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二葉さんの猛攻

続きまーす。

「これからすっごいアプローチしていくから覚悟しておいてね」と言われた次の日から二葉さんの猛攻は始まった。火蓋を切ったみたいにあれよ、あれよとお誘いのメッセージ。終いには、


「三隅! 見れなかった映画見に行こ!」


「えっ。でも雪矢と見たんじゃないの? もう一回見るのはどうかと」


「それは三隅のせいで一条と見る羽目になったんじゃん」


「でも、お金かかるからせめて違うの見るとか」


「大丈夫! この前のも一条に頼んで奢ってもらったから。てか、毎回誘うのってそういうつもりでなんだよね」


「えっ! 雪矢にたかってるの?」


「言い方ひどいよ、三隅。違う、違う。私は一言も奢ってって言ってないよ。一条が勝手に気を利かせて奢ってくれるだけ。多分、後ろめたいことがあるんだと思う」


「後ろめたいこと?」


「んー、言ってもいいけど、三隅がショック受けるだろうから言わないでおくー」


言わんのかい! ここまで勿体ぶったように焦らしに焦らしまくってくれたのに。二葉さんはこの話しおしまい、と言い俺の腕に手を回す。以前から思っていたが距離の詰め方えげつない。ありがとうございます!


付き合っていたとはいえ、別れたカップルが腕を組んで歩く。いくら告白をされたからと言ってまだ復縁したわけでもないから不純な気もしてくる。


「ほら、三隅のジュース。ポップコーンもあるから気軽に言ってね」


ん? 気軽に言う? ああ、持ってくれるってことかな?


「いや、持たせておくの悪いから俺が持つよ」


「ううん。食べさせてあげる。こんな風に。はい、あーん」


「……へ? いやいや! いいよ! それに上映始まったら二葉さんも困るでしょ?」


「大丈夫。その為に同じの選んだんじゃん。それより、早く口開けて?」


でも、と尻すぼんでいたら無理矢理口に入れられた。あ、ほのかな塩味が美味しい。夏にぴったりだよね。汗かくし。てか、周りの視線が痛い。上映時間まで15分。入りも増えてきたけど、めっちゃ見られてる。


相変わらず、二葉さんがニコニコ顔で俺にあーん、もとい餌付けしてくれる。あ、俺の好きな笑顔。とか考えていたらあっという間にポップコーンも残り半分に。んな、ばかな! と顎が外れそうになった。だって、やっと開始時刻1分前になったんだ。2時間の映画にポップコーン半分って!


俺の絶望など意に介さず二葉さんは超ご機嫌。俺蒼白。ブザーの音が鳴り響き、程なくして映画が上映され始めた。映画が半分過ぎた頃にはポップコーンは空。ほとんどを食してしまった。しかも食べさせてもらって。なんだこれは。ラブラブカップルか!


「―――え?」


ひじ掛けに手を置いていると、ふいに違和感を感じた。思わず見やると、二葉さんの手が俺に重なり、終いには恋人繋ぎで深く指を絡み合うことになった。んな! また顎が外れそうになり必死に口を閉じる。


「しー」


人差し指を口元に当て、俺に静かにするようにジェスチャーしてきた。これか! 二葉さんのアピールって。もっと高校生らしくソフトな感じだと思っていたが、ここまで行動に移すとは。映画が終わるまで悶々とした気分になったのは言うまでもない。


「二葉さん……今度からああいうのやめてね」


「えー? ああいうのって?」


「だから、ポップコーンとか手繋ぎとか」


「でも満更じゃないでしょ? それに言ったじゃん。覚悟しておいてね、って」


「でも限度ってものが―――」


「三隅!」


「何―――ん!」


またも唇に柔らかな感触。暗い昨日と違い顔がはっきり見える。てか、ここ外! しかも明るい!


「こういうのが度を超すってことじゃない?」


「だ、だからって説明の為にわざわざキスしなくてもいいと思う!」


「だって、好きなんだからしょうがないじゃん。触れていたいんだもん」


そう言うと二葉さんは俺の手を取り、自分の指と絡める。そして切なそうな目で俺を見た。思わず、抱き締めたい衝動にかられ二葉さんを引き寄せるが、すんでの所で思い止まる。


「三隅?」


俺は二葉さんが好きだ。でもそれは付き合っていた頃の純粋な気持ちと一緒だろうか。いや、違う。俺は、俺の心がわからない。でも二葉さんに好意を向けらて嫌な気持ちはしない。だけど……だけど……!


「駄目だよ、二葉さん。自分をもっと大切にしないと」


「え? 自分がいいと思ったから……三隅が好きだからじゃん」


「例えそうだとしても! 俺言ったでしょ? 自分で自分の気持ちがわからなくなってるって。だからちゃんとした答えが出るまではこういう過度なスキンシップはやめてもらえると助かる」


「………わかった。でもひっつきはするから。今のわかったはキスだけね! ……ほんとは嫌だけど、我慢する…」


「そうしてもらえると助かる」


「じゃあさ! 気持ち切り替えてショッピングしよ? 私、2階のあそこの店が見たくてさー」


二葉さんは切り替えが早く、条件を飲み込んで自分の意見はしっかり言っているのでこの後もずっと腕組みする結果となった。当たっていたとだけお伝えしておこう。

すれ違いを書き続ける予定でしたが、シナリオをぐんと修正して妙に甘いお届けにしました。むやみやたらに引き延ばすのもよくないと思い、大幅な路線変更です。

そろそろ、佳境に入ろうかなとも考えています。

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