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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2014年
84/201

12月20日 炎竜神密

 その話を聞かされた時、生まれて初めて動揺した。自分とは無縁のものだと思っていたが、自分は自分が思っていた以上に人間だったらしい。


 二十歳の誕生日の日、《十八名家じゅうはちめいか》の人間は本家分家問わずに陽陰おういん町と自分たちの秘密を知る。


 この町には妖怪がいて、自分たちは妖怪の人間の間に生まれた半分妖怪の家系で、妖怪の能力を持って生まれる半妖はんようが自分たちの頭首で、町が妖怪に襲われるようなことがあれば、世界と人々を守る為に命懸けで戦わなければならないことを──私は三年前に知って、自らの宿命をしっかりと呪った。


かがり、何故濡れているの?」


 そして、今日は従弟の炬の二十歳の誕生日だった。二年前に頭首になってしまったから、私が炬に町の秘密を伝えなければならなかった。


「雪が降ってた」


「そう……。もう、雪が」


 人魂の家系で母親が半妖だからだろうか。寒さに鈍く引きこもりがちな私は、そんなことにさえ気づけなかった。


「そんなことよりも説明しろ。頭首が交代して二年。一度も仕事がなかったっつーのに、なんの用で俺をここまで呼び出した」


「何って、今日は炬の二十歳の誕生日だから」


 私に祝う気がないことを初めから察しているせいで、炬は顔を出した瞬間から不機嫌そうだった。その不機嫌を受け止める余裕が今の私には存在しない。炬にどう伝えればいいのかがわからなくて、この数週間一睡もできなかったのだから。


「何が言いたい」


「長くなる。から、そこに座って」


 傷つけたいわけではない。愛しているわけでもない。死ねと言いたいわけでもなくて、生きてと願うほど傲慢でもない。

 炎竜神えんりょうしん家に生まれた者は皆、未成年の頃から救いようがないほどに手を汚していた。特に分家は本家ができないような汚い仕事を引き受けている。これは頭首になってから知ったことだけど、そんな私が分家の炬に対して今更幸せを願うことはできなくて、ただ、不幸にすることしかできなくて──そんな自分の立場が嫌になる。


 言わなきゃ。早く。どっちにしろ炬にとって私は悪魔なんだから。



「──陽陰町には、妖怪がいる」



 炬は表情を変えなかった。


「現実逃避、しないで」


「してねぇ。してるのはお前の方だろ」


「組長」


「組長がわけのわかんねぇことを言ってるんだろ」


 その気持ちは痛いくらいによくわかった。


 あの日の私がそうだったように、炬も自分を呪うのだろうか。宿命を呪うのだろうか。


 その時脳裏を過ぎったのは、綿之瀬有愛わたのせアリアと名乗った少女だった。

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