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ヒューマン・ビーング  作者: マーブ
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侵略者

第21章



 気付くと、私は見覚えのある場所に立っていた。

 ここは、ニュージーランドのウエリントンだ。

 1度だけ昔、来たことがある。


 まだ、頭がぼんやりしている。

 タイムスリップのせいなのか、頭がはっきりしない。

 まだ、夢を見ているような、気持ちだ。


 そう思っていると、

 「キャー」


 女性の悲鳴だ。


 「助けてくれ!」


 「逃げろ!」


 突然、人の叫び声が私の耳に、入ってきた。


 群衆が私の目の前を、悲鳴を上げながら、何かから、逃げているように見えた。

 目に飛び込んで来たのは、信じられない光景だった。


 今まで見たことのない、物体が、多数、空中を舞っていた。


 それには足がなかった。


 頭部と腕と思われる部分から、連続的に赤い光線を発していた。

 それを人に向かって発射している。


 光線が当たった人達は腕や足が破裂して、悲鳴をあげながらバタバタと、倒れている。

 体が一瞬で弾けてバラバラに、なった人もいる。


 なんたる事だ。


 臓器の切れ端がそこら中に、飛び散っている。


 その物体は私の方を向いたが、すぐに方向を変え、別の人を攻撃し始めた。

 私は一瞬、撃たれるかと、ひやっとしたが、私が見えないようだ。この空間では、どうやら私は、意識だけの存在になっているようだ。


 この物体は明らかに、人間が作った物ではない。


 両腕を広げたくらいの大きさで、空中を浮いていた。今の、人類の科学技術では、作れない物だ。明らかに、重力に逆らって浮いている。そして見渡すかぎり、無数に、その物体が浮いていた。


 その物体は人を見つけると追いかけて、赤い光線で人を殺している。しかも大人、子供の区別無く、殺している。無差別に人を殺している。


 人を殺すことが、目的のようだ。


 信じられない光景だ。まるで映画の中にある、宇宙人侵略の一場面だ。


 次の瞬間、私の意識は、オークランド空港に飛んだ。

 空港にも、あの物体が浮いていた。


 滑走路を見ると、着陸したばかりの航空機が、襲われていた。


 「早く出ろ!」


 男の怒鳴る声が聞こえる。 

 機内はパニックになっていた。


 物体が外側から、着いたばかりの航空機を、赤い光線で攻撃している。


 見る見るうちに、航空機が煙に包まれて、見えなくなっていった。物体から発射された、赤い光線は、航空機の外壁を貫いて、機内にいる乗客に、当たっていた。逃げまどう人々、体が破裂して死んでしまう人、私は見ているだけで何も出来ない。次々と乗客が殺されていく、機内は血だらけだ。


 そしてついに、航空機はドーンと、大きな音をたてて、爆発した。

 燃料に引火したのだ。


 緊急用タラップから、逃げ出した人は一人もいなかった。黒煙がもくもくと上がっている。この物体は、人間を見つけ出しては、殺している。人間を殺す事だけを目的とした、小型のロボットのように思えた。


 それに、この物体の中に何者かが入って、操縦しているとは思えない。

 多分、無人機だ。


 どこかで、遠隔操作されている。


 空港の建物に目を移すと、ガラス越しに赤い光が、そこら中で光っているのが見える。あの建物内でも人が襲われているようだ。ガラスには、べっとりと血液が付いている。


 「一体、どうなっているんだ! やめろ!」

 思わず、声を出してしまった。


 しかし、怒鳴っても何も変わらない、そしてズーラも何も言ってこない。


 ズーラは見て、聞いているはずだ。


 「これが同じ日の未来なのか!」


 「こんな未来が待っているのか!」


 「何たることだ!」


 「ズーラ、返事してくれ!」


 しかし、ズーラからの返事はなかった。


 そして、私の意識は再び、別の場所へ飛んだ。


 突然、目の前のビルが、粉々に砕け散った。


 空を見上げると今度は、大型の物体が浮いている。とんでもない大きさだ。

 ウエリントンはニュージーランドの首都だ。それほど広い所ではないが、大型の物体だけで、ウエリントン上空を占領していた。大型の物体が、ビルを破壊したのだろう。


 すると、地上から誰かが、大型の物体を攻撃している。


 「バーン」


 「パンパンパン」


 戦車や、人々が、空中に浮かぶ大型の物体に向けて、発砲している。軍が攻撃しているようだ。


 皮肉にも、ニュージーランドには、空軍はあっても戦闘機がない。空中から攻撃する事は出来ない。しかし、どこからか、ミサイルが発射されたようだ。私の目の前を通過して大型の物体に直撃した。


