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夜更かせ!異世界!!  作者: 見切り発車


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3/3

雨の降る街に

「この感じは、暫く止みそうにないな。

君もそう思うだろう?」


月が隠れた深い夜に、俺はそう言った。

東屋の屋根に、ポツポツと雨が当たる音が響く。


「だからおっさん、馴れ馴れしく話しかけんなよ」


俺の横から、鬱陶しそうにそう答える声が聞こえる。


見れば、十二歳程だろうか。

子供と言って差し支えないほどの大きさの影が見える。


「とは言っても君はまだ子供だろう?

気になるに決まっているじゃないか」


「俺が子供だからって、おっさんに何が関係あんだよ」


こちらの方を見ようともせず、少年は外の景色を眺め、そう吐き捨てる。


「確かに、それもそうだ」


静寂に雨の音が響く。

ポツポツと鳴っていた音は、やがてザアザアと音を変えて、俺の耳へと届くようになっていく。


やはり夜はいいものだ。


静かな夜に、段々と激しさを増す雨の音が聞こえる。


それらは相反するようなものでありながら、お互いをより魅力的なものへと昇華させる。


こんな経験はないだろうか。


いつもと変わらない夜である筈なのに、そこに雨の音が加わるだけで、なんだか寂しいような、悲しいような、そんな気持ちになる事が。


俺はふと彼の横顔に目を向ける。


彼の横顔は、困ったような、それでいて寂しさを感じさせるような、そんな風に感じさせる。


俺の視線に気づいた彼は、目を鋭くさせ、こちらを睨む。


「おっさん、なに見てんだよ」


「ああ、いやなに、何か思い悩む様な事でもあるのかと、そう思ってね」


「別にねぇよ、そんなこと」


そう言って、再び会話が途切れる。


すると、辺りはパッと煌めき、静寂を切り裂くように、雷の音が鳴る。


横の彼は、突然のことに驚いて身体を震わせる。

そんな彼の様子を見て、俺は声をかける。


「君、良ければご飯でも食べに行かないかい」


「はぁ?なんだよ急に」


「ここで会ったのも何かの縁だ。

行きつけの店にでも誘ってみようかと、そう思ってね。」


冷たい風が、俺達を包む様に吹く。

彼は少し考え込み、警戒した様子でこう答えた。


「て言ってもよ、この雨だ。

俺はずぶ濡れになるのはごめんだぞ」


ああ、こんな夜には、思い切り雨に当たるのも悪くはないな。


俺はそんなことを考えながら、東屋の外へと歩く。


「少し見ていたまえ、少年よ」


俺は魔法を構築し、展開する。

すると、俺の頭上に落ちるはずだった雨粒は、透明な膜に当たったように、俺を避けて地面へと落ちる。


その様子を見て、目を丸くした彼は、小さな声でこう呟く。


「おっさん、魔法が使えんのか…?」


「そんな事よりも、君は行かないのかい?

いつまでもここで過ごす訳にもいかないだろう」


彼は、半信半疑といった様子で、こちらへ歩みを進める。


そうして東屋の外へ出ると、彼の頭上にも透明な膜があるように、不自然にそこを避けて、雨粒が落ちていく。


「すげぇ…」


「さぁ、行こうか、少年よ」


惚けていた様子の彼は、声をかけるとハッとして、こちらを睨んでくる。


「俺は少年でも君でもねぇ、ガルだ」


「じゃあ俺からも言わせてもらおう。

俺の名前はおっさんではなく、アークだ。

よろしくな」


そう言って俺は目的の食堂へと歩み始める。

そんな俺の後ろを、少し距離を置いてガルが着いてくる。


雨音の中に、泥を踏む音が混じる。


暫く歩くと、既に暗くなった家々の中に、一つ、未だ明かりがついているものを見つける。


「ここだ」


その明かりの前で、俺は立ち止まる。


後ろにガルが着いてきていることを確認した後、少し古びたドアを開ける。


中には酒樽や瓶が幾つか置かれていて、食堂というよりも、酒場といった内装に見える。


しかし、店内には客と思わしき人影はなく、奥に見えるカウンターに一人、屈強な男がグラスを磨いている様子が見えるのみだった。


俺はその男に近づいて、声をかけながらカウンターの席へと座る。


「久しぶりだな、デンガク。

いつものあれと、エールを二つくれ。」


デンガクは、数度俺の姿を見て、その言葉を聞いて、黙々と動き始める。


俺は、未だに入口に立ち止まっているガルに、手招きをする。


ガルは未だ警戒心を捨てきれないといった様子で、恐る恐るこちらへと近づき、間に席を一つ挟んで、横に座る。


そうしていると、デンガクが奥から二つの料理と、二杯のジョッキを持ってこちらへやってくる。


未だ沈黙を守りながら、彼は手に持った皿とジョッキを俺とガルの前に一つずつ置く。


「美味そうな肉に、エールじゃねぇか

やっぱりこれがなきゃ始まらないよな」


そう言って彼は、ジョッキを持ち、一口飲む。


「これ、エールじゃなくて果実水じゃねぇーか!」


ジョッキの中身を飲んだガルは、怒った様子で立ち上がり、こちらを睨む。


「子供に酒を飲ませるわけないだろう?

当たり前のことじゃないか。なぁ、デンガク?」


そう流した俺を見て、ガルは話の振られたデンガクの方を向く。


そこには、無表情でサムズアップしたデンガクの姿があった。


「お前ら、バカにしやがって!」


そう憤るガルは、俺に近づこうとする。

すると、この空気に似合わない、少し腑抜けた音が鳴る。


ぎゅるるるるる


音の発生源を辿ると、どうやらガルのお腹から鳴っているようだ。


「くそっ!」


不貞腐れた様子のガルは、悪態を着いて、顔を赤く染めながら、目の前にある料理を頬張る。


どうやら今日も面白い夜になりそうだ。


そうして、次第に夜は更けていった。

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