ep14:美月視点04
6歳の誕生日が近づく頃、私はアランに誘われて冒険者ギルドへ行った。
この世界では、6歳から冒険者登録ができる。
アランは、冒険者になりたいと言った。
「ギルドに登録すれば、冒険者養成スクールに通えるよ」
「じゃあ、私も登録する!」
アランと共に歩む未来を目指す私が、断る筈がない。
ゲームで6歳以降のアランを見かけなかったのは、冒険者養成スクールに通ったり、初心者向けの採集クエストをしていたからだと分かった。
そりゃあ、孤児院へ行っても会えないわけだよね。
「ルナ、僕と組んでもらえる?」
「うん!」
推しとの2人パーティ結成。
私は天まで舞い上がりそうなくらい嬉しかった。
(……前から気になってた、アランのステータスが見える!)
ゲームで組んだ攻略対象と同じように、私はパーティを組んだ途端にアランのステータスを見ることができた。
転生者特典なのかな? アランは私とパーティを組んでもステータスが見えたりはしていないらしい。
アランのステータスは、こんな感じ。
体力 F(-)
魔力 F(-)
筋力 C
知力 F(-)
命中 F(-)
速度 F(-)
(アランが筋力特化なんて、想定外だわ……)
命中と速度を上げる身体強化をかけただけで、クレーマー男を一発KOした謎が解けた。
アランは、筋力だけが飛び抜けて高いステータスだったのね。
ステータスは訓練によって上がるから、冒険者養成スクールに通いながら頑張れば、平均値未満の他の能力も上がっていくと思う。
一方、6歳近くなった私のステータスは、こんな感じ。
体力 F
魔力 D
筋力 F
知力 D
命中 F
速度 F
2歳頃からコッソリ魔法を使い続けていたので、魔力と知力が突出して上がっている。
ゲームならルナの能力値が上がり始めるのはエトワール国立学園入学後なので、ちょっとズルした感じだ。
◇◆◇◆◇
私たちはギルドに登録して、冒険者養成スクールに入学も決まった。
新学期が始まるのを待ちつつ、採集クエスト励むようになった頃。
「おかえりなさい、2人とも、いいものがあるからすぐに手を洗ってそこに座って」
「「はーい」」
薬草集めのクエストを終えて孤児院へ帰ったアランと私に、ミテーラさんが優しい笑顔で言った。
その背後で、メアさんが戸棚を開けて何かを取り出そうとしている。
(コロッケ?!)
私は、メアさんが戸棚から出してきたものを見て驚いた。
【星空の彼方】の世界には、コロッケは無い。
食用油は高価なので、庶民が揚げ物を口にすることもない。
なのに、綺麗なキツネ色に揚がった小判型の食べ物が、孤児院の戸棚から出てくるなんて……
「美味しそう! これどうしたの? なんていう食べ物?」
「コロッケというそうよ。公爵家のお嬢様がお作りになって、差し入れてくださったの」
初めてコロッケを見たであろうアランが聞く。
答えるミテーラさんの言葉に、私は更に驚いた。
(公爵家のお嬢様って、まさか悪役令嬢カレン?!)
ゲームではありえないことだった。
悪役令嬢カレンは平民を見下していて、孤児院に差し入れなんて絶対やらない。
まして料理なんて使用人にやらせるものと思っているから、自分で何か作ることはしない。
「食べてみて。凄く美味しいわよ」
オヤツ感覚で、紙に包んで渡されるコロッケ。
私は動揺を隠しながらそれを受け取り、かぶりついた。
(……日向食堂の味だ!)
肉じゃがを潰してコロッケにしたような、ほんのり甘さがある懐かしい味。
それが何を意味するか、私は理解した。
「えっ? ルナ、どうしたの?」
「……あ、そ、その、美味しすぎて……」
隣で驚くアランに、そう答えるのがやっとだった。
私は自分の頬を次々に伝う涙を、止められなかった。
お父さんとお母さん以外にこれを作れる人を、私は知っている。
あの日、私と一緒にいた2人のうち1人だ。
(……華蓮ちゃん……)
心の中で、その名を呟く。
私の幼馴染。
家族みたいに、いつも一緒にいた女の子。
転生していたんだね。
華蓮ちゃんもいるんだね、この世界に……。




