とあるダンジョンでの一コマ
勇者が攻略するダンジョンだけが物語じゃない。
そんなダンジョンでの一コマ。
「マスター マスターはどこですー」
とあるダンジョンの奥深く。
マスタールームに一人の亜人が主を探しに入ってきた。
いつも寝ていたベッド、ダンジョンの様子を見るための監視水晶の前、寛ぎのソファーの裏、えっちな本を隠してる押し入れ。どこにも居ない。
「マスターお客さんが来てるのですー」
偽装魔法で岩壁に見せている扉の向こうにも見当たらない。
マスタールームに居ないのならダンジョンコアルームかと覗いて見たがそこにも姿は無かった。
「仕方のないマスターです。全く。お客様のお相手はマスターのお仕事です。それをサボるなんてダメなのです。」
マスタールームから大広間に繋がる少し長めの廊下を歩きながら、ここ暫く姿を見せないマスターに文句を言う亜人の姿は、いたく可愛らしかった。
◇
「申し訳ありません。今日もマスターは居ないみたいです。」
「マジかぁ、やっとここまで来たのに、ダンジョンマスター居ないって、ついてねー」
「ごめんなさいです。」
「あっ、君が悪い訳じゃないよ。てか、こんなカワイイ君が悪い訳がない!」
「ほんとです?」
「ホントだよ!こんな可愛らしい子を置いて、マスターは何処に行ったんだ!」
「ダンジョンは稼働しているので、何処かにはいると思うのです。」
「ダンジョンの機能で探したり出来ないの?」
「ダンジョンはマスターしか操作できないです。マスターが居なかったらマトモな食事も出来ないです。」
「普段何食べてるの?」
「わたしは食べなくても大丈夫なので、食べてないのです。」
「人じゃなかったかぁ」
「おもてなしも出来ずに申し訳ありませんです。」
「ダンジョンでのもてなしって、大抵バトルとか罠とかだから、食事が出ない程度は問題無いよ。でも何か飲めるものは欲しいな。」
「裏手に湧き水があるです。」
「飲めるの?」
「多分飲めるです。なんか少し光ってるけど、問題無いと思うのです。」
「それ飲んだら怪我とか病気とか治っちゃったりするやつ?」
「さぁ、わからないです。お客さんが来たのは初めてですし、わたしは怪我も病気もしないです。」
「もしかして生き物ですらないのかな?」
「一応生物の範疇です。違いはダンジョンから出ると崩れて灰になってしまうくらいです!」
「おっと、話が理解できなくなってきたぞ。」
「申し訳無いです。」
「それなら一度地上に戻ろうかな。」
「何か足りない物でも?」
「食べるものがね。ここで待つにしても少し足りないかなって。」
「食材ならあるですよ。」
「えっ?あるの?」
「はい。ドラゴン肉が冷温室にあって、お野菜も少しは残っているはずです。」
「マトモな食事できるじゃん。」
「かまどに火が入らないので、調理ができないんです。」
「あぁ、なるほど。」
「ドラゴンの肉は生で食べたら死んでしまうです。野菜も地上の野菜とは違うので、下処理が必要なんです。」
「下処理?」
「はい。襲って来ますから止めを刺さないと調理どころじゃないです。」
「、、、ふーん」
「それでもよろしければ提供しますです。」
「ドラゴンの肉は襲ってこないよね?」
「そこは大丈夫です。切り分けてありますので、心配ない、、、です?」
「うわぁ、確信はないんだ。」
「そういう訳でないのです、、、でも、火がないと死んでしまうですよ?」
「火も鉄板も鍋もあるから、そこは大丈夫。」
「じゃぁ、レッツドラゴンクッキングです!」
「野菜も多分討伐出来るだろうから、鍋にでもしますか。」
「楽しみなのです!」
「そうと決まれば話は早い、、、はずだった。」
まず野菜。
こんなダンジョンの最深部で採れる野菜。普通な訳がない。
「なんだこいつ、逃げやがって!、うわっ!罠仕掛ける野菜なんて聞いたことないんだけど!、いててて!血を吸われたんだけどぉぉぉ!!」
ドラゴン肉。高位のドラゴンらしく、切り身になってなお、その再生能力は失われない。
「1人分切り取ったら2人分位再生したけど、これ大丈夫?。ドラゴン復活したりしない?」
最後は水。少し光っていると亜人は言っていたが、快晴の草原よりも明るく輝いていた。
「あー。これは汲んじゃいけない気がする。何かやっかいな事が起きる気配がビンビンするんだけど、汲むしかないよなぁ。なんか水の大精霊とか出てきそうだよ。」
「せいかい。」
いきなり水が盛り上がり辺りをさらに眩しく照らした。
大きな水音が辺りに響き、盛り上がった水は徐々に人の形となっていった。
「わたしは水の大せいれい。」
「ほらね。やっぱり厄介な事になるよ。これ。」
「何しに来た。」
「あっ、いや少し水を分けて頂きたいなぁって、、、」
「だめ。」
「ですよねぇ、きっと貴方の寝床か何かなんでしょ?」
「体。」
「えっ?」
「私の体。」
「この水が?」
「そう。」
「まじかぁ」
「なににつかう?」
「ちょっと鍋を作ろうかと思ったんだけど、水が無いならバーベキューかなぁ」
