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「まだ汗が出る~」
口から出た言葉は、我ながら情けない声だった。
見た目と香りに反して、マイルドそうに見えたものが激辛だったのだ。
「これ飲むか?」
差し出されたドリンクを俺は胡乱気な目で見る。
「甘いから」
そう言われてやっとそれへと手を伸ばした。
あまりの辛さに思いっきり涙目になり水をがぶ飲みする俺の姿に、ふざけ半分だったハロルドも反省して先程から至りつくせり甘やかし放題だ。──まだ許してやらないけど。
口をつける前から甘いに香りがしていたドリンク──フルーツジュースを飲んで俺はほぅと息を吐いた。
「ねぇ。本当に口元平気?」
何度も口にした言葉を再度口にする。
口の周りがひりひりとしていて、自分の感覚ではそれはもう盛大に腫れ上がってしまっているのではないかという位なのだ。
指で触れてみればそんな感覚はないが、やはり気になってしまう。
「大丈夫だ」
そう言われて、頷く。そして辺りを見回した。
食事をしたテントから少し歩いた果実や野菜を売っている店先だ。
「ホテルに戻るか?」
聞かれて俺は頷いた。
「あ、こんな店まであるんだ」
ホテルへの帰り道、目に付いたのはアクセサリーショップだ。
残念ながら俺達が向かう遺跡──ラファニャーラン──からは宝飾品は発見されていない。
が、俺達が出発した町にある遺跡からはかなりの量の宝飾品・衣服が発見されている。そしてそれを元にラファニャーランでもこんな方食品や衣類を身につけていたのだろうと推測はされていた。
店先に並ぶのは宝飾品に使われていた宝石を使ったアクセサリーだ。土産用なのだろう、手前に並ぶのは随分と手軽な価格だ。店主の側になると若干手が込んだものになっていて、発見された宝飾品のレプリカっぽいものもある。
「せっかくだから買って行くか?」
降ってくるハロルドの声に俺は頷いた。
が、見れば見るほど決まらない。
──もう少し、こう・・・
そう思っている時に「奥にはもっときちんとしたものもありますよ」と店主から声をかけられた。
『どう思う?』とハロルドの顔を見上げ視線で問いかければ、頷いてくる。
俺達は勧められるままにテントの奥、本格的な店舗へと足を向けた。




