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危険な近道3

 本当にいいもなにも、そっちが映えスイーツとやらを食べに行くと言って、半ば強引に璃世のことを引っ張り出したくせに。文句のひとつでも言ってやろうかと口を開きかけた矢先。


「お嫁入りのことですわ。あなたこのままあの化け猫店主に嫁ぐおつもり?」

「いや、それは」

「覚悟がないならおやめなさいな。面倒なだけですわよ」

「え?」


 まさかやめろと言われるとは思わなかった。同じあやかし同士、アリスは千里の味方をすると思っていたのだ。


 そもそも、はなから化け猫の嫁になる気などない璃世。あのときアリスが入ってきたおかげで、無理やり夫婦契約を結ばずに済んだのだ。そのお礼がまだだったことに気づく。

 

「ありがとう、アリス。あなたのおかげで、あの人となし崩しに夫婦にならずに済んだわ」


 ペコリと下げた頭を上げたら、アリスが大きな目をさらに大きく見開いていた。あれ? と思うと同時に璃世からサッと顔をそむける。


「ア、アタクシは別に……あなたのためにしたわけじゃ……。夫婦なんて愛があるのは最初のうちだけ。あとは惰性だったりいがみ合ったり。とにかく面倒なものだとよく知っているだけですわ」


 ツンと横を向いてそう言ったアリスの耳が心なしか赤い。高飛車なお嬢様かと思いきや、意外とかわいいところもある。ビスドールのごとく美しい横顔をじいっと見つめていたら、「ほら、早く行きますわよ」と足を速められた。


 橋を渡って大通りをしばらく行ったところで、背の高い樹木が生垣のようにつながっているのが見えてきた。アリスがそこを指さす。


「あちらに近道がありますのよ」


 樹木の壁が切れて門のようになっているところまで来たとき、アリスが中に向かって駆けだした。


「待って、アリス!」


 跳ぶようにして奥へと進んでいくアリスを必死に追いかける。中に入った当初は広かった道がだんだん狭くなり、クネクネと右に左にカーブしながら徐々に細くなっていく。両脇には葉を茂らせた樹木が迫っていた。


「アリスー!」


 声を張り上げて呼ぶけれど、アリスは振り向かない。走るのに夢中で聞こえていないのかもしれない。必死で追いかけるも、その差はどんどん開いていく。


「アリス……足速すぎだよ……」


 目的地の場所はなんとなくしか知らないのに、案内人に置いていかれたらどうしようもない。こちらはスマホどころか携帯電話すら使えない身なのだ。


 少し不安はあるけれど、アリスも璃世がついて来ていないことに気づいたらきっと戻ってきてくれる。そう考え、そのまま小路を進んだ。幸い一本道なので迷いようがない。


――と思ったのが大間違いだった。


「え……、どっち?」


 道がふたつに分かれていた。


 もしかしたらアリスが近くで待っていてくれているかもと思い声に出して呼ぶが、返事はない。念のため茂みの中なども探してみたが、人影どころかウサギの影すら見当たらない。


「もう~~! アリスったら!」


 人のことを強引に連れ出したくせに、置いてきぼりなんてあんまりだ。あとで文句のひとつくらい言ってやろうと思うが、とりあえずは“今”どうするかを考えねば。


 来た道を戻るか、分かれ道のどちらかを選んで進むか。ここでアリスが戻ってくるのを待つという選択肢もある。

 

 多分一番よいのはここで待つことだ。迷子の基本は動かないこと。まだ小さかった頃、家族とはぐれたあと、見つけてくれた父親が教えてくれたのだ。


 二度と会えない人の面影を思い出した瞬間、鼻の奥がツンとした。


(ダメ……)


 感傷に浸っている場合ではない。頭を思いきりブンブンと振ってから、改めて周囲を見る。


 無尽蔵に伸びた枝葉のせいであたりは鬱蒼としている。初冬だというのに落葉した木が見当たらない。そのせいだろうか、お昼前でお天気もいいはずなのに妙に薄暗い。


 嫌な感じがする。誰かに見られているような――。


 振り向いても、誰もいない。


 フルリと体が震えた。直感がここを抜け出すことが先決だと告げる。


(間違ったら間違ったときよ!)


 璃世は迷いながらも足を一歩踏み出した。


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