【下剋上編】 第五段 早雲、相模へ
【下剋上編】 第五段 早雲、相模へ
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伊豆一国を平らげた盛時、これで満足するかと思いきや、さらに東へと手を伸ばし始めた。今回は、その手口を書いておこうと思う。なかなか、我の知る武士の作法とは異なる、油断のならぬやり口だった。
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篁様へ申し上げ候。
此度、下界にて見届け候仔細、左の如くに候。
盛時、伊豆国を平らげし後、相模国の小田原城を狙い候。この城の主・大森藤頼、盛時とは交誼を結び候仲にて、互いに贈り物など交わす間柄にて候由に~~~~~
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現代語訳
篁様、報告します。
今回見たことを書いておきます。
盛時は伊豆国を平定した後、相模国の小田原城を狙いました。この城の主である大森藤頼は、盛時と親しい間柄で、互いに贈り物などを交わす仲だったそうです。
しかし盛時は、これを逆手に取りました。「鹿狩りをしていたら、獲物があなたの城の裏手に逃げ込んでしまいました。追い返すために、勢子の者たちを裏手に入れさせてもらえないでしょうか」という書状を送り、藤頼はこれを疑いもせず承知しました。こうして盛時は、勢子に扮した精鋭数百人を城の裏手から送り込み、まんまと小田原城を奪い取ってしまったのです。
友誼を結んだ相手を、こんな謀で欺いて城を奪うとは、我の知る武士の作法とはまるで違うものです。ただ、これもまた、下剋上という新しい時代のやり方なのだろうかと、見ていて考えさせられました。
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かつての武士は、少なくとも表向きは、義理や信頼を重んじるものだったはずだ。だが、この盛時という男を見ていると、そういうものは、もはや勝つための道具の一つに過ぎなくなっているように思える。信頼を利用してこそ、初めて成し得る謀。これが下剋上の時代の本当の恐ろしさなのかもしれない。次の段では、この頃下界を襲った、大きな天変地異について書いていこうと思う。人の企みをよそに、天もまた、容赦なく牙を剥く。




