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ヒューマン・ビーング  作者: マーブ
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記憶

第20章



 「あの核爆発は、あなたが起こしました」


 ズーラの驚くべき発言に、私は声も出なかった。


 「不信に思われるでしょう。当然です。あなたは、あなた方の国を残して、全てを、あなたの力で、破壊したのです」


 私はまだ、呆然としたままだった。

 しかし、心の中では「そんなことはあり得ない」と思っていた。


 ズーラはひと目、私を見るとゆっくりと話し出した。


 「あなたは地球に存在する核物質を、全て反応させました。核爆発を起こさせたのです。さいわい、あなた方の住んでいる国には核物質が、存在しないのが、分かっていたので、あらゆる核爆発から、私達はあなた方の国だけを守りました。あなたの存在した時間、2017年、世界中で核爆発が起こったのです。これは事実です。もう起こってしまったことなのです」


 私は混乱した頭の中で、やっと記憶を少しづつ、整理し始めだした。


 「なぜ、私はそんな事をしたのですか?」


 本当のことかどうかは別に、真っ先に聞きたかった。自分はそんなことを、する人間ではないと思っていたからだ。


 「あなた方、人間を救うためです」


 「救う?」

 どういう事だ、人を大勢殺して、


 「確かにあなたは、大勢の人間を殺しました。残念なことですが、この方法でしか、人類を救う道は無かったのです」


 「この私が核爆発を起こした?」


 「そんなバカな!」


 私に出来るはずがない。

 そんな力はない、まるでSFの世界だ。


 「あなたは小学生の頃、卒業文集に戦争と言う感想文を書いています。忘れていると思いますが・・・・・・・」


 「卒業文集?」


 何の事だ。

 一体、何の関係があると言うのだ。


 「聞いて下さい。これはあなたが幼い頃に無意識に感じ取った事です」


 「卒業文集?」


 記憶に全くないが、ズーラが言うのだ、聞く事にしよう。



 「感想文、戦争、6年3組、ハルト・ヤング、第二次世界大戦に、世界初めて    日本に、おそろしい原爆がおちた。その時人々は、はじめて戦争のおそろしさに目がさめた。けれども戦争のおそろしさをもっと早くわかっていたら、こんなことにならなかっただろう。そして戦争は、日本のはいぼくとたおれた。しかし、今まだ戦争はおわっていないのだ。おそろしいことにも、原爆の放射能をかぶった人々についでその人々の子どもまでが、ひがいを受けているのだ。今、放射能にくるしむ人々が、あそこで、そこでというふうに、戦争が人の命をうばっている。そして、人々の悲しみにもかかわらず、戦争というおそろしい、かいぶつが、のさばろうとしている。戦争で命をうしなった人々、今、ぼくたちはこの戦争のために、命をうばわれた人々にはなにもできない。死んだ人々のために、にどと戦争をおこさないようにするのがなによりだと思う。今の日本は、平和で戦争をしない国として、すすんでいる。しかし、世界の中ではまだ戦争を、続けている国がある。どの国も、戦争を早くやめて平和で、そして、戦争のないたのしい日をすごし、子どもたちに、こんどこそ戦争をしらない毎日をすごすことができたらと思う」