 激しい轟音と共に大爆発した。


 だが、大型の物体を、破壊する事は出来なかった。よく見るとキズ一つ、ついていない。シールドの、ようなものを展開しているようだ。ニュージーランド軍の火器では歯が立たない。


 もちろん、核兵器などは持っていない。


 私は思った。


 この大きな物体の持ち主はズーラなのかと、


 「ズーラが乗っているのか!」


 すると、

 「私達ではありません。私達は人類を攻撃しません。別の種族です」


 「別の種族?」


 ズーラの他にも宇宙人がいるのか、私は驚いた。


 「この広大な宇宙には、無数の知的生命体が存在しています。あなた方が、知らないだけです」


 すぐには信じられなかったが、ズーラの言う通りだ。 


 人類は今だ、太陽系の外に人を、送っていない。ましてや、恒星間の移動は現在の科学技術や物理学では、絶対に出来ない。


 太陽系から、一番近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまで、光の速度で4・2年かかる。光の速度は秒速30万キロメートルだ。我々の知っているロケットで行くと数万年以上かかる。人の寿命を考えると、絶望的に遠過ぎる。


 だから光を超える速度が必要になる。少なくとも知的生命体を探すとなると、アインシュタインの物理学を超える、新しい物理学が必要だ。


 ズーラを含めて、この宇宙人達は人類の知り得ない、高度に発達した科学技術を持っている。


 「ズーラ、この宇宙人は地球を破壊するのですか?」


 私はズーラにたずねた。


 「破壊はしません。しかし破壊することは簡単に出来ます。人類を地球から排除するのが、彼らの目的です」


 ズーラがそう言うと私は、


 「つまり、皆殺しですか?」


 ズーラの言葉はきれいだが、あまりにも抽象的で、私には、はっきりと実感出来なかった。だから、はっきりと分かる言葉が聞きたかった。


 「そうです。あなたの言う通り、皆殺しです」


 私はこの言葉で、はっきりと理解出来た。


 これを、ズーラが私に見せたかったものだ。


 これ以上、ズーラに聞く必要はなかった。地球はこの宇宙人に侵略され、人類は皆、殺されて絶滅するのだ。


 もう、この時には、私が世界中の核物質を爆発させ、人類を滅亡させた、という事実は頭から、すっかり消えていた。


 いずれにせよ、人類は滅亡するのだ。

 自滅するか絶滅させられるかの違いだ。


 「それは違います」


 ズーラが言った。


 「どこが違うのですか? 自滅するか絶滅させられるかでしょう!」


 私は人類のたどり着く運命に絶望し、やけくそになっていた。


 「あなたには選択することが出来ます。あなたの言葉で言う自滅するか絶滅させられるか、それとも、戦うかです」


 私はズーラが言ったことがよく分からなかった。


 「戦う? 一体、誰と」


 私一人で誰と戦うと言うのだ。


 「もちろん、侵略者からです」


 多分、核兵器をもってしても、破壊することが出来ない相手に、こんな私に何が出来よう。


 「あなたには力があると以前、言ったでしょう。それに核兵器では侵略者を倒すことは出来ません」


 「力」と言われて私は思い出した。


 世界中にある核物質を爆発させた、あのいまわしい「力」を持っていることをだ。


 「あの力で宇宙人と戦うのですか? 全滅させることが出来るのですか? どうすればいいのですか?」


 私は「あの力」と言ったが、実際、そんな力を使った覚えもないし、持っているという自覚も、全くない。ただ、ズーラが「ある」と言うのだから多分、自分には、とんでもない力が、ひそんでいるのだろう。


 「あなたは、あの力をよく知らない。あの力で直接、侵略者を滅ぼすことは出来ません」


 それではどうしろと言うのだ!


 「あなた方、人間が誕生する遙か過去の記憶を、呼び起こすのです。あの力で」


 そんな大昔の記憶で、どうすると言うのだ。

 ズーラは何を言いたいんだ。


 「あの力は破壊の力です。あなたの激しく、爆発的な思いが核爆発を起こしたのです。あなたには、あの力を、コントロールすることは決して、出来ません。あの力を使うと、侵略者どころか、地球そのものを、破壊していまいます」


 地球を破壊してしまう。

 では、どうしろと!


 「あなたの中にある、遠い昔の記憶を呼び起こすのです。人類を救うには、それしかありません。それとも絶滅を望みますか?」


 私はすぐに返事した。


 「救いたい」

 と、


 「それでは、また」


 ズーラの返事を聞き、末来は3つに別れていると思い、私は意識を失った。


 しかし、未来はすでに一つの方向へ、動き始めていた。

 選択の余地などなかったのだ。


 私は、それを知らなかった。

 ただ、今は、人類が生き残るには戦うことしかない!

 私はそう強く願った。

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