030 謂われ因縁
「あれ──ステラちゃん?」
「おい、ミサキ!! ステラになにを──ッ!!」
「え! マジ、マジ。何もしてないって!!」
目の前で突然、消失するステラ。
その突然の事象に際し、何が何だか全く分からない2人。
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戦闘を中断し、2人は会話の中で答えを出すのであった──。
「まさか──ステラ……」
「「これって……」」
『『強制ログアウト──!?』』
「ぷ、ぷくくく! あーっははは!! おもしろー!!!」
腹を抱え空をのたうち回る、ミサキ。
さっきの緊張感から一転、戦闘は解除され、そこでまいらとミサキがステラのログアウトをキッカケに平和に会話をしていた。
「あの子……、まさか戦闘中にログアウトしちゃうなんて……」
「あー、面白い……私もだけどあの子も相当ドジっ子ね……」
「ヤバいでしょ……なんか戦う気無くしちゃったよ私」
「うーん。私も、なんかあの子に会えただけ満足、冷めちゃった。そろそろ帰ろうかなーー」
「おい、ちょっと待てよ、ミサキ。良いのか? 女神について私を問い詰めなくて」
「んー、別にいーかな。新ジョブ【女神】それの一番乗りに私もなりたかったけど、どうせどっかの誰かがあと何時間かすれば、スレに【女神】へのクラスアップのやり方アップするでしょー、」
「……じゃあ、アンタ……何のために私達に直々に聞きに来たんだよ──……」
「え? 暇つぶし」
「はぁ、ミサキやっぱり……アンタ変わらないわね」
「きゃるん! いつでもギャンかわなミサキちゃんだよ!!」
「はいはい」
「ふふ。なんか懐かしいわね。まいら、この感じ」
「ええ、そうね」
少し寂しそうな表示を浮かべるミサキ。
「じゃ、私帰るね……久しぶりに遊べて楽しかったよ、まいら。またね」
ミサキはその場でくるくると杖を一回転したかと思うと、その魔法の杖にその身を乗せ、飛び立とうとする。どうやら、ステラが居ないせいか深追いはせず、この場を安穏に治め撤退するようだ。
「ちょっと待ちなさいよ、ミサキ」
「んー? どったのまいら。呼び止めて」
「条件付きなら、教えてあげるあの子が『女神』になった時の事──」
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戦闘中に強制ログアウトしたこの件の中心人物ステラへと視点は移り変わる。
一方、ステラは慌ただしく分かりやすく動揺しながら、迫るアルバイトの時間に追われていた。
自分の意思でないにせよ、強制ログアウトをしてしまったと言う、罪悪感を抱えながら──。
カバっと、ベットからその身を起こし、時計を確認する時刻は16:50分、バイトの時間は17時。いくら家からバイト先の距離が近いとはいえ、この時間に家から出るのはあまりにも遅すぎるのである。
普段通り、緩い『エンオン』プレイだったら時間を常に気にかけ、こんな事にはならなかったであろう、しかし。突然であるミサキとの出会い、そして激しい戦闘。それによって自分の意思でタイミングを見計らってのログアウトが出来ず、今に至る。
予めハードであるVRデバイスに設定してあった、『強制ログアウト』システムによるゲームからの離脱これによってステラはゲームを強制的に終了させ、現実に戻ってきたという訳だ──タイミングは最悪と言った所だろう。
が、しかし──この時間なら、全身全霊を掛け、バ先までの道をかけ抜ければワンチャンス、ギリギリ間に合うかもしれない。
今のすてらの脳は、残されたこの時間に心血を注ぎ彼女のバイト先であるファミレス『プティー・アムール』へ直行すると言う事だけを今は考える、あぁ、ミサキさんのスキル▫『神速』を私も現実世界で使えたらな、なんて考える暇もなく。今はとにかく家の扉をめざし階段を駆け抜ける。
──ドタ、ドタ、ドタ。
「あわわー!! やっばい。このままじゃ、遅刻だ!!」
「うぅ……それに、次『エンオン』開いたら開いたでペナルティだし、最悪の一日だー!! い、行ってきます!!」
慌てているせいか、誰もいない我が家に挨拶をし、颯爽とバイトへの道を駆け抜けていくのであった。
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ステラがファミレスでバイトをしている中、『ENDLESS×ONLINE』の世界の時間は進んでいるのであった──場面は変わり、ギルド『龍の双翼』である。
◇
「あ、かぷちーの。おはよー、あれアオは?」
「あ、団長うぃすー! おはー。んー、アオさんはまだ来てないっス……」
「そっか。あー、つっかれた〜ー!!」
目の前にあったソファーに腰掛け、大きな息を零すまいら。
「うぃー!! だんちょー!! おつかれー!! おかえりー」
「リゼー。よしよし、今日もかわいいねーリゼ」
「えへへ。リゼいい子いい子されるのすきー、ってあれ? すてらは? さっきオンになってたけど、居ないの?」
「──……実はさ、さっき……」
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◇
「えーっ!!」
「マジすか」
「うん。マジ」
ついさっきあった事をここに居るギルドメンバーに相談するまいら。それについて個々の反応が帰ってくる。
「あー、やっぱりか。ステラあの子、見事に狙わちゃってんねー」
「きゃはは!! しかも、目を付けられた相手がだんちょーと犬猿の仲な『大天空』のミサキっちなんておもしろーい!!」
「やっぱり、似たもの同士だね!! だんちょー」
「あーもー。うっさいなー、リゼ。おしおき」
──ごん!
「ぎゃん!!」「うぅ……ごめんなさい」
おしおきと言う名の軽いげんこつを食らうリゼ。どこかで聞いたことのあるようなロボの名前を叫びながら痛みを表現する。
まいらも『犬猿の仲』と言うワードが余程図星だったのか、つい手が出てしまうのであった。
「まー、でも仕方ないッスよねー団長。」
「ウチらの団員の誰かが新ジョブにクラスアップしたなんて聞き付ければ、あの好奇心旺盛なミサキさんが動かないわけないですし……それに、」
「ん、それに?」
「やっぱり、ミサキさんもまいらさんも似たもの同士って言うか、……目の付け所が一緒って言うか。ぷ、ぷくくく、いやすいませんッス……なんでもないです」
「かぷー? だれがあいつと似てるってー?」
「えー、だって似てるじゃないッスかー。聞いた感じ両方ともステラのこと大好きみたいですしー」
「だーめ! ステラは私の物!!」
「ものって……まいらさん今の発言なかなかヤバいっすよ……」
──バサッ!!
──バサッ!!
ストン。
ギルド上空から音が聞こえる。
この大きな翼のはためきの音の正体はきっと、アオが操るグリフォンの翼だろう。アオが探索から帰宅し、ギルドへ帰ってきたのである。
「あらー? ステラちゃん落ちちゃったみたいだけど何かあったの?」
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◇
まいらはアオにも今日あった事を丁寧に話した。
「えぇ! あら、そう。そんな事が……まいら大丈夫? ミサキちゃんとまた、喧嘩しなかった?」
「うん……平気」
まいらが悲しそうな瞳をしながら、静かにそう言葉をこぼす。
「なら良かった、懐かしいわね……ミサキとまいらが『バディ』関係だったあの頃……」
グリフォンを従え、何やら過去の出来事に浸るアオであった──。




