第17話 この世界の考察
馬車を引く馬も、御者も、ドッペルゲンガーを使うことにした。
正直、この国の人間は信用していない。
世界樹討伐について過去の記録も調べた。
勇者が世界樹を討伐した記録は残っている。
けれど、その後勇者がどうなったのか。
そこだけが、綺麗さっぱり残されていなかった。
一件も。
一人も。
不自然過ぎる。
きな臭い。
だから、移動手段も警護も他人には任せない。
全部、私が管理する。
それと、この世界についても色々調べてみた。
驚いたことに、この世界は球体ではなかった。
巨大なお皿の上にケーキを乗せたような形をしていて、そのお皿ごとくるくる回転することで昼と夜が生まれている。
どうりで太陽が横へ移動するわけだ。
世界樹は、そのお皿のちょうど中心にある。
そして勇者召喚は三百年に一度。
各国の持ち回りで行われているらしい。
勇者召喚の方法も気になったので調べてみた。
案の定、王宮の禁書庫に厳重に保管されていた。
もっとも。
鍵なんて意味はない。
影はどこへでも入れる。
おかげで、ちゃんと全部読みました。
ついでなので、召喚陣のあった謁見の間も見てきた。
床一面に大きな召喚陣が描かれている。
これで蓮斗様は、この世界へ喚ばれたのか。
じっと眺めていると、何だか少し汚れているように見えた。
「お掃除しましょう」
私は影から雑巾やら箒やらを出して、せっせと磨き始めた。
こういうのは綺麗な方が気持ちいい。
ゴシゴシ。
ゴシゴシ。
……あれ?
召喚陣が薄くなってきた。
もう少し。
ゴシゴシ。
ゴシゴシ。
綺麗さっぱり消えた。
うん。
綺麗になった。
これで安心である。
よかった、よかった。
準備は万端。
今日は、いよいよ出発の日である。
完成した馬車を蓮斗様へお披露目した。
すると蓮斗様は目を丸くして固まってしまわれた。
おぉ……。
びっくりしていらっしゃる蓮斗様。
レアです。
SSRいただきました!
頑張って改造した甲斐がありました。
ところが、それを見ていた第二王子殿下が騒ぎ始めた。
「私もそちらの馬車に乗る!」
いやいや。
これは蓮斗様専用である。
「王族より良い馬車に乗るなど不敬である!」
などと言い出したので、
「この程度の技術力もないんですか!?」
と、少し大きめの声で申し上げた。
すると騎士団長が血相を変えて飛んできた。
「殿下、どうかお鎮まりください」
必死になだめている。
そして、小さな声で、
「……どうせ帰りは殿下がお使いになられるのですから」
などと囁いていた。
本人たちは聞こえていないつもりなのだろう。
残念でした。
私は影から全部聞いている。
……なるほど。
やっぱり、きな臭い。
私は、ずっと考えていた。
キラキラ物体が『帰れない』と言ったこと。
この世界の資料に、勇者のその後が一切残されていないこと。
キラキラ物体が蓮斗様へ何の力も与えていなかったこと。
騎士団の訓練が、走り込みや剣の素振りといった基礎訓練しか行われていないこと。
そして。
世界樹が『この世に在って、この世に在らず』と言われていること。
点と点だった違和感が、一本の線で繋がった。
私は、一つの仮説へ辿り着く。
もし。
それが仮説ではなく、事実だとしたら――。
私は、この世界を。
そして、蓮斗様をこの世界へ送り込んだアイツを。
決して許しはしない。




