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「え。一緒じゃないの?」
俺は戸惑いの声をあげた。
ピアスをあけた昼。──またいっぱいいっぱいになって涙をこぼした俺をハロルドはまた抱えるようにして戻り、部屋で宥めて目の周りを冷やしに冷やして何とかほぼ見られる顔にしてから──約束の昼食時間に姿を現した俺達にセンセイは「おー、予定通り明日出発できそうか?」と軽い調子で聞いてきた。それに二人して頷いたのだが。
ホテルのロビーでの待ち合わせに姿を現したルパートとバートは荷物を持っていなかった。疑問に思った俺が訊ねれば二人はここに残ると言うのだ。
「・・・南門の調査とか?」
思いつくのはそれしかなくて、聞いてみれば二人は顔を見合わせ「あー」と曖昧な返事だ。
「博士」と顔を向ければふいと顔を背けられた。
「センセイ!」
どういうことかとセンセイの顔を見て問えば「まぁね。二人にはちょっとここでお使いをしてもらう。・・・後から合流するから」となんとも抽象的な答えだ。
研究室が同じ二人が残るのは納得がいかない。
そんな俺の表情を見て「ムゥロで旅飽きたのか?ハロルドも一緒だぞ」なんて博士が問うてくる。
・・・ずるい!
「わかりました」俺は不承不承頷いた。
今度はムゥロは四頭になった。今まで同様、一頭に二人ずつ乗って残りの二頭に荷物を乗せてゆく。
直接照りつける日差しを久々に浴びて──と言っても俺の体はかなりハロルドの日陰に入っていたのだけど──消耗が早い。ごそごそと水を取り出し、それと共に岩塩を含む。振り向けは遠くにオアシスが見えるのだが、実は蜃気楼ですと言われたら頷いてしまうくらい砂漠の熱波が立ち上がっていた。
それでも進んで行けば、先の方で小さな塊が見える。井戸だ。
ハロルドがセンセイ達へ休憩しようと身振りで伝えている。
本当はもう一つ先の井戸で休憩予定だったのだが、俺の消耗の早さを考えて早めにとることにしたらしい。
『足、引っ張ってるなぁ』そう思いながら、少しでも早く井戸へ着いて欲しいのが本音だった。
井戸がはっきりと見える頃には“へたっている”と言う表現がぴったりなくらい、俺は消耗していた。どうも水をがぶがぶと飲みすぎたらしい。
それでも、完全に年少者だし、ペーペーだし。センセイ達の手を煩わせるのは最低限にしたい。
井戸の近くになり、ハロルドの手を借りてムゥロから下りる。先頭の俺達のムゥロの鼻辺りをくすぐりながら水場へと連れて行く。その後をついてきた二頭をその隣へと順々に誘導すれば、ハロルドがしんがりだったセンセイ達のムゥロを連れてくる。
「荷物、降ろしてろ」
そう言ってハロルドは井戸から水を水飲み場へと引き入れた後、少し離れたセンセイ達へと足を向ける。それを見送り俺はちらりと太陽を見上げた。
日除けの設営場所のあたりをつけながら、水を飲むムゥロの背から荷物を降ろして運んでいく。
と、センセイ達が寄ってきて自分達の荷物から石鹸を取り出す。『うん?』と思っている間に井戸へと足を向け洗濯を始めた。
「・・・・」
今までと違う流れに最後の荷物を抱えたままぼーっとしてると「カイン」と声がかかった。
「手分けした方が早いだろう」
そういうハロルドは荷物の中から日除けの布やらポールを取り出している。
俺は手伝うべく慌ててハロルドのもとへと駆け寄った。




