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いじめられてみた(旧)  作者: ケト
捜査されてみた
14/33

捜査本部(その3)

 ニューケッチャンとやらに変わってから2回目の配信動画。

 4月24日、第11回目からの動画鑑賞、いや、調査を再開した。

 情報量が多くなるのでは、と推測し、ひとまずは動画の概要も抑えてみることにした。


 ここからの3回分、11~13回目は、『比べてみた』というシリーズが続いた。

 11回目は『100m、走るのと落ちるのとはどちらが速い?』という実験番組のようなもの。Kが実際にやってみたのではなく、過去にテレビで放送されたオリンピックの100m決勝と、高さ100mと謳っているバンジージャンプに挑むお笑い芸人の動画を並べ、ヨーイドンで比べるものだった。落ちるほうが速い、という結果で、この回は終わった。


 12回目は『アニメキャラの最強は誰?』で、国民的アニメのキャラクター3人の強さを解説し、実際に3人で戦ったら誰が生き残るか、というもの。選ばれたキャラは、ヤサイ人のマゴゴソラと、麦汁のノレフィ、亀有の警察官リョウツーであった。星が爆発して宇宙空間に放り出されても生き残りそうな警察官が最強、という結果でまとめられた。


 13回目の『事件遭遇数・死体遭遇数が多いのはどっち?』は、人気漫画の探偵キャラ2人のどちらが事件と死体に遭っているかをカウントし、解説するものだった。見た目は小学1年生で中身は高校3年生という謳い文句の名探偵コナムと、ジッチャンが名探偵の名探偵カネダイチイチ。原作コミック全てに目を通してカウントしたようだが、結果は、外出するたび事件と死体に遭遇する小学1年生の勝利であった。犬も歩けば棒にあたる、コナムが歩けば死体にあたる、という言葉で動画が締められた。


 

 このシリーズから始まり、メモした事柄が2つあった。まず1つ目は、画面の右下に登録者数のカウンターが追加されたのだ。

 このカウンター表示、11回目は『1人(泣)』、12、13回目はそれぞれ『53人(喜)』『2598人(超嬉)』と表示されていた。

 そして、2つ目は動画の編集がされるようになったことだ。字幕が出たり、編集した動画を表示させたり。そして、シロとネロという顔だけの、ゆっくりボイスのイラストキャラが登場したのもここからであった。

 なお、この3回で購入リストに追加されたモノは『漫画約200冊(電子書籍の可能性あり)』だけだった。



 その後は、『超でかい紙で等身大の鶴を折ってみた』『もやしを育てて1週間過ごしてみた』『豆苗を育てて1週間過ごしてみた』などの動画が続き、6月までの20回分を観終えた。 

 この6月までの動画からは、たいした情報が得られなかった。そんな中、唯一メモに追加する内容があったのは、6月19日の19回目、『いろいろ凍らせてみた』という動画であった。

 タイトルのとおり、いろいろなモノを凍らせるというもので、通常だと冷凍庫には入れないようなもの、例えば、小さいものではリップクリームやスティックのりから、大きいものでは濡らして長辺で丸めたバスタオルなどが凍らされた。

 見事に凍り、棍棒のような凶器と化したバスタオルを無邪気に振り回すK。ここでは下半身も映ったが、最後の動画と同じで、体型を予測できない濃紺の大きめのスウェットであった。

 また、背景に壁以外のモノが映り込んだのもこの回だった。画面右側にはシングルサイズと思われるベッド。白のフレームに厚めのマットレスがのった、特に変哲の無いもの。そして左奥には、冷凍庫だろうか、スーパーやコンビニの冷凍コーナーに置いてあるような、業務用の大きいやつ。この回の動画で色々なモノ、大きいモノを凍らせる目的だけのために購入したのだろうか。

 御手洗は購入リストに『業務用冷凍庫』を追加。また、とりあえず『ベッド派』と、メモをした。



 7月に入ると、御手洗が目にしたことのある動画が続いた。全集中というか、画面に食い付いていたというべきか、あっという間に残り4本の動画を残すのみとなった。


 次は9月25日、32回目の動画。タイトルは『実写漫画化を勧めてみた』である。10月16日の動画の中で『前々回の動画の視聴回数が5百万回を超えた』と言っていた、当時の視聴回数ナンバーワンの動画であったようだ。

 動画の右下、登録者数カウンターは『95,234人(^-^)モウチョイ』と表示されていた。

 いつもと変わらない台詞から始まり、本題へと移る。


「みなさん、漫画の実写映画化ってどう思いますか?

