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第38話 「よそ者」
「あんた、よそもんやな!?」
関西に引っ越した初日、俺の言葉を聞いたうどん屋のオヤジがいきなり言った。
「ああ!今日、東京から引っ越して来たのさ」
「出て行け!東京もんは醤油漬けの黒いうどんでも食うとけ!」
俺はいきなり店を叩き出されて塩をまかれた。
この辺りの住民は東京都民に対して差別意識が強いと聞いていたがこれ程とは思わなかった。
翌日から大勢の住民がプラカードを持って俺のアパートの前に集まり、聞くに堪えないヘイトスピーチが始まった。
「東京もんは出て行け!」
俺は堪り兼ねて警察や役所に相談したが、何も解決はしなかった。
俺は外出もできずに部屋に閉じこもって、アパート前のヘイトスピーチに怯えて過ごした。
ある日、うどん屋のオヤジが俺の部屋にやって来た。
「どや?もうお前、東京に戻らんか?」
「実は俺、都民じゃないんです。千葉出身なんです。それに両親は元々関西出身なんです」
俺は泣きながら謝罪した。
「なんや、そやったんか!東京生まれとちゃうんか!」
俺は翌日から「私は関東から来ましたが地元出身者です」と書いた名札を付け、「名誉関西人」として堂々と暮らしてゆけるようになった。




