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いじめられてみた(旧)  作者: ケト
いじめられてみた
9/33

対処してみた(②訴える)

「はい、今度は法的に訴えてみましたよ。

 でも、実際に訴えたら、決着が着くまでにはそれなりの時間がかかりそうですよね。

 なので、今回は損害賠償を請求することをいじめっことその両親に伝えるところまでをやってみました。

 

 今回はですね、いろいろとツテをたどって、いじめ関係に強いというか、実績のある弁護士を探しました。

 それで、内容を話して、証拠映像も観てもらって、どのような手順でどのように訴えてどのくらい損害賠償を請求できるか、教えてもらいました。

 そして、その内容を、ケッチャン自らが伝えてきましたよ。


 えっ、そこは弁護士に行ってもらえばいいでしょって?

 はい、それは間違いないのですが、今回は相手方に請求額を伝えてショックを与えたら終わる予定なので。その後、実際に法廷には立てませんしね、ケッチャン。

 あと、あんまり人と接触したくないのも理由の1つですね。弁護士と相手方でいろいろやってもらえるとは思うんですけど、弁護士と会わないといけない機会が多そうですよね。

 ケッチャン、もともと引きこもりのニートボールだし...


 かと言って、いじめっこにはちゃんとショックを与えたい!という思いも強いので、ここは一肌、いや、猫の被り物を脱いで、直接やりますよ。


 ということで、髪は引きこもり明け長めヘアーを清潔なスタイルにセットして。

 眼鏡は黒ぶちから艶かしい紅蓮のフレームにして知的に魅せて。

 マスクは白い普通の不織布のやつを、やや高価なグレーの布製マスクにして。

 スーツは高くていいやつ(笑)

 装ったのが男性か女性かは...想像にお任せします。いい年こいたおっさんと思ってもらっても構いません。


 ただ、ね、目はミタ君のときのままなので、そこが不安です。アーベーツェーに気づかれないといいな...

 とりあえず、薬局で売ってるようなグッズで、簡易的にまぶたとかをいじったので、あとは雰囲気でいくしかない!

 わたしは一流弁護士...って手のひらに10回書いて飲み込もうとしたけど、弁護士ってどう書くんだっけ、便?ってとこで終わっちゃいました。

 結局、飲み込むんじゃなくて思い込むことにしましたよ。


 あと、今回も小型カメラをつけようかと思ったんですけど、ほぼ全部ぼかしだし、アーベーツェーはともかく、両親になんのキャラクター貼るか思い付かなかったので、音声だけにしました。

 それに、録音機を机の上とかに置いて『この会話は念のため録音させていただきます』ってしたほうが、よりそれっぽい話ができそうですしね。

 加えて、盗聴ではなくちゃんと許可をとって録音するので、余罪は増えません(笑)


 今回は、いじめっこ3人の親に事前に連絡した上で、3人の自宅を訪問しています。

 訪問日時は10月10日、いじめられた次の週の土曜日の午前中です。


 自宅訪問の順番は、アー、ベー、ツェーの順にしました。キャラ名の方がわかりやすいですか?

 ガキ大将、ブタとゴリラの融合体、紅一点ペンギンの順です。

 

 全て録音していますが、今回聴いてもらうのは、最後のペンギン宅だけにします。

 やっぱり最後のほうがケッチャンも喋りがうまくなっているし、実は、ペンギン親子がなかなかのヤンチャ者だった、というのが理由です。

 ただ、伝えた内容は全部一緒ですよ。

 あと、個人情報は今回も別の音をかぶせてますからね。


 それでは、聴いてください。

 『訴えてみた』デス。ドーゾ!


