぶつかり、持っていた教材を派手に落としてしまったことがある。

周囲が気に留めず通り過ぎる中、近くにいた浩紀だけがすぐに足を止め、一緒に拾うのを手伝ってくれたのだ。「災難だったね」最後にそう言って、優しい笑顔とともに手渡された一本のボールペン。

それを手に取る瞬間、ほんのわずかに彼の指先が沙織の手と触れ合った。

その刹那、身体に電流が走ったような衝撃が駆け巡り、経験したことのないほど、心臓の音が鳴り響いていた。

その時のボールペンはすでにインクが切れてしまったが、今も自宅の引き出しの中に大事にしまわれている。

それはまさに、彼女の恋心が「憧れ」から「明確な恋」へと完全に変貌した瞬間だった


ーーー


そんな沙織の瞳の奥には、まっすぐで苛烈な情熱が眠っていることに、まだ本人ですら気づいていない。

そんな彼女の視線に気づくことなく、浩紀は自分の席にカバンを置いた。

期末テストも終わり、夏休みまで、あと数日。 この時の彼はまだ知らなかった。

隣で笑う杏奈の無自覚な純粋さが、沙織のまっすぐな想いが、そして薫の秘めた執念が、これからの浩紀の日常を「上書き」し、取り返しのつかない修羅場へと変えていくことを。

そして、俺自身が「伝説」の兄を超え、本当の愛を掴み取るための、長く熱い戦いが始まることを。

俺たちの穏やかな境界線を、4人の想いの熱量が、静かに、しかし容赦なく溶かしていこうとしていた。


第1話を読んでいただきありがとうございました!


初めて物語を書いてみましたが、自分の妄想が文章化され、物語として出来上がっていくのが楽しくって仕方がなかったです。

AIの補助的利用をさせて頂いております。(キャラ設定や文章の構想などは全部私の妄想で出来上がっています。(笑))

もしこの作品に少しでも興味を持っていただけたのであれば、ぜひ浩紀や杏奈たちを愛してあげてください。

私は、この作品の登場人物たちが大好きです。私が作った子供たちですからね。


気に入っていただけたなら、ブックマークや評価をいただけるととても心強く、「今後も続けて書いていいんだ」という勇気をもらえます。


ぜひ、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ドキドキする1話目! ライバルはとんでもなく完璧な兄かぁ……頑張れ浩紀!
全員、視線の先にあるのは何かしらの想い。兄弟同士でも、何かしら相手が考えているものとは違う思いがありそうな雰囲気がしますね。 はたして浩紀は無事でいられるのか……
一話、拝見致しました。 主人公を取り巻く人間模様が、この先どうなっていくのか、とても気になります! ☆5、付けさせて頂きました。
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