表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
訓練生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/11

First 全ての始まり

「作戦会議を始める。今回の標的は——日本だ。」



 ざわめきが走る。



「は? ふざけんな。そんな国襲って何になる」

 コークスが吐き捨てた。



「資源も戦利品も期待できない。合理的じゃないな」

 ウィングが腕を組む。


 空気が一気に荒れる。



 ——ドンッ!



「目先の利益もねえ戦いに意味なんてねえだろうが!」

 ヌクレアが机を叩いた。



 その瞬間。



「黙れ。」

 低い一言で、すべてが止まる。

 隊長クレフはゆっくりと視線を巡らせる。



「……正面から叩けば勝てる。お前たちの言う通りだ」


 一拍。


「だが、それでは意味がない」



 誰も口を開かない。


「今回の目的は__」  


 一瞬の間。


「“戦争遺構”の確保だ」


 沈む空気。

 誰も、すぐには反応しない。


 コークスの眉が、わずかに動く。


「……それ、本気で言ってんのか」


 低い声。

 さっきまでとは違う。


 笑いはない。


 ウィングも口を閉じたまま動かない。

 ヌクレアの手が、机から離れる。

 クレフは答えない。


「存在は確認されている。座標は日本」



「起動条件は、まだ不明だ」



「まずはドロイドで調査する。——異論は?」

 返事はない。


 ペトロレウムだけがが小さくうなずく。

 誰も何も言わない。

 


 ——逆らえない。

 空気がそう言っている。




 その日、空が歪んだ。



「なんだ_あれ…」

 入江渓人(いりえけいと)は立ち止まる。


 黒い影。


 雨のように。


 何体も。



「逃げろ! 落ちてくるぞ!」

 誰かの叫び。

 足音が弾ける。


 渓人も走る。


 その時、

 __ドスン!

 __ドスン!


 連鎖する鈍い音。

 揺れる地面。


 目の前に、落ちた。


 銀色の機体。

 赤い光。

 ゆっくりと、顔が上がる。


 目が合った気がした。

 両手には刃。



「自衛隊です! 離れてください!」

 迷彩服の集団が駆け込む。

 銃口が一斉に上がる。



 「撃ち方、始め!」



 自衛隊が応戦する。


 

_ドドドドドドドドッ


 強い反動。

 腕が引かれる。

 

 飛び散る火花。

 弾かれる弾丸。



「クソ、こいつら銃撃が効かねえ」


「砲撃部隊へ支援要請!総員伏せろ!」



_ドゴォォォォォォン!


 えぐれる地面。

 立地上る土煙。


 その奥。 

 無数の赤い光。

 

__効いていない。




「こちら砲撃部隊応答せよ! 繰り返す応答せよ!」



「撤退だ! 直ちに撤退せよ!」



 走る。

 渓人も走る。


 振り返る。


 見てしまった。


 赤。

 どこまでも赤い景色。


 塞がれている。

 


「伏せろ!」


 その時だった。


_ズドォォォォォン!

_ガタガタ


 戦車が到着する。

 鉄の塊が並ぶ。




「目標、全歩のロボット!」



「装填、徹甲弾! 前線部隊も徹甲弾に切り替えろ!」



「入った!」



「撃て!」



_ズドォォォォォン! 

_ドドドドドドドドッ


 響き渡る轟音。

 

 立ち上る煙


 それでも。

 出てくる。


 何度でも。


 何度でも。

 


 __キリがない。


 

「処理が追いつきません!」



「砲弾が尽きました…」




 燃え上がる空。

 灼熱あるのみ。

 気づけば、誰もいなかった。


 

「暑い…苦しい…」

 

 歩く。


 歩く。



 足に何かが当たる。

  

 建物のがれきか。

 それとも、



 考えるのをやめた。

 

 

 蜃気楼が見える。


 息を吸うごとに喉に焼けるような痛みが走る。


 それでも、歩みを止めなかった。止まれば確実に死ぬ。



「これから、どうしよう…」



 家はない


 学校もない


 帰る場所も居場所もない



 __両親もいない

 この事実だけが胸を貫く。


 悲しいのかすらわからない。

 空っぽの入れ物。



 肌を焼く熱風。

 __痛い。



 目的地もなく歩き続ける。

 ただひたすらに、

 どのぐらい歩いたのか忘れるほどに。



 __助けが来るかもしれない

 都合の良すぎる希望。


 だが、

 最後の命綱。

 

 

 もつれる足。


 崩れるバランス。

 

 反転する視界。



 その時、


 轟音。

 崩れるがれき。


 ”それ”が現れた。


 銀色の装甲。

 赤い光。


 ゆっくりと腕が上がる。



 動けない。


 武器もない


 体力もない


 __生きる理由なんてもうどこにもない



 終わる。

 そう思った。



 だが。



__音が、消えた。


 次の瞬間。

 視界の端。

 黒い“何か”が横切る。


 風、ではない。

 光、でもない。


 音もなく駆け巡る。


 ——斬撃。

 遅れて、音が追いついた。



 __ズンッ

 目の前のそれが、崩れる。


 滑らかな断面。



 __理解が、追いつかない。



 一体だけじゃない。


 背後で。


 横で。


 遠くで。



 次々と、ロボットが“崩れていく”。


 誰かが戦っている。

 だが——見えない。


 いや。

 見えないのではない。



 __速すぎる。

 黒い影が、一瞬だけ視界に映る。


 地面を蹴る音。

 遅れて届く。

 その動きは、人間のそれではなかった。


 数秒。

 気づけば何も動いていない。



 流れる静寂。



 焼けた空気の中。

 人影。

 ロボットの残骸の上。

 

 黒い外套。


 風に揺れる。


 ゆっくりと、こちらを向く。


「……大丈夫か?」

 静かな声。


 返事ができない。


 黒い刀。

 何も、付いていない。


 力が抜ける。

 視界が、落ちる。


 __返事は声にはならなかった。


 力が抜け、視界は暗転し、地面に倒れこんだ。




 光。


 白い天井。


 瞬きをする。

 乾いた感触。


 体を起こす。


 不思議と動く。

 傷は、ない。


「……ここは」

 かすれた声。



「起きた?」

 振り向く。



 見覚えのある顔。


 丸い眼鏡。


 茶色く、短い髪。


 西野愛理にしのあいりだった。


 だが、

 いつもとは違う制服。

 

 スラックス。

 シャツ。

 ジャケット。


 スカーフには”WABE”の文字



 水が、差し出される。


「飲んで」

 受け取る。

 

 手が、落ち着いている。

 周りと、違う。


 「ここは……」


 「大丈夫。ここは大丈夫だから」


 静寂。

 だが、引っかかる何か。


 喉を通る水。

 冷たい感触。


 言葉が、引っかかる。

 赤い光。


 燃え上がる空


 黒い閃光。



 消えない。


「……あの人は」

 少しの沈黙。



「……もうすぐ会えるよ」

 西野の目が、わずかに逸れた。

 彼女の手には”何か”が握られていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