 って、ごめんなさい。曲紹介っぽく格好良く決めたのにーっ。

 えーと、音声というか、会話は『録音させてもらいますね』の後に録音を開始しているので、そこからの会話です。

 何も説明なしだと、急に本題?ってなっちゃうので。

 では今度こそ、ドーゾ!」



『お忙しいところ時間をとっていただきありがとうございます。

 わたくし、”ミタ様”から弁護の依頼を受けました”ケッチャン”と申します。

 先日の電話で、用件に関してはお伝えしましたが、今回、”ミタさん”からの依頼により、”ペンギン様”への損害賠償に係る主張について説明をさせていただきます。

 当事者であると聞き及んでおりますので、経緯等は省かせていただきます。

 まず、事実確認ですが、”ペンギン様”の息子さんが、”ミタ様”のお宅を訪れ、モノを奪ったという行為に間違いはありませんね?』


『息子が、その、”ミタ君”の部屋からモノを持って行った事実は認めます。ただし、奪ったという表現は間違っていると思います。

 先日の学校での会議でも訴えましたが、息子達は”ミタ君”に借りていく、と何度も言っていましたから』

『わたしも映像を観ました。なので、それは間違いありません。

 ただし、”ミタ君”は一言も貸すとは言っていません。そして、盗られた、と言っているのも映像で確認できます』


『それは感じ方の違いが問題だと思います。

 セクハラを例にとってみますが、ただ肩の糸屑を取ろうと思って女性の肩に触れたとして、女性がそれを嫌だと感じたら、セクハラになってしまいますよね?

 被害妄想というか、過剰反応というか。

 今回だって、というか前回ですが。息子達はすぐに返すからとモノを借りたと言っています。そして、次の日にでも返そうと思って学校に持っていったら、”ミタ君”が不登校になってしまったらしく、返せなくなったそうです。

 

 それを、借りたものを返さない、と”ミタ君”が思い込んだから拒絶反応が起きただけで、見る人によっては普通の行為だと思いますよ。現に、わたしも映像を観て、ただ借りようとしていただけだと思うんです』


『感じ方の違い、そして思い込み、ですか。

 見る人によっては、と言いましたが、わたしにとっては脅して盗ったようにも見えましたけどね。

 ただし、感じ方や見え方は定量評価ができませんので。映像証拠による事実だけでの判断となりますね。

 借りたか盗ったかは別として、”ミタ君”の部屋から持って行ったのには間違いない、というのが今のところの事実ですね』

『そうですね、借りて、それを持っていったのは事実ですね』

『次にですが、これは”ミタ君”自身のものではないのですが、”ミタマンマ”のネックレスを持っていきましたね。これについては盗んだとしか言えないと思いますが』

『それは...ちょっと魔がさしたようです。映像では変なこと言っていますが、本当はその日のうちに返さないといけない、と我に返ったそうなんですが。

 でも、遅い時間になってしまったので、次の日にでも返しに行こうと思ったら学校から電話が来て、タイミングを失ったようなんです』


『後からはなんとでも言えますし、それこそ証拠がありませんから、あまり有効ではないと思えますよ。

 とにかく、ネックレスを持って行ったこと、そしてそれをネットで売る、と言ったことについては、事実と認めざるを得ませんね。映像ではっきりと確認できますので。

 そして、モノを持って行く際には、”ミタ君”を突き飛ばす行為、そして言葉で脅す行為も映像で確認できます。

 先ほどまで仰っていた、感じ方の違いがあったとしても、これは誰が観ても暴力であると感じるのではないでしょうか』

『ふざけあっているようにも見えますけどね。男同士だったら口調が荒いのだってよくあることですし。

 もしかしたら”ミタ君”の育ちが良すぎて、ちょっとした口調とか仕草にびっくりしたのかもしれませんし』


『感じ方についてここで議論しても話が進まないので、事実だけ確認します。

 ”ミタ君”は、精神的な苦痛を受けたことにより、4月に引き続き、学校に行けなくなりました。

 その直接的な原因は、借りたか盗んだか、どちらにせよ、”ミタ君”の大事にしているものを3人に持っていかれたという行為によるものです。

 ”ミタ君”が受けた精神的な苦痛についても、定量的な評価は困難です。

 また、”ミタ君”は不登校にはなりましたが、幸いにも、亡くなってはいません。

 