 ズーラが読み終わった後、私はなんとなく小学生の頃に書いたのを思い出した。


 それにしてもなぜ、私はこんな事を書いたのだろう。


 楽しくて、いろんな思い出がある少年の頃に、書くような文章ではないと、

思った。それにその頃の私は、勉強など、やったことがなく、成績の事など、

気にはしていなかった。いろんな、遊びをしたことを覚えている。こんな、

まるで大人が書くような悲しくて、固い文章が書けるはずがない。


 だが、書いた覚えがある。

 おかしな事だ。


 それになぜ、日本が出てくる。

 私の国はニュージーランドだ。


 「書いた記憶があるでしょう。あなたは幼い頃から、人が人を殺してしまうことに、特別な関心を、持っていたのです。特に、戦争と核爆弾について」


 確かに戦争には怒りを覚える。


 特に戦争によって、平然と、奪われる命を憎らしくも思う。しかし、これは私の現在の気持ちだ。


 大人になってからだ。


 少年の頃に、このような気持ちになって、憎しみを感じた記憶はない。

 しかし、忘れてしまったのかもしれない。

 遠い昔の事だ。


 「あなたは今も、その気持ちを忘れてはいませんよ。戦争が起こる度に、あなたは怒っています」


 例え、怒ったとしても、この私が、世界中の核を爆発させるはずがないし、そんな特別な力もない。ましてや世界を滅ぼそうなどと、考えたこともない。


 「出来るのです。あなたは核を爆発させることも、可能だし、地球さえ、消し去ることが出来るのです。あなたは、その力を、持っているのです」


 そんなことを言われても、ますます信じられないだけだった。


 「あなたは、一人の力では何も出来ないと、思っていますね。そして同時に、一人の力でも、やるべき事があると、いつも思っていますね」


 私は答えた。

 「そうです。そのことはいつも思っています」


 矛盾する考えだが、私は一人の力では、とても出来そうにない事をやろうと考えている。


 普通の人なら、思いもしない事を、やろうとしている。 だが、実際は何も出来ていない。


 出来ないのだ。


 しかし、例えば日本で起こった、福島原発事故だ。

 原子炉がメルトダウンを起こして、数分で人を死に追いやる強烈な放射線で、人が近づくことさえ、出来なくなった。

 そんなことがあっても、日本の総理大臣は、いったん止めた日本中の原子炉を

動かした。


 日本の番組を見る度に、


 「日本の政府は腐っている」

 と感じていた。


 ただでさえ狭い国土なのに、人が住むことが出来ない場所を作ってしまったという、反省が全くない。


 少なくても福島は今後、数万年は、人が住めない場所になってしまった。


 他人事と言えば他人事だ。

 それも遙か彼方にある異国の話だ。


 それでも私は他人事とは思えなかった。


 ニュージーランドには、原発はないが、それでも、もし何かのはずみで人が住めない、人が入ることが出来ない土地や、場所が、ニュージーランドにあったとすると、それは悲しいことだ。


 私はいつしか、原発のある土地全てを、宇宙空間に消し去ることが出来れば、問題の多くは解決する。

 それとも、福島の時間だけを、数万年だけ進めれば、もっと言えば、タイムスリップすれば、放射性物質の脅威はほとんどなくなってしまう。そんなことを、本気になって考えていた。


