表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めたら異世界で人魚だった  作者: 御餅屋ハコ
目覚めたら異世界で人魚だった 第五章
70/217

第五章 04 双牙舎


04 双牙舎


「さーてと、じゃあ、双牙舎とやらを探そうかな」

 昼食を終えた私は、また町の中に泳ぎだした。まず双牙舎でオーレの町への行き方を聞き、今後の計画を立てるのだ。

 貝取屋から宿への道のりではそれらしき建物を見かけなかったので、今度は違う方向に進む。

「さすまたみたいなレリーフが建物に付いてるんだよねえ……」

 私はノアタムから聞いた話を元にその建物を探した。

 しばらく泳ぐと、それは見つかった。

 頑丈そうな三階建てぐらいの建物で、入口の上部にレリーフがある。遠くで見るとさすまたの形だったが、近づいて見ると、二匹の蛇が、上半身は向かい合い、下半身は絡み合っている姿だった。蛇はそれぞれ長い牙をむきだしている。

「あっなんか、ファンタジーでこういうの見るよね、カドゥケウスだっけ」

「結果的に形は似ているが、これはノアタムアにおける『双牙』だ。二匹の蛇が向かい合って牙を出しているだろう。右の蛇の牙は平和を、左の蛇の牙は秩序を守るためのものだ。平和と秩序は自分達の内部からも律しなければならぬという意味を込めて、背中合わせでなく、向かい合って牙をむいているのだ。相手の蛇と、その背後に目を配るためにな」

「ふーん」

「そして、この二匹の蛇をかたどった武器も『双牙』と呼ぶ。武器の形状は蛇よりもシンプルになり、棒の先端に二つの牙がある形となる。だからその形に対しても『双つの牙』という言葉で表現するのだ」

「……つまり、カドゥケウスとは違いますよってことね」

「そういう言い方をするな。せっかく説明してやったのに」

「あっでも、海に蛇って……いるか。ウミヘビって言うし」

「確かに、日本語でウミヘビと呼ばれる生物はいるな。ただし、は虫類のウミヘビは肺呼吸をする。そのため、定期的に海上に顔を出して息継ぎをする。産卵を地上で行う種類もいる。

 ノアタムアは深海なのでな、は虫類のウミヘビはいない。ノアタムアでは、ウナギやウツボの中でも、特に体が細く、牙のある種類を『蛇』と称する」

「そうなんだー。あっそれにここは海だから、わざわざ『ウミヘビ』って言わないで、ただ『蛇』って言うわけだ」

「その通りだ」

 納得した私は、双牙舎の中に入った。

 内部も警察署のような雰囲気で、ロビーとカウンターがあった。カウンターの向こうには、紺色の、丈夫で動きやすそうな布の制服を着た人魚達がいた。彼女達が双牙兵だろう。制服を着た警官のような雰囲気がある。

 双牙兵達は、机に向かって書類を書いたり、何か相談したりしていた。カウンターで受付をしている人魚もいる。

 私以外にも来訪者がおり、受付にいる双牙兵と何か話をしていた。私は空いている受付に向かう。

「こんにちは。どうされましたか?」

 受付の双牙兵はそう言った。若い女性の人魚だ。

「あの、道を聞きたいんですけど」

「どちらに向かわれますか?」

「オーレの町ってとこに行きたいんです」

「こちら、ご覧ください」

 彼女は私の右側を示した。その先の壁には、地図が掲げられていた。

 地図の中央には建物が集まっている絵が描かれており、『ツウギの町』の表記があった。町の中には『現在地(双牙舎)』、『鑑定屋』『時計塔』『手形屋』などの表記も見える。重要な施設の位置が記されているようだ。

「ツウギの町の、南にあるのが『タヴィデの町』、北西にあるのが『フォクセの町』、北東にあるのが『ホクトの町』です」

 彼女が示す位置に私は目をやる。

 ツウギの町の周辺は、林や地形の様子がざっくり描かれていた。そして少し離れたところに、また町が描かれている。

 地図の下にあるのが『タヴィデの町』、左上が『フォクセの町』、右上が『ホクトの町』だった。

「オーレの町は、ホクトの町から更に北東に行った場所にあります。この町からホクトの町へは、素泳ぎだと二日ほど、魚車だと一日ほどで着きます。ホクトの町とオーレの町の距離もそのぐらいですね」

 私はうなずく。ならば、ゆっくり移動しても祭りには余裕で間に合うだろう。

「わかりました。ありがとうございます」

 私はそう言ってカウンターから離れた。双牙舎を出ようと振り返ると、入口の所に、双牙兵が何人か並んでいた。

「パトロールに行ってきます」

 彼女達はそう言い、双牙舎を出て行った。服装はカウンターの中にいる双牙兵達と同じだったが、武器を身につけていた。

 先端が二股に分かれた棒を、ベルトで背中に背負っている。

 さすまたっぽい。これが『双牙』か。

 私はそう思いながら、双牙舎を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