Twenty-Seventh 絶望のWABE
「ペトロレウム、かなり時間を稼いでいる」
クレフはモニターを見つめ、交戦時の映像を見つめる。
仕掛けさせて戦闘に持ち込み、不利になったらすぐに引く。
何度も粘り強く立ちふさがり、行く手の進路を阻む。
「このまま、神風刀を奪いに行きますか」
ウィングは椅子から立ち上がる。
「君は、ここで相手の動きを観察し続けるんだ」
椅子に座るように促す。
「ヌクレア、目に入ったWABE隊員は全員始末していい」
ヌクレアの遅れて上がる。
「神風のいる場所まで一人たりとも合流させるな」
顔が上がり、目が合う。
「おっ、全員始末か......いいねぇ」
飢えた獣のような視線がクレフを刺した。
渓人たちは、音の方へと走る。
「......獲物ダァ」
曲がった背筋と飢えた獣のような視線。
左腕を垂らし、右手で握った散弾銃を肩にかける。
円形のユニットを起点に持ち手と銃身が生え、黒い銃口が顔を出す。
銃身下部には黒い刃の銃剣が生え、黒光りしていた。
「来るぞ」
梶山はひし形のブレードを前に突き出した。
「オラァ!」
腕を激しく振り下ろし、引き金を引く。
__ドン!
散弾が放たれる。
(範囲が広い)
梶山は、武器を強く握る。
「防ぎきれない、避けろ!」
二人は左右に飛んだ。
「エクスパンド!」
ひし形の対辺同士が膨らみ、ブレードが広がる。
__キーン!
楯に当たる弾丸。
__シュン!
横をかすめる弾丸。
それと同時に、迫る銃剣。
楯越しに鋭い刃がきらりと光る。
(......来る)
だが、
__カーン!
銃剣の挙動がそれる。
「そうはさせない」
渓人が照準を覗き、引き金に手をかける。
__バシュン!
はじけるような音とともに、閃光が走る。
銃身がスライドし、ばねがきしむ。
__カン!
再び銃剣を弾き、火花が散る。
(前のやつより、威力が強い)
銃身を見つめる。
__バシュン!
(でも、なぜか制御はできる)
照準器から目線を外す。
横目に、黒い何かが見えた。
「なんだ、あれ」
渓人は黒を見つめる。
液体のようにうごめき、音の鳴るほうへ向かう。
その先には、
「......風間さんだ」
遠目からでも見える閃光、そして音。
「しかも一人」
地面に足をつけ、強く蹴った。
「梶山さん!」
声を張り上げる。
「そっちは任せます」
前へ前へと足を出し、駆け出した。
数分前。
「風間隊員、私だ」
無線越しに、低く落ち着いた声が流れる。
「桜井司令、なんでしょう」
すぐに応答し、返事を待つ。
「神風をここから下げる」
機械のようにトーン一つ変えず、そう告げる。
「......えっ」
思わず声が漏れた。
「下げなければならない」
凍り付きそうなほど冷徹な声が風間を指した。
「理由は後だ」
応答を待たずに無線が途切れた。
「はあ、はあ」
息を切らしながら走り続ける。
目に風間さんの姿が映る。
「風間さん、何か来......」
そう言いかけた時だった。
__ドォォォォン!
地面が割れ、墨汁のような黒色の噴き出した。
__ストン!
渓人に、風間が落ちる。
「敵将のお出ましか」
鞘から刀を取り出す。
「銀腕」
両手で持ち手を握り、構えを作る。
「渓人、相手はWABEだ」
落ち着いて告げる。
「心してかかれ」
渓人はブレードの引き金に手をかけ、黒の方へ向ける。
黒い液体が一つに集まり、無数のとげを作る。
そのまま立ち上がり人型になっていく。
「WABE級と新たな適合者」
黒い液の中から人が姿を現す。
「実に面白い」
不敵な笑みが浮かぶ。
仮面で隠された目元から、不気味さを感じた。
次の瞬間、両腕についた円形のユニットが回りだす。
液体が彼を中心に流れ出し、巨大な円を描く。
円周が立ち上がり、黒い壁が影を落とす。
今までの戦いとは違う。
本能がそう告げた。
黒い液体が飛び散り、こちらめがけて飛んでくる。
ブレードを振り、液を払い落とす。
だが、液体が球状にまとまり、とげを持った球と化す。
__カーン!
(......硬い)
液体だったものが瞬時にここまで硬くなる。
液体のように流れ、岩のように固まる。
「渓人、来るぞ」
地面に液体が流れ、迫る。
二人は地面を蹴り、瞬時に上に飛ぶ。
だが、しぶきが上がり、液が塔のように固まる。
二股に延び、二人の腹部に向かう。
「燕、居合抜き」
瞬時に刀を抜き、鞘に戻す。
__スッ。
黒い物体が割れることなく筋が入り、斜めに滑る。
渓人はブレードについたトリガーに手をかけ、垂直に刃を当てる。
__シュン!
勢いよく刃が入り、 黒い物体が落ちる。
だが、断面から液が染み出し始める。
「風間さん、地面です!」
渓人が塔を蹴り、根元へと向かう。
背後からは、黒いとげが迫る。
加速しながら、背後から急所についてくる。
背中からじわじわとした感覚が襲う。
トリガーに手をかけ腕を振った。
__シュン!
根元に刃が入り、塔が崩れ落ちた。
すかさず照準を覗き、仮面の男を狙う。
__バシュン!
だが、近くの液に弾丸が包まれ、止まった。
「なあ、もっと楽しませてくれ」
両腕についた円形のユニットが回り出す。
"まだ、本気じゃない"
それを表すように回転が加速した。




