032 駆け抜ける大地
ステラは移動用アイテム『紫:魔笛』を使用し、近辺に居た大型のモンスター『メガ・スコルピオン』にライドする。
その巨大なサソリに乗っかり、広大な大地を翔抜けるステラ。彼女の移動方法がこんな事になってしまった原因は前回のログアウト方法に原因がある。
故意的では無いにしろ、ゲームから不意な切断を彼女は行ってしまった為、移動アビリティである、『光の翼』の使用を丸一日、規制され今に至るのである──。
当の本人はと言うと───。
「んー、ありがとねーサソリくん。とっても気持ちいよー〜」
──ギュイッ!!
──ギュイイッ!!
めちゃくちゃくつろぎながら、移動をしているのであった。
ギルド『龍の双翼』のギルドシップを目指し、『メガ・スコルピオン』で移動の真っ只中である。
1度行った場所はマップに記載される仕様であり、更にはステラは昨日、マイラに絆され、正式にギルドメンバーとなったので移動最中であるギルドの場所がスマホデバイスのマップへと正確に表示されている。
「お、思ったより近い。もうすぐだ──!」
まいら達がステラのログイン状況を確認していたのか、ギルドシップが偶然にもこちら側へと徐々に近づいていた。
ステラは自分で飛ぶ快感も大好きだったが、あまり使わないこのライドと言う方法で超距離間、移動した今、この移動手段も悪くないなと思い始め、モンスターでの優雅なドライブ感覚に浸る。
とても気持ちいい風が当たり、バイトの疲れが癒されていく感覚をひしひしと全身で感じた。
──ズゴゴゴゴォ……
ズン!!
周辺の森林に、何かが着陸する音が聞こえる。何かを察したのか、ステラはもう一度、マップを確認する。そして、きっとこの音の正体はまいら達の乗る空船だろうと確信するのであった。
「よし、一気に加速して!! サソリくん!!」
──フィン。
『ライド・モンス』用の操作UIをステラは起動する。
──ピギュー!!
ステラはそう命令し、一気に速度を上げ、加速する。
「ひゃー、はやい、はやい!」
土埃を上げ、風を切り、その強大な鉄城のようなサソリは大地を踏み締め、ビュンビュンと加速する。
目の前に表示されているデジタルなスタミナの表示も一気に、減少を開始する。
「ありゃ、意外とスタミナ消費激しいなこれ……」
指示の難しさを知るステラ。テイマー職の人ならもっと上手にモンス・ライド出来るのかな。
「うん、今日。アオさんがログインしてたら聞いてみよう」
なんて、そんな事を考えながら『メガ・スコルピオン』の操作を微調整する。
スタミナの減りが丁度良いくらいのスピードを見つけるのであった、そうして移動を続け、遂にマップに表示されていた、目的の場所へとステラはたどり着くのであった──。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
◇
「わ! やっぱりだ!! ギルドシップ来てる!!」
──ガシャン。
──ウィイーン。
森の中に着陸していたバトルシップの扉が開き、中から人が出てくる、そしてステラはまいらを視界に入れる。
「あっ!」
そうしてステラは彼女に声をかける。
「まいらさーん!! 帰りましたー!! 遅くなって、すみませーん!!」
手のひらで即興のメガホンを作り出し、大声をあげる。
それに反応し、思わず駆け寄るまいら。
「ステラ!! ──おかえり、……って。きゃああぁあ!!」
「あえ──? どうしたんです? まいらさん」
「あれじゃないわよ!! アンタの乗ってるそれ!!」
「はい! メガ・スコルピオンちゃんですけど?」
「ステラちゃんもしかして……『魔笛』使ったの? それ使うにしても、ライドしたモンスターがそれって──もっとマシなの無かったの?」
「えー、可愛いじゃないですか。このサソリちゃん。それにいい子なんですよーえへー。」
──ギュピイー!ギュピイー!
「うへー、ほんとにめちゃくちゃ懐いてるわね……しかも、この個体デカっ……。うーん、ステラちゃんが気に入ってるなら、まあいっか……」
「よいしょっと、」
ストンとステラはライドしていたモンスターから飛び降りる。
「あれ? そう言えば、ステラ『光の翼』は? あれで来ると思ったけど──」
「ペナりました……」
「ペナ? ──あ。……なるほど、切断ペナルティね……しかたなし」
「はい……」
「はぁ、そんな事だろうと思って迎えに来てよかったわ……」
「ごめんなさい……さっきの戦闘と言い色々迷惑かけちゃって……」
「ははは!! なーんにもきにしなくていいよ!! むしろ、この感じ私は楽しい!! さ、ギルドハウスに行きましょ。皆ログってるよ!!」
「っ……── はい!!」
皆が待ってる、そんなうれしい言葉を聞いたステラは跳ねるような感声を放ち、団長まいらに返事を返す。
◇◆◇
まいらの翼で大空を飛びそらを飛翔する。
「わー!! これなら!! 一気に着きますね! やっぱりまいらさんって頼りになるなあ」
「ふふん。そーでしょ。んっ……?」
「どうしたんですか? まいらさん」
「いや、……あれって……。」
「あれ? なにか見えるんですか……って、きゃ!!」
──ブォオン!!
フィオン、フィオン!!!
『グアアァアアッ!!!』
巨体を持つ、黒き翼を持った怪鳥が突然正面からすごい勢いで迫ってくる。
…… ──(まずい!! 今のステラは戦力にならない……このレベルの相手……を1人は……危険だ!!)
「ステラしっかり掴まってて!! 飛ばすよ 」
「はっ、はひぃ!! きゃああぁ!!!」
──ビュォン!!
まいらはスピードを上げる。
……だがしかし、怪鳥のスピードは凄まじく。
「なっ!!!」
「えっ!! きゃあああああ!!!」
「──ステラー!!!」
ステラが怪鳥の足蹴り攻撃によって落下する。
「くそっ、……悩んでる暇は無い……!!」
……──シュバン!!
「ステラーーー!!!! ぐっ!!」
「まいらさん!!」
そこからまいらは凄まじいスピードで追いつき、空中でステラをキャッチ。
そして優しく地面に2人は着地し、戦闘態勢に入る。
「悪いね、ステラこれはもうやるしかないようね……」
「ええ……。そうみたいですね…。」
──ジャキン!!
くるくるっ、シュタッ!!
武器を取りだし、戦闘態勢に入る。ステラは先日の切断ペナルティ中で上級スキルの使用は制限されている。
故……──まいらがこう、指示を出す。
「ステラちゃんが、女神になれない今、この戦闘は速攻で終わらせる必要がある……。行くよ!!」
「はい!! 分かりました……!! 回復は封印し、使用出来る最低限の攻撃魔法で蹴りをつけます!!」
「ええい!! 『サンダー・ショット』」
グアァア!!!
属性攻撃が刺さったのか、そこそこのダメージが入りHPゲージが10分の1だけ削れる。
「よし、これなら。はぁ!!!」
一瞬の隙を産んだステラの攻撃により、一瞬の間合いを詰め、まいらが最後の一撃を決める。
ギュオオオオオン!!!
バサッ、バサッ。
黒き怪鳥が倒れ、ピンチから救出されるステラ。
「はぁ……。心臓止まるかとおもいましたぁ……。」
「まったく、この子ったら。もぉ……私がいなきゃ。どんな事になってたか」
「すいません……あっ、ありがとうございます!!」
子犬の様な目で見つめてくるステラに怒れないまいら。
「もぉ、さ!! 行くよ!!」
「はい!!! まいらさん!!」
2人は手を繋ぎ、再び空を飛ぶのであった。




