4-3. 憧れの人と親しくなりたいのです
メイメイ、ソユンと親しくなるために色々考えております(つ✧ω✧)つ
さて、ソユンと親しくなるという目標の前には、一つの大きな壁がそびえ立っていた。
メイメイは、人と仲良くなる方法がいまいち分からないのだ。
それも、異性で美形で地位も高い人相手に、たとえメイメイがありったけの社交力を発揮したところで、はたして今よりどれほど親しくなれるだろうか。
(会える頻度は少なくて時間もそう取れない。それでもって、絶対にこれまで数多の教養深い女性と話す機会が多かった人に、何をすれば………)
しばらく悩んだが、引き出しがない以上、最適解なんて思い浮かばない。
しかし幸いなことに、メイメイの宿舎は年頃の女の子が集結している。
メイメイは、そんな絶好の相談相手たちに聞いてみることにした。
「ね、ねぇ……、相談なんだけど、その、気になる相手と仲良くなりたい時って、……みんなは何をする?」
「えっ!メイメイ!!好きな人ができたの!?」
「うっ、えっと、まだ分からないっ!でも、もっと親しくなりたくて……」
「何それー!!状況詳しくっ」
さっそく頼れるアンリと共に食堂へ向かい、その場にいた女官仲間に人と親しくなる方法を問いかける。
相手の正体は伏せたいので、読み耽ってきた本を参考に、ソユンの要素を加えた仮想の相手を設定した。
こういう妄想は、得意分野だ。
「読書会に参加してるのを何回か見掛けて、少し言葉を交わしただけなんだけどね!優しくていい人だなーって。でもその人って人気者みたいで、ほかの人も話したがってて、なかなか話す機会も取れなさそうなの!どんな話をして、どんなことをすると、仲良くなれると思う……?」
「好印象の人気者ね……。いいじゃない!せっかく聞いてくれたからには、その人の心をぜひとも掴んでほしいところね!」
「メイメイがいいなって思う人、気になるなー!顔はどう!?」
「か、顔……。うん、………かっこいい、かな」
「かっこいいの!……うわー、聞いてるこっちがわくわくしてきた!」
今のところ、相手が普段から話題に出ているソユンであるとは全く思われていなさそうで、メイメイはひとまず安心する。
アンリエッタの微笑ましそうに見守ってくれる視線は、もはや保護者の域。
実際の親にこんな相談するのは気恥ずかしくてできないから、こうして頼もしい相棒がいるのは本当にありがたい。
それでもちょっとは照れるけど。
「兄弟がいるならそこで共通点を見出すとか!」
「そもそも読書の会が一緒なら、趣味は同じだから話も膨らみやすいよね!……その人はもっと知的な本を読む?そっか、本にも色々あるのね……」
「他の趣味はどう?わたしの婚約者はおしゃれ好きだから、よく二人で布地を見に行ったりするよ!」
「食べ物の好みは?……まだそこまでは話したことがないんだ。じゃあ今度聞き出してみて、何か似た嗜好があるならご飯を食べに行くのもいいんじゃない?」
この手の話題のくいつき具合は格別で、楽しげな少女たちによってたくさんの意見が出された。
まとめてみると、趣味嗜好が似通っているとよいのではという意見が多かった。
(確かに、話したりお出かけしたりするきっかけになりそう!ソユン様相手に、お、お出かけは、ちょっと難しいだろうけど……。趣味ね……)
そういえば、メイメイはソユンのことをよく知らないままである。
趣味、好み、休日の過ごし方。
そんな話はメイメイが一方的にソユンに話して聞かせているだけで、ソユンについてはあまり聞いたことがない。
最近たまたま結婚や交際について少し深掘りする機会に恵まれたものの、基本的な情報量はほとんど増えていない。
以前王子の話を楽しげにしていたのは印象的だったが、あれは趣味や好みとは少し違うだろう。
(以前反省したはずなのに、いまだに会えたときは自分語りに終始してるんだな……。いや、でもちゃんとわたしなりにソユン様に話を振ることもあったはず……!)
例えば、メイメイが実家に帰省した際には好きな食べ物ばかり食卓に並ぶという話をしたときとか。
ソユンはなんというか、その容貌やおっとりした内面が現実離れしていて、何か好き好んで食事を摂るような印象が持てない。
それでふと気になって尋ねたのだが、その時は――
「それほどこだわりはないけれど……。うーん、最近食べた中だったら、王子殿下がくださった東方の砂糖菓子が美味しかったかな。柔らかい口溶けと仄かな甘みが好ましかった。……そう、たまに献上品を分けてくださるんだよ。臣下に対して日頃から細やかな気遣いのできる立派なお方だろう?」
(これは多分、本人の嗜好というよりは王子との仲良し日常話ね……)
他の話題を思い出そう。
ソユンといえば、本人があまり頓着しないのか、着飾る必要がそもそもないからか、質が良く高価な衣装を身に着けてはいても、どこか控えめな服装を選んでいる印象だ。
しかし、ある日は本人によく似合う華やかな色合いの羽織物を纏っていたことがあった。
ちょうど近くを通りかかったため、先輩女官と一緒に慌てて駆け寄って、とても素敵だと伝えに言ったのだが―――
「あはは、ありがとう。南部でとれる特産の貝から色を出しているんだって。鮮やかで綺麗だよね。僕も気に入っている。……うん?ああ、これは貰い物なんだ。……そうそう、王子殿下から」
また、ある時は――
「ああ、髪飾り?こんな大ぶりな珊瑚って、珍しいよね。……はは、そんなに褒めてくれると嬉しいな。殿下がこの間国境の調査からお戻りになった時に土産にくださってね……」
思い起こせば起こすだけ、彼のことを聞く度に王子がちらつくことが多かった気がする。
ちらつくどころか、ソユンのことを聞いているはずが、大半で王子に関連する話になっていると言ってもいいくらいである。
(たまたま王子に結びつくことを話題にしてしまいがちなだけ?それともソユン様が王子大好きっ子さんなのか……)
その他の機会でも、やはり聞き上手のソユンと浮かれるメイメイの組み合わせだと、どうしてもメイメイが得られる情報は圧倒的に少ない。
おかげで彼は、メイメイの私生活や趣味、これまでどう暮らしてたかなど、わりとあらゆる情報を網羅している筆頭の人物になってしまった。
彼女自身は憧れの人のことをそれほど知ることができていないのに、憧れの当人には本人の希望と関係なく、メイメイのことを多く知ってもらうことができている。
メイメイの頑張りに反し、誰も得をしない結果だ。
ともあれ、手持ちの限られた情報から察するに、おそらく彼に関して一番刺さる話題は王子のことだ。
趣味や嗜好をうまく探ることができなかったのだから、もはやそこを攻めていくしかあるまい。
かのお方について、畏れ多くも興味があるわけではないが、この国にいる以上知っておいて損ではないし、やはり彼と仲を深めるという目的のためには知識や興味は必須だろう。
メイメイの持っている知識はせいぜい、軍務を担う最高位の方で、見た感じソユンのことを一等気に入っていて、兄弟仲がいいらしいということくらい。
話を膨らませるには、まだまだ足りない。
ということで、ソユンへの下心ありきではあるが、メイメイは自国の王子様についてもう少し理解を深めることにした。
ソユン様とより仲良くなるには王子殿下は避けては通れないのか…