 大ヒットする映画もありますけど、中にはキャラクターのイメージと違うとか、顔は似てるんだけど声とか体型が違うとか、がっかりすることありますよね。好きな漫画ほど、どうしても自分の中のイメージと比べてしまいます。

 そこでお勧めするのが実写漫画化デス!なんじゃそりゃ、ですよね。

 漫画を実写で漫画化するのです。なんじゃそりゃ、ですよね。


 漫画の吹き出しと台詞は漫画のままで、キャラクター、物、背景を実写化、つまりは写真にするんです。

 これなら、キャラクターにそっくりな人を見つけて、漫画と同じポーズで写真を撮るだけで済みます。演技も声も動きも関係ありませんね。物とか背景は、できれば似た場所での撮影が良いでしょうけど、合成でもまぁ良いんじゃないでしょうか。

 例えば、スポーツとかアクション系の漫画だと、顔がいくら似ていても運動神経良くないと格好悪いし、ワイヤーアクションなんて吊られてる感強いですし。でも、写真ならポーズだけでイケますよね。

 というわけで、実写漫画化をお勧めします。

 ぜひ、どこかの、えぇと、出版社?お願いします!」


 動画の中では、とある実写映画化のワンシーンを切り取り、漫画のコマに貼り付けた『サンプル』が紹介された。サンプルは1ページだけであったが、なんとなく面白そうで、確かに人気漫画の1話分とか、あったら見てみたいと思った。

 なお、動画の中では、全ページカラーだから分厚くなるし値段も高そうデスね、というデメリットにも小さい声だが言及していたのだった。   



 そして、次は10月2日、33回目。

 10月9日は動画の配信がされなかったことから、生配信前、最後の動画だ。

 この動画のタイトルは『猫を飼ってみた』であった。

 猫はチンチラシルバーで、ちょっとつぶれた顔がブサ可愛く、歩く様子はモコモコしたぬいぐるみが歩いているようだった。

 リアルな猫の被り物を被った人物がリアル猫を愛でているという、何とも言えない不思議な光景。なんとなくこれまでとは趣が異なるこの回、『結局最後は子猫頼りかよ』というコメントも多かった回である。

 それでも、この回をもって登録者数が目標の10万人を突破したのは言うまでもない事実なのだが。

 おそらくペットショップで買ったのであろう『子猫』と『チンチラシルバー』を購入リストに追加したのであった。

 ちなみに、猫はメスで、『ケト』と名付けられていた。



 生放送された2本の動画を残し、全て堪能、いや、調査し終えた御手洗が隣の相棒のパソコン画面を見てみると、ぬいぐるみのような子猫が歩いている様子が映し出されていた。御手洗より数分遅いくらいで、ほぼ同じ進度であったようだ。ちなみに相棒の顔を見ると、ニヤニヤしながら、最高の癒しタイムを満喫しているようだった。


 相棒の癒しタイムが終わると、一旦、お互いがとったメモの付き合わせをした。表現が違うだけで、モノとしてはほぼ同じ内容であった。

 メモされたモノは『漫画約200冊(電子書籍か)』『動画編集ソフト』『業務用冷凍庫』『ウォーターサーバー』『ドライブレコーダー』『超小型カメラ』『監視カメラ』『子猫、チンチラシルバー』。これらは購入したと思われるモノで、その他、発言からは素性や場所の特定にあたるような情報は得られなかった。

 思ったよりも収穫がなく、ただ動画を楽しんだだけでは、と思われそうだが、情報が無いことがわかったのも重要な情報なのだ、と思い張る。

 そして、おそらくだが、超小型カメラと監視カメラは、最後の2回の動画でも登場したモノで、事前に試したのではないかと推測された。



 時刻は午後4時過ぎ。概ね予定通りである。残る10月16日と23日の動画は、2本合わせて2時間強、休憩も含めれば観終わるのは午後7時くらいだろうか。

 ちなみに、先行捜査班の今日の捜査は、動画でいじめ被害者と称されたミタ君一家、もとい『富田家』の関係者への聞き取りであった。事前の調べでは、富田家は父親の大介、母親の恵子、そして長男の恵介の3人家族であった。

 午前中に近隣の住人、そして午後には父方と母方の両方の実家への聞き取りをする予定だった。実家はどちらも県内ではあるが、それぞれ片道1時間ほどかかる距離にあるため、帰りはおそらく午後7時を過ぎるであろう。

 

 御手洗は立ち上がり大きく背伸びをすると、相棒と、よしやるか、と目配せをした。残り2本、最も情報量が多いであろう、動画確認作業を再開した。 

 


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