第21話 守るための魔法
第21話 守るための魔法
家の前の開けた場所で、さくらは杖を握りしめて立っている。
目の前にはセレン。
いつもの穏やかな表情だが、今日は少し真剣な空気が漂っていた。
「今日は少し実戦に近い訓練をするよ」
セレンの言葉に、さくらは小さく頷く。
「はい」
杖を握り直す。
「じゃあ今日は、防御と攻撃の練習をしよう」
さくらの表情が引き締まる。
「まずは防御」
セレンは軽く杖を振った。
空気が揺れ、小さな風の刃が生まれる。
「これを防いでみて」
さくらは慌てて杖を構える。
「えっ、もうですか!?」
「うん」
次の瞬間、風刃が飛んだ。
「きゃっ……!」
さくらは反射的に魔力を流す。
「風壁!」
小さな結界が生まれる。
風刃はそれに当たり、ふわっと消えた。
さくらは目を瞬かせる。
「……できた?」
セレンが微笑む。
「うん、ちゃんと防げてる」
さくらの顔が少し明るくなる。
「本当ですか?」
「うん」
セレンは少しだけ魔力を強める。
「じゃあ次」
風刃が二つ飛ぶ。
「ええ!?」
さくらは慌てて魔力を流す。
「風壁!」
結界が広がる。
二つの刃が弾かれた。
「……!」
さくらは驚いた顔をする。
「今の、自分でできました!」
セレンは小さく笑った。
「さくら、ちゃんと上達してるよ」
その言葉に、胸がじんわり温かくなる。
だが次の瞬間。
セレンの杖が再び動いた。
今度は小さな火球が生まれる。
「次は攻撃」
「は、はい!」
さくらは杖を構える。
「火球!」
小さな炎が生まれ、ふわりと前へ飛ぶ。
しかし途中でふらつき、地面に落ちて消えた。
さくらはしょんぼりする。
「やっぱり難しいです……」
セレンは少し考えた。
「魔力を押し出すんじゃなくて、流す感じ」
そう言いながら、さくらの背後に立つ。
「腕を少しこう」
さくらの手をそっと支えた。
距離が急に近くなる。
「……!」
さくらの心臓が跳ねた。
「集中して」
セレンの声が耳元で聞こえる。
さくらは慌てて前を見る。
「は、はい……!」
深呼吸する。
そして魔力を流す。
「火球!」
今度は炎が安定して飛んだ。
小さな火球が木の前で弾ける。
さくらは目を輝かせた。
「できました!」
セレンも少し驚く。
「うん……今のは良かった」
だがその時。
さくらの杖から、もう一度魔力が流れた。
ふわり、と森の空気が揺れる。
周囲の木々が微かにざわめいた。
セレンの表情が変わる。
(今の魔力……)
森の魔力と、ほんの一瞬だけ共鳴したように感じた。
だがすぐに静かになる。
さくらは気づいていない。
「セレン!」
嬉しそうに振り向く。
「私、少し強くなれてますか?」
セレンは一瞬考え、それから優しく笑った。
「うん」
静かな声で言う。
「ちゃんと強くなってる」
さくらの顔がぱっと明るくなる。
「よかった……!」
「でも油断は禁物だよ」
「はい!」
セレンはその笑顔を見て思う。
(この子は……)
守られるだけの存在ではない。
きっとこれから、もっと強くなる。
そして森の奥で――
微かに魔力が揺れている。
まるで何かが、目覚める準備をしているように。
この森の奥深くに眠る存在。
その名を――




