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森の守護者  作者: 紫桜
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第22話 夢の中の森


第22話 夢の中の森


その夜、さくらは深い眠りについていた。


静かな森の夜。


窓の外では風が木々を揺らし、葉の擦れる音が優しく響いている。


だがその夜、さくらは不思議な夢を見た。


気がつくと、森の中に立っていた。


夜の森。


けれど怖さはない。


月の光のような淡い光が、周囲の木々を照らしていた。


「……ここは?」


さくらはゆっくり歩き出す。


すると。


前方の木の根元に、一人の人物が座っていた。



白い髪。

透き通るような肌。

男性とも女性ともつかない、美しい顔立ち。



その人物は静かに微笑んだ。


「こんばんは」


柔らかく優しい声だった。


さくらは驚いて立ち止まる。


「こ、こんばんは。えっと……あなたは?」


その人物は少し楽しそうに目を細めた。


「この森の神……と言えば格好はつくかな」


そして軽く首を傾げる。


「まあ、セレンの保護者のようなものだよ」


さくらの目が大きくなる。


「えっ!?」


思わず声を上げる。


その人物はくすっと笑った。


「そんなに驚く?」


さくらは慌てて言う。


「だ、だって……セレンの……?」


その時だった。


ふっと、その人物の姿が揺らぐ。


次の瞬間。


そこに立っていたのは――


セレンだった。


さくらは思わず叫ぶ。


「セレン!?」


だがその“セレン”は、楽しそうに笑った。


「こんな顔だったかな?」


そう言ってくるりと体をくるくると回転するセレン。


そしてそのセレンがこちらを向いたら物凄く出っ歯だった。


さくらはぶんぶん首を振る。


「違います!」


するとセレンの姿はまた揺れ、今度は小太りセレンに変身する。


「それも違います!」


おばあちゃん

おじいちゃん


くるくる向きを変えては姿も変える。


そして元の姿に戻った。


「あぁ~目が回った」


白髪の中性的な人物は楽しそうにケラケラ笑っている。


その人物はひとしきり笑ったあと、ふっと動きを止めた。


ゆっくり立ち上がるその姿に森の空気がわずかに静まる。


「あなたは……本当に誰なんですか?」




「私はシルヴァス」




静かな声だった。


「……シルヴァス」


さくらは息を呑む。


森の神。


神様とは最も地位の高い人、森で1番偉い存在だ。


しかし目の前の存在は尊大な態度をすることはなく、どこか優しく穏やかだった。


シルヴァスはさくらをじっと見つめる。


そして柔らかく微笑んだ。


「君が、さくらだね」


さくらは少し驚く。


「私のこと知ってるんですか?」


シルヴァスは軽く肩をすくめた。


「もちろん」


「セレンが大事にしている子だからね」


さくらの顔が少し赤くなる。


シルヴァスはそれを見て楽しそうに笑った。


「ふふ、やっぱり面白い」


さくらは首を傾げる。


「面白い?」


シルヴァスは少し身を屈め、さくらの目線に合わせた。


「なんか面白いから、私達が出会った事はセレンには内緒ね」


さくらは目をぱちぱちさせる。


「え?」


「秘密にしてくれたら……」


シルヴァスは少し考えるように空を見た。


それからにこっと笑う。


「あの子の話を聞かせてあげる」


さくらの目が輝く。


「セレンの……?」


「そう」


シルヴァスは頷く。


「昔の話とかね」


そして少し楽しそうに続けた。


「また会おう、さくら」


「夢の中なら、いつでも会えるから」


さくらは思わず聞く。


「あ、あの!」


シルヴァスは振り向く。


「ん?」


さくらは少しだけ勇気を出して言った。


「どうして私なんですか?」


シルヴァスは少しだけ驚いた顔をした。


そして優しく笑う。


「理由と呼べるほどのものじゃない」


そう言ってから、森を見渡す。


風が静かに吹く。


木々がざわめく。


「だけど」


シルヴァスはさくらを見る。


「森が君を気に入っているみたいだから」


その言葉を最後に。


森の光がゆっくりと薄れていく。


さくらの意識も、少しずつ遠のいていった。




朝。


さくらはゆっくり目を開けた。


「……夢?」


小さく呟く。


窓の外では、いつもの森の朝が広がっていた。


だがさくらの胸には、不思議な感覚が残っていた。


あの優しい声。


あの笑顔。


そして――


「セレンの保護者のようなものだよ」


(……秘密、なんだよね)


そう思った瞬間。


ほんの一瞬だけ――


森の奥から、あの夢と同じ気配がした気がした。


さくらは思わず、窓の外へ目を向ける。


だがそこには、いつもの朝しかなかった。



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