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早朝のバザールは思ったよりも混み合っていた。

数歩先を進むハロルドがこちらを振り返る。指をひらひらとさせるのを見て、足早に寄ってその手をとる。きゅっとこめられた力に俺は口元を緩めた。

「調子よさそうだな」

「ああ」

昨夜は思い込みだの誤解だのが解けてほっとしたせいか──第一朝は微熱まであったし、大泣きして目も腫れあがっていた──あの後すぐ、ハロルドにもたれるようにして眠ってしまったのだ。早朝まで。

おかげで体調も気持ちもすっきりとしていたし、目覚めた時にハロルドがそばにいたものだから気分だって上々だった。

「バザールへ行って見るか?」

そうハロルドに誘われた俺は勢いよく頷いた。

昼間歩いた時とは活気が違う。昼間だって観光客が歩き回っていたけれど、それは強い陽射しを避けて控えめだったのだと実感する。

それにバザールは観光客よりもオアシスに住む地元の住民向けのニュアンスが強いようだった。

出ている屋台の食品なども日中のどこか余所行きのような小洒落た感じではなく、野菜や果物などが丸のまま並んでいたりする。

「何か食べたいものはあるか」

聞かれて首を傾げた。

聞けば昨日同様、朝食は各自(各組)でとることになっていた。

それじゃあ・・・と思いつくのはやはり継承されている現地料理だ。それを口にすれば、ハロルドはきょろきょろと辺りを見回し、くいと俺の手を引いた。


店先に張られている日除けの下、簡易のテーブルと椅子に俺は腰掛けてハロルドを待っていた。

仕事や学校へと行く前に朝食をとっていくのだろうか、身なりを整えた大人や膝や足元に束ねた書籍を置いた子ども達の姿がちらほら見える。

『・・・学校あったっけ?』

ぼんやりと思っていると「ほら」と声がかかってはっとなる。

見ればハロルドが皿が乗せられたトレーをテーブルへ滑らせるようにして置いた。

皿の上には穀物で作られたパンのようなものが乗っている。手のひらよりも小さいくらいでふくらみはほとんどなく2センチほどのものだ。それが5枚重ねられている。その横には深めの皿にスープが注がれている。二つあるそれは一つ一つが色が違っている。味が違うようだ。

立ち上る湯気に少しだけ顔を近づけてすんと香りをかぐと、スパイシーな匂いがする。片方の方がより辛そうな気がした。

見よう見真似で、パンを手前のスープへと浸して食べる。

「辛いっ」

思わず声をあげた。

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