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私の魔王様!?─仇討ち少女は魔王を倒したい!─  作者: シギノロク
弐章 勇者様の憂鬱─囚われの幼なじみの救い方─
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十七話 セキュリティが甘過ぎる

 私たちは息を潜めて待っていた。


 しかし、待てど暮らせどジェスカちゃんは一向に来る気配がない。

 おかしい。

 いつもなら、部屋の前の見張りの兵士が交代して十分程度経ったころ、食事を運んでくるはずだった。

 しかし、もうかれこれ三十分近く待っているような気がする。


 私は痺れを切らして扉の近くに寄った。

 すると、外からバタバタといくつもの足音がするではないか。

 私はそっと扉に耳をつけ、外の様子を伺った。


「賊が……」

「……侵入…」

「…地下室を守れ……」

 言葉として聞き取れたのはこのくらい。

 あとは足音やら声が小さいやらでうまく聞き取れなかった。


 賊?

 侵入?

 まさか、ジェスカちゃんのことがバレたの?

 だから、来れなくなったの?


 やけに手足が冷える。

 私は震える手を握りしめた。


 この部屋をすぐに出て確認したい。

 でも……

 私は辺りを見回す。

 女性たちの不安そうな顔がそこにはあった。

 その中にはフローラちゃんのお母さんもいた。


 今すぐここを出て、捕まったりしたら、誰も助けられないわ。

 ジェスカちゃんとも、フローラちゃんとも約束したもの。

 絶対、二人の大切な人を助けるんだって。


 今は我慢。

 きっとすぐに人がいなくなる。

 そうしたら、見張りは1人。

 この人数ならやっつけるのは簡単だ。


 足音が完全に聞こえなくなるまでとても長く感じた。


 音がなくなって少し経ったころ、私は意を決して小さく扉を開けた。

 そう、この部屋、実は鍵がかかっていない。

 お昼にジェスカちゃんが鍵をかけるフリをして扉を閉めていた。

 つまり、それからずーっと開いているわけ。


 これを何回かしてくれたお陰で武器を手に入れることが出来たのよね。

 ここまで気づかないとなると、逆に何か罠なんじゃないかと怖くなるわ。

 そんなことを思いながら、外を覗く。


 うん。見張りの兵士さん、いなくなってるわね。

 見張りの意味! なんでお前までいなくなるんだよ!

 セキュリティが甘いとか苦いとかって問題じゃないわ!

 何のための見張りだよ! この給料ドロボー!


 いやいや、こちらとしてはラッキーなんだけど。

 もう少し考えて行動しなさいとこんな風に逃げられちゃうわよ!


 あれ? おかしいわね。

 賊が来たら、守銭奴のデュグライムのことだ。

 真っ先に命、その次に財産になりそうなものを守るわよね?

 私たち、売り物なのよね?

 普通守ったりしない?


 いや、待てよ。

 もしかして、この屋敷には私たちより価値があって大切なものがあるってこと?

 今まで魔族の人身売買がデュグライムの悪行だと思ってきたけど、実際はバレたらもっと都合の悪いものを隠してるってことはないかしら?

 天使様(あの人)が知りたい真実ってそこにあるんじゃないの?

 ジェスカちゃんは予めそれを聞いていて、暴露する準備をしている途中に何かアクシデントに巻き込まれたのかもしれない。


 私は皆を手招きした。


「今、見張りはいない。ここを抜け出すチャンスだわ。手筈通り、複数人で必ず行動して、外に出るの。外に出られたら人通りの多いところへ逃げて新聞社に駆け込んで」


 私の言葉に皆は頷く。


 長い廊下に出るが、誰もいない。

 どうやら、兵士の皆さんは賊とやらに忙しいらしい。


「さあ、行きましょう!」

 私の合図で一斉に廊下を走り出す。

 勿論、私は最後だ。


「あなたは……?」

 走ろうとしない私に戸惑うように、フローラちゃんのお母さんが振り返りながら叫ぶ。


「私は他に捕まってる人たちを逃がした後で、屋敷内を適当に撹乱するつもり。あ、気にしないで。ここで起きてることを1人でも多くの人に知らせなきゃならない。その為には1人でも多くここを抜け出して証言してもらわなきゃ」

 私は笑顔をつくる。


 フローラちゃんのお母さんは頷くと、また走り出した。


 さて、まずは他の人たちを逃がしてあげないとね。

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