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夜更かせ!異世界!!  作者: 見切り発車


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圧倒的独壇場

中世の街並み夜更かし散歩したら面白いだろうなと思ったので書きます。

俺は一人、誰もいない大通りを歩いていた。

辺りは静まり返り、静寂が場を支配していた。

そんな支配を振りほどくように、俺は石畳を歩く音を響かせる。


夜を歩くのは心地が良い。俺は心の底からそう感じていた。


俺が単純に一人の空間が好きだからか、或いはこんなに綺麗で魅力的な光景を、独り占め出来るからだろうか。


そう思いながら、夜の空気をめいいっぱい吸い込むと、えも言われぬ高揚感が俺の胸に広がる。


真っ黒な空に浮かび可憐に光る二つの月も、青白く照らされるこの街並みも、今はその全てが俺のものだ。


なんて贅沢なのだろうか。


そんな事を考えながら歩いていると、やがて大きな広場へと出る。


広場の中心には噴水があり、誰に見せるでもなく水で綺麗なアーチを描いている。


辺りに響く水の音に、時折吹く風の音。

それらを彩るように降り注ぐ月光。


それらはどんな芸術品にも劣らないような、そんな美しさを感じさせてくれる。


水に触れようと噴水に近づくと、その奥にあるベンチに、なにか人影のようなものが見えた。


よく目を凝らしてみると、それは白髪の少女だった。

髪で顔はよく見えないが、そこまで大きくはない。


こんな時間に何をしているのだろうか。


俺は年甲斐もなくワクワクしながら、ゆっくりと近づく。


まさか、俺以外にも夜の魅力に気づくものがいたとは。


そんなことを思いながら声をかける。


「何をしてるんだい?お嬢さん」


少女はビクリと肩を震わせ、下げていた顔を上げる。


「えっと、貴方は…?」


整った顔立ちの少女は、警戒心をむき出しにしながらそう問いかけてくる。


「おっと失礼。俺の名はアークだ、お嬢さんは?」


「私は…セイラです…」


少し悩んだ顔をしながらセイラはそう答えた。


「こんな時間に、どうしてこんな所に?」


「もしかして、衛兵さんですか?家には帰りたくなくって…」


「俺のこの格好を見て、衛兵か。

お嬢さん、随分世間知らずみたいだな?」


「え、えっと、その…」


明らさまに動揺した様子で口ごもるセイラを見て、俺は少し笑ってしまう。


「そんな事より、だ。夜は楽しんでいるか?」


「よ、夜を、ですか?」


怪訝な顔をしてそう返してくる。


「そうだ。夜は心が癒される。

こんな夜に出歩く奴の大半は、無意識にその癒しを求めてるはずさ。」


思い当たる節があったのか、セイラの顔が曇る。

おそらくは、家に帰りたくないと言ったことと関係があるのだろう。


「私、実は…」


そう言って、セイラはこれまでの出来事をぽつりぽつりと語り出す。


セイラには年の離れたお姉さんがいて、名をルイザと言うらしい。

曰く、ルイザはかなり優秀な魔道士で、魔法を研究するため、世界各地を飛び回っているらしい。


家に帰って来ては色々な魔法を見せてくれる姉が、とても大好きだと。


そんな姉さんが暫くぶりに帰ってきて、喜んでいたのもつかの間、今日の夜に連絡が来て、すぐに魔法の研究に向かうことになったらしい。


大急ぎで準備を始める様子を見て、なんだか寂しくなって、家を出てきてしまった、ということらしい。


そこまで聞いて、俺は口を開く。


「質問の答えになってねぇよ。

それで、夜は楽しんでいるか?」


セイラは、キョトンとした顔でこちらを見る。

まるで訳が分からないといった顔だ。


「だから、夜は楽しんでいるかって聞いてるんだ」


「夜を楽しむって、どういうことですか…?」


セイラは、おずおずとした様子で聞き返してくる。

そうか、まるで分かっていないな。


「知りたいなら、俺の手を掴め」


俺はそう言いながらセイラへと手を伸ばす。


セイラは困惑した様子で、ゆっくりと手を伸ばし、掴む。


「手、離すなよ」


それだけ伝え、俺は魔法を構築する。

瞬間、風が吹き上がり、俺たちは空へと舞い上がる。


「え、ええぇぇぇ!!なんですかこれぇぇ!!」


パニックになったように叫ぶセイラにこう答える。


「なにって、周りを見てみろ」


目的の位置まで上がりきった俺は、半ば放心気味のセイラの手を離す。


セイラは小さくなった街を見下ろし、感嘆の声を漏らす。


「まるで小さな模型みたいだろう?」


俺は、そう声をかけながら街を見る。


一際デカイ王城も、街をぐるりと囲む外壁も、今や街全体が俺の手のひらの上に乗っかるほど小さい。


「それに、今日は月がよく見える」


俺は背後にある月に向き直ると、セイラもそれを真似るように、後ろを振り向く。


背後には先程より大きくなった月が輝いていた。


「わぁ…綺麗…」


そうつぶやくセイラに少しイタズラをする。


「それよりも手、離すと落ちるぞ」


ハッと自分の手が繋がれてないのを確認すると、慌てた様子で俺へと近づこうとし、やがて何かに気づいたような顔をすると、ムッとした表情でこちらを見る。


「落ちてないじゃないですか!!」


不満気な顔をしてそういうセイラを見て俺は、笑いを堪えきれなくなってしまう。


「冗談だ冗談、悪かったな」


「どうだ?これが夜を楽しむってことだ」


俺は話を逸らすようにして、セイラにそう言う。


「確かに、綺麗です。こんな景色、見たことない…」


「丁度良い気分転換になっただろ?ここから家は見えるか?」


俺は彼女を送り届けるため、さり気なく家の場所を尋ねる。


「多分、あそこに見えるやつだと思います」


そう言ってセイラは、民家の密集した辺りにある、一際大きな屋敷を指さした。


やっぱり、あの子の妹か。

大魔道士ルイザ。世界に名を轟かす有名な魔道士で、世界を旅したら一度は名前を耳にする著名人だ。

直接会ったら面倒なことになるため、降ろしたら早めに離れよう。


「セイラ、夜ってのは楽しいもんだ。誰にも何も言われないし、寂しさだって埋めてくれる。でもな、流石に一人であんな所に居たら危ないぞ?それに、ルイザさんだって探してると思うぜ?」


俺は諭すようにセイラに言う。


「そう…ですね」


セイラは、寂しそうな、困ったような、それでいてスッキリしたような顔を浮かべる


「それでもまた出歩きたくなったら、これを鳴らせ。また俺が夜の楽しさを教えてやる」


そう言って、俺はどこからか一つのベルを取り出し、セイラへと渡す。


「さて、そろそろ家に着くぞ。ごめんなさいの準備は出来てるか?」


ベルを見つめるセイラを見て、そう問いかける。


「はい、あの…ありがとうございました」


胸に抱えるようにしてベルを持ったセイラが、真っ直ぐとこちらを見る。


「良いってこった。じゃあ、またな」


セイラを屋敷の近くに降ろすと、俺はまた空へと浮かび上がる。


空を見ると、空が少しずつ白み始め、夜明けが近いことを告げていた。

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