「水ひつよう?」
「有ると嬉しいかな。」
「少しならわけてあげる。」
「えっ?でもこの水は、大精霊様の体なんでしょ?」
「せいかいした。」
「正解って?」
「わたしの正体。」
「?」
「入ってきてすぐに、水の大せいれいって。」
「あぁ」
「だから少し上げる。」
「いいの?」
「それといっしょ。」
指を差した先にはドラゴン肉があった。
「成る程確かにこれもドラゴンの体の一部か。ならこの鍋に半分程頂いても?」
「かまわない」
「ありがとね。これで美味しいお鍋が作れるよ。」
そう言いながら泉に近づき、鍋で水をすくい上げるた為に泉に差し込むと
「あっ」
「えっ!」
「スケベ」
「えっ!!」
「わたし一応女性。」
「まぁ、見た目はそうだよね。」
「そこはない。スケベ」
「え!!!」
「もっと考えて」
「じゃぁこの辺りなら、、、」
「あぁん!」
「あわわわ」
「そこはもっとない。」
「ごっ、ごめん!」
「しかもテクニシャン」
「えぇぇ!」
「あのぉ、宜しいです?」
入り口から訝しげに覗き込む亜人が居た。その頬は何故か少し赤らんでいる。
「お二人でお楽しみの所申し訳無いです。でも余り大きな声でされると、こちらとしても、その、、、」
「か、勘違いしないでくれ!俺は純粋に水を汲みたいだけだ!」
「人の子に蹂躙されて、純潔を奪われた。」
「人聞き悪いなぁ!」
「まぁ、人それぞれなのでどんなプレイも許容できますけど、あまり激しいのは、こっちも困るです。」
「あぁ!もう!!」
「あと、少し聞いてもいいです?
、、、マスター、ですよね?
」
「そう。私がダンジョンマスター、水の大精霊。」
「前とがちがうです。」
「落ちた。」
「えっ?」
「落ちたです?」
「どぼんと。」
「何やってるの?この大精霊様は!」
「照れる。」
「なして!」
◇
そこから大精霊の説明が始まる。
元々は水の大魔法使いで、なんやかんやでこのダンジョンを制覇。マスターになった。
ダンジョン関係者しか行けない場所を探索していたら、この泉を発見。興味本位でこの泉の水を調べていたら、足を滑らせて落ちてしまった。
そのあと姿を見せなかったのは、ずぶ濡れになったのが恥ずかしい事と、意外と居心地が良くて泉の中に長居していたとの事だった。
意外とくだらない真相を聞いた男は、鍋の用意をしながら呆れたように言った。
「で、大精霊になってたのか。」
「そう。」
「ビックリです!」
「しかも性別も年齢も変わって?」
「そう。」
「まじかぁ」
「マジ」
「でも、マスターが見つかって良かったです。」
「何か用事?」
「この人、お客さんが来ました。」
「知ってる。」
「ですよねぇです。」
「ここ本当にダンジョンの最深部なの?」
「間違いない。」
「ほのぼのしすぎじゃないか?」
「問題無い。で、貴方は何しに来た?」
「水を汲みに。」
「じゃなくて」
「あぁ、このダンジョンに来た理由?」
「そう。」
「そりゃ勿論、このダンジョンを踏破して、ダンジョンマスターを倒し、新たなダンジョンマスターになる為だよ。」
「そう。」
「だめなのです!マスターはマスターだけなのです!」
「かまわない。」
「えっ!」
「えっ!!」
「貴方と私でマスター。」
「2人で?」
「そう。」
「それなら大丈夫なのです。」
「いいの?!」
「いい。」
「ホントに?」
「ホントに。」
「問題ないの?」
「しつこい。」
「辛辣だな!」
「でも、ダンジョンに2人のマスターなんて聞いた事ないです。」
「マスターはあくまでも私。」
「意味がわからないです。」
「マスターの権限をある程度委譲する。大抵の事ができる。」
「やりたい放題しちゃうよ?」
「かまわない。」
「あっ、あの、マスターはどうなっちゃうです?」
「寝てる。水の中でのんびり。」
「俺はマスター代理みたいなものか。」
「そう。マスターは私。貴方はダンジョン関係者。マスターとして活動出来る。それでいい?」
「何か制限は?」
「権限委譲だけ。」
「それならまぁ、良いかな。」
「きまり。私は寝る。」
「わっ、私はどうしたらいいのです?!」
「今まで通り。対象はこの人。」
その言葉が放たれた瞬間亜人は目を閉じる。
再び目を開いた時には――
「承知しました。お客様を今からマスター代理とします。呼び方は?」
「マスター」
「承知しました。お客様は今からマスター。マスターは今後ハイマスターとお呼びします。」
「大丈夫。」
「承知しました。」
「なんか雰囲気違い過ぎない?」
「この子は特殊。」
「マスターお肉がそろそろ煮えます。食べごろです。」
「おっと忘れてた。」
「私を食べるの?」
「ちが、、、わないのか?
まぁいいか。ほら食べるぞ。」
◇
この3人が世界の常識をひっくり返すような、驚くような事をすかどうかは
今のところわからない。
このキャラの続きが読みたい!
この設定で書いてほしい!
登場人物をこんな感じで書いてほしい!
等ありましたら、気軽にコメントください。