 出来る出来ないは別にして、真剣に考えていたのだ。 

 これは本当の事だ。


 他人から見れば、頭がおかしいと、思われても仕方がない。普通では実現不可能な考えだ。


 タイムスリップや、原発を消し去る、などという考えはSFの世界だ。私自身、普通の人とは違った、変わり者だと前から思っていた。


 「そんなことはないですよ。あなたの考えは正しい」


 ズーラが私の意識に割って入った。


 私は驚いて、

 「どこが、正しいのですか?」

 と言うとズーラは、


 「全てです。あなたは世界中の核物質を反応させ、そして爆発させたではないですか」  


 私は再び、返事が出来なくなった。


 ズーラの言う通りなら、


 「私は世界を、地球を、破滅させたのか!」 


 「ニュージーランドでの、核戦争が起こったと言う報道は本当だったのか!」 


 「そんな、とんでもない力が、この私にあるのか!」


 「そんなバカな!」


 「核戦争ではありません。あなたが、世界中の核物質を反応させて、核爆発を起こさせたのです。私達はあなたに少しだけ、力を与えただけです」


 「少しだけ?」


 「それだけで地球を、人類を、滅亡させられるのか?」


 「滅亡させたのではありません。あなたが人類を救ったのです!」


 物静かなズーラが初めて叫んだ。

 私の頭の中で稲妻が、走った。


 「これは本当のことなんだ!」

 私はそう感じ始めた。 


 そして重苦しい、罪悪感が私を襲った。


 しかし、まだ、私がやったという、実感は持てなかった。実際、どうやったかも、いつ、そんなことをやったのか全く覚えがない。


 しかし、ズーラが言うのなら私が多分、やったのだろう。


 「多くを殺してしまった」


 今の私には、

 「人類を救ったのです!」

 とズーラが言ったことなど、頭になかった。


 実感はとても出来なかったが、


 「地球を破滅させておいて、どこが、人類を救ったと言うのだ!」


 ひどい罪悪感を持った私は、いつの間にか再び、あのワシントンに立っていた。


 「こ、この場所は」


 目の前にはあの、メリッサがいた。

 やはり、腰から下は炭になっていた。

 上半身もいたる所が、炭になっている。

 そしてもう、すでに死んでいた。


 これだけ焼かれながらも、わずかな時間だったが、生きていたのは奇跡だ。


 そしてどうしようもない、怒りが込み上げてきた。


 あの「金持ち」の男だ。


 あの男が、金儲けのために、爆発させた1個の核爆弾が原因で、世界中が、核戦争に陥った。1個の核爆弾の爆発により、アメリカとロシアが、互いに誤解を生み、そして核の恐怖によって、誤った判断を下し、両国が、核ミサイル発射のボタンを、押してしまった。


 互いに誤解が誤解を生んでしまった。

 謝った情報を大きな偏見のため、確かめようともせず、誤った考えを持ってしまった。 

 人間とはそういうものだ。


 その結果、地球上で全面核戦争が起こってしまった。


 あれほど核の使用をためらっていた国々が、いとも簡単に核を使った。


 こんなにも簡単に、世界が終わってしまうのか、その舞台にいた「部外者」である私には「言葉」では言い表せない、悲しい思いと、激しい憎しみを、持った。


 そして私は、あの焼けた少女を思い出し、声にならない声を出し、涙が止まらなかった。


 「この戦争は、2017年の終わりに起こるものです。それに少女の死とあなたとは関係はありません」」


 ズーラの声で、私は再び、タイムスリップしたのだと気付いた。そしてこれは夢ではなく、現実だと実感した。


 「まだ、この戦争は起こっていないのですか?」


 「2017年12月24日に起こるものです」


 と聞いて、この戦争はまだ、起こっていないのだと思った。まだ、12月24日にはなってないはずだ。 


 「この戦争で、人類は滅亡します」


 ズーラは冷たく言った。


 「ズーラ、あなた達は凄い力を、持ってるではありませんか。なぜ、この戦争を、止めなかったのですか?」


 この私に、地球上に存在する核を、一つ残らず爆発させる力を、持たせた宇宙人ズーラ達ならば、容易に、核戦争を止める事が出来たはずだ。そう、私は思った。


 「この核戦争を私達の力で、止めたとしても、あなた達、人類は必ずまた、核ミサイルのボタンを押します。あなた達、人類はいずれにせよ自滅するのです」


 「自滅」という言葉を聞いて、私の中で「やはり」と思った。


 「自滅を避ける方法はないのですか?」


 「無理だ」という気持ちを持ちながら、ズーラにたずねた。


 「あなたは、もう分かってることを、なぜ私に聞くのですか?」


 ズーラの言う通りだ。

 私は既に答えを出していた。


 しかし、なんとか自滅の道を、避ける方法がないか、あえてズーラにたずねたのだ。


 私の頭の中はまだ、混乱していた。


 この戦争は、あの「金持ち」がアフガニスタンで核爆発を起こさせた。その結果、全面核戦争になり、人類は自滅する。これは2017年12月24日に起こるとズーラが言っていた。まだ、起こっていない。すると、ニュージーランドでの核戦争騒ぎは、私が起こしたのか、これは2017年の夏だ。


 「私は2つの核戦争を見たのか?」


 「違います。2017年12月24日は、人類自滅の核戦争です。まだ、起こっていません。しかし、2017年12月20日に起こった出来事は、核戦争ではなく、あなたが、世界中の核物質を爆発させたのです。私達は少しだけあなたに、力を貸しただけです」


 ズーラはそう言うと、


 「あなたを2034年に戻します」

 と言った。


 私はメリッサのいたワシントンから、一瞬にして「あのズーラの空間」に飛んだ。意識だけの世界だ。周りを見ても何も無い空間だ。私は意識だけが支配する空間にいた。


 もう、これを夢とは思っていない。紛れもない「現実」だ。


 「あなた達にはもう、あまり時間がありません。今からもう一度、2017年12月24日に行ってもらいます」


 2017年12月24日は、人類自滅の全面核戦争が起こるのだろう。

 もう一度行っても、どうにもならない。


 「行けばわかります」


 ズーラの声を聞くと私は意識を失った。

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