 これらの事実から判断をした結果、”ミタ様”は、”ペンギン様”を含めた3名様に対する損害賠償として、1人当たり500万円を請求すると主張しています。

 もちろん、主張の内容に疑義がある、もしくは反論があるかもしれません。その場合は、裁判での争い、ということになるでしょう。


 以上が、”ミタ様”からの損害賠償請求に係る主張です。

 名刺を置いていきますので、今後の進め方などについては、”ミタ様”ではなく、わたしと連絡をとるようにお願いします。

 

 何か、今の段階で聞いておきたいことなどあるでしょうか。

 もし無いようでしたら、録音機の電源を切らせていただきますが』



『...ありません。ただ、納得できる内容ではありませんので、こちらも弁護人を雇いたいと思います。目に見える事実だけ、なんてことは無いと思いますので』

『わかりました。では電源を切ります』


 カチッと音がした。が、なぜか音声は続いていた。


『話が終わったところで申し訳ありませんが、1つ確認させてもらえますか。監督責任のこともあるので。

 プライベートなこととは思いますが、奥さまはいらっしゃらないのですか?』

『...2か月前に離婚しました。原因は、相手の不倫です。だから、親権はわたしが引き取っています...って、おい”ペンギン”』

『お母さんのことなんて関係あんのかよ。そんなこと聞くんじゃねぇよ。

 だいたい、何で金なんて払う必要あんだよ。だって、借りたものは返しただろ?

 学校来ない理由なんて、もともと、ただ学校行きたくないだけかもしれないだろ。

 不登校だって被害者ぶってるけど、学校行かないで家でゲームばっかやってんだろが。

 俺らだって、引きこもらないようにゲーム持っていってあげたって言ってやってもいいんだぞ。実際、あいつの母親も、ゲーム無いほうがいいかなってぼやいてたって聞いたしよ。

 俺らのせいにばっかすんじゃねえよ。だいたい、いじめられるほうが悪いんだよ』


『続きは裁判所とか、ちゃんとした場所で話しましょうか。こちらとしては、そちら側に不利な発言をしてもらったほうが有利なんですが、録音もされていませんしね。

 では、これで失礼させていただきます。これ、わたしの名刺ですので。

 長い付き合いになってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。では』



「はい、以上です。

 おかしいなー、録音を止めたはずなのに、間違えて違うボタン押しちゃったかな。すぐポケットに入れちゃったから気づきませんでした。テヘペロ。


 ペンギン親子、なかなかヤンチャだったでしょ?

 まっっっっったく反省してないですよね。反省どころか悪いことはなに1つしてないと主張してますね。

 そして最後のペンギンの捨て台詞、ケッチャンがこの世で一番嫌いな台詞が出ました。


 『いじめられるやつが悪い』


 これ言う人って、自分がいじめられても同じこと言うんですかね...

 いやー、気分悪くなった人、ごめんなさい。みんなのどよーんを晴らすのが今回の目的だったんですけど。

 はい、じゃあこの話題は置いといて。ドスーンボガーン。重すぎて、置いたら床抜けちゃいました(笑)


 では、講評です。

 今回は、映像証拠による事実をもって法的に訴えることとし、『いじめっこ1人あたり500万円』の損害賠償請求をすることを伝えました。

 いじめられた末の不登校という結果ではありますが、精神的苦痛は定量的な評価が難しいので、この請求どおりにいくか、あるいはもっととれるか?それはケッチャンにはわかりません。

 でも、これが0円になることはないでしょう。

 まぁ、金額の大きさが問題ではなくて、罪の大きさを知ってもらいたいだけなんですけどね。


 悪いことをしていることに気づかない人達、人の心の痛みがわからない人達に対しては何を言っても無駄でしょう。きっと。

 じゃあ、どうするか。証拠を持って、法的に訴えましょう!以上。軽っ。


 では、次が最後の行動ですよ。


 『③逃げる』デス!」

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