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悪役令嬢カレンのシナリオ改変、あれ?他にも転生者がいる??  作者: BIRD


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ep01:前世の思い出と転生

 陽太くんと美月ちゃんは、私にとって家族のような存在だった。

 私の両親は貿易商をしていて、商品の買い付けのため頻繁に海外へ行く。

 そんなとき、私を預かってくれるのが、お隣の日向家だった。


「華蓮ちゃんなら、いつでも泊まりに来ていいよ」


 日向家のおじさんとおばさんは定食屋を経営していて、自宅とお店は同じ建物になっている。

 家族の食事は、お店の仕込みのついでに作っていた。

 だから、「子供が1人増えても平気だよ」って、いつも言ってくれるの。

 私にとっては、日向家のごはんが、食べ慣れた「家庭の味」だった。



「一緒にお昼寝しよう」

「華蓮ちゃんが真ん中ね」


 陽太くんと美月ちゃんは、お昼寝のときは私を真ん中に寝かせてくれた。

 寒い冬の日には、左右から2人がピッタリくっついてくるので、私はいちばん温かく眠れた。



 公園で遊ぶときは、必ず3人で出かけた。

 私は、滑り台で遊ぶのが、ちょっと怖い。

 上がらずに近くで見ていると、陽太くんが手をひいてくれた。


「ほら華蓮ちゃん、一緒に滑ろう」


 陽太くんはそう言って、私を背中から包むように抱いて滑ってくれる。

 そうしてもらうと、滑り台の高さも速さも、ちっとも怖くなかった。



 年上の男の子たちにブランコを横取りされそうになったとき、美月ちゃんは絶対に退かなかった。

 悪いことは許さないってハッキリ言える美月ちゃんは、いじめっ子と喧嘩することもあった。


「順番でしょ! 横入りしないで!」

「なんだよ! お前、生意気だぞ!」


 身体の大きい男の子は、美月ちゃんを突き飛ばそうとした。

 でも、美月ちゃんには、頼もしい味方がいる。

 素早く間に入った陽太くんが、いじめっ子の手を掴んで止めた。

 陽太くんはもう片方の手で男の子の腕を持つと、肩に担ぐみたいに持ち上げて投げ飛ばした。

 テレビで見た、柔道の技に似てる。

 陽太くんは武道は習っていなかったけど、見様見真似で出来てしまうセンスを持っていた。


「大きいからって威張るな!」


 陽太くんに怒鳴られて、大きい男の子は慌てて逃げ出した。

 自分から喧嘩を売るようなことはしないけれど、美月ちゃんや私を守るときの陽太くんは強い。

 勝てる相手じゃないと、いじめっ子も悟ったらしい。

 その後、男の子は大人しく順番を待つようになった。



 幼稚園、小学校、中学校、高校……私たちはいつも一緒だった。

 宿題をこなすのも、遊ぶのも、いつも3人で。

 ずっとこのまま、一緒にいられると思っていたのに……


 列車事故が、私たちを引き離した。


 ガラスの破片から私と美月ちゃんを守ってくれた陽太くんは、大怪我をしてしまった。

 ハンカチで押さえて止血しようとしても、どんどん血が噴き出して止まらなかった。

 あのとき、陽太くんは、もう事切れていたのかもしれない。

 必死で押さえ続けた首の傷は、頸動脈の位置にあったから。


 助けたかった。

 助かってほしかった。

 私はもっと、陽太くんと一緒にいたかった。


 伝えられなかった想いは化石になって、私の心の隙間に入り込む。

 幼馴染という関係で終わってしまった、私の片思い。

 大切な人の死が重くて辛くて、胸の奥が痛くなる。

 もう、恋をするのはやめよう。

 陽太くんへの想いまで失くすのは嫌だから。 

 

 そんな悲しみを抱えて、私は転生した。 

 公爵家の長女として。


 カレン・フィーユ・ラ・ミシオン。


 それは、私と美月ちゃんが遊んでいたゲームに出てくる、悪役令嬢の名前だった。

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