突然の―――
続きまーす。
「私は―――三隅が好きだよ」
「―――へ?」
間の抜けた声が漏れる。何かの聞き間違えかと二葉さんを伺い見ると何故か顔が真っ赤。真剣な表情で真っ赤だと怒っているように感じてしまう。
「えっと……聞き間違いかな? 俺が好きって聞こえたんだけど」
「間違ってないよ。私は三隅の事が好き」
「待って! え、二葉さんは雪矢の事が好きなんじゃないの?」
「なんでそうなるのかわかんないけど、気の合う友達であって恋愛対象に見たことないよ」
「えっ! だ、だったらなんで俺と別れることに同意したの?! 普通嫌がるよね」
「そ、それは―――」
急に口ごもる。ほら、何も言えない。俺の事が好きなわけじゃないんでしょ? 雪矢の事は想定外だが、俺を好きと欺いて近寄る男を蹴散らすためなんじゃないの? そんな事考えたくないのに。俺に都合のいいことは巡ってこないと決めつけ、二葉さんの言葉を否定しようとする。
「三隅の事が好きだからだよ。好きだから認めたくなかった!」
「あ、そう―――へ?」
あっれー。予想外の言葉が返ってきた。ここは二葉さんが俺を都合のいい男として扱っていると認めるところじゃないの? 「あ、そう。やっぱりな」って返すつもりがまたも間抜けな声が出た。
「イケメン達にも告白されて、でも付き合いたいって思える人がいなくて、一条にけしかけられた時も三隅なら人畜無害そうだと思って話しに乗った。でも、ことあるごとに三隅って私の乙女心くすぐってきてさ。いつの間にか喜ぶ顔が見たくて、でも私のイタズラに困った笑い顔で返すのも愛しくなって。気がついたら好きになってた」
「で、でも雪矢と喋ってたじゃん。俺の事好きじゃないって。告白も雪矢が言ったから二葉さんも話しに乗ったんでしょ!? そう今も言ってたし。それじゃあ、俺の事本当に好きなのかわからない! 本当は好きじゃないのに好きだって言って俺を笑う気なんだ―――うむ!」
唇に温かいものが触れた。息を奪われる。目の前には二葉さんの顔。目を瞑って……。キスされたと気付くにはかなり時間を要した。
「な、な、なんで……」
唇を押さえながらへたりこむ。
「私が三隅の事を好きだって証明しただけ。私にもわかんない。なんで三隅の事が好きなのか。でもさ、今考えたら初めて会った時から好きになってたのかもしれない」
「そんな事あるわけ―――」
「最初は一条のおこぼれ狙ってるやつだと思ってたけど、私の事を普通に扱ってくれて私に気を遣ってくれて。女の子に慣れてないからかいつも困った笑顔で……ああ、その顔好きだなって思ったの。寝る時に瞼を閉じても三隅がいるの! だから! こんなに好きなのに、冷たくしないで!」
俺の胸に飛び込んで泣く二葉さんを行き場のない手が、決心したかのような勝手に動いた。二葉さんを抱き締めポンポンと背中を擦る。すると今までの怒りなんて吹き飛んでしまった。
「大丈夫。二葉さんの言葉信じるよ。たださ、雪矢と放課後話してたことちゃんと教えて? 今だから言うけどさ、俺その話し途中で聞いちゃってさ……かなり傷ついたから」
「え! ご、ごめんなさい。傷付けるつもりは本当になくて―――一条もからかってる様子でもなかったし」
そこから二葉さんはゆっくりとだが事の経緯を教えてくれた。俺の聞いていなかった部分を含め、俺は大きな勘違いをして一人で傷ついていたことを知れた。ちゃんと話し合っていればこんなすれ違いも嫌な想いもしなくて済んだのに。聞くのが怖いと逃げた自分にも非はある。
もう一度二葉さんを見据え、ゆっくりと分かりやすく口に出す。
「二葉さん、今だから恥ずかし気もなく言えるけど、付き合う前から二葉さんの事が好きだったんだ」
「……え、そうなの?」
こくりと頷く。
「でもさ、正直今は好きなのかどうかわからないんだ。別れるって決めたあの時、気持ちが切れた感触がして……それから自分の事なのに自分の気持ちがわからなくなった」
だから答えられなかったんだ。四宮さんの質問に。いつまでも想い続けちゃいけないと必死になったつもりはないけど、結果として以前よりそういった好意を抱く回数が大幅に減った。代わりに、四宮さんと水穂さんの事がよく気になるようになった気もする。でも二人共同じくらいだからまた、自分の気持ちがわからなくなった。
そんな俺に二葉さんはこう言った。
「わかった。これからすっごいアプローチしていくから覚悟しておいてね、三隅」
久々に聞いた二葉さんの語尾が上がる声。吹っ切れた彼女は眩しくて思わず手を伸ばしそうになった。
告っちゃいましたねー。さて、最終的に誰と誰が引っ付くのでしょうか。
『仕事中は恐いけどお仕事以外は甘いんです。』も宜しくお願いします!




