4月23日 ベラ・ダンカン
コーデリアは私の娘ではない。私の娘はクレアだけ。そう思っていたけれど、コーデリアに愛を注いで育てていたら情が湧く。
「コーデリア、よく聞いてね」
コーデリアの頭を撫でた。コーデリアには生きていてほしかった。
クレアと同じ顔なのにまったく違う魂。クレアの妹、私の娘だと錯覚してしまうから──コーデリアには酷い死に方をしてほしくなかった。
「なぁにー?」
「貴方のお爺様は、オウインチョウという国の、とても強い力を持った一族の一人なの。……でも、本家じゃないから貴方の代からは力が継承されない。要するに貴方は、そういう意味では〝なりそこない〟みたいな子供なの」
オリバーが日本人とのハーフだということは知っていたけれど、名家出身だということは結婚した後で聞かされたことだ。そのことに対して悲しんだことも怒ったこともない、嬉しいと思ったこともない。周りの人間が何者だとしても、オリバーはオリバーだから。
「ふぅーん」
コーデリアは興味がないのか適当な相槌を打つ。けれど、私の話はきちんと聞いていた。
「でも、貴方はクローンとして私たちが生み出したものだから。いつか、もしかしたら、力が発現するかもしれない。そうしたらあの国に行って、王族の一員になるかもしれない」
「オウゾクになるの?」
コーデリアが私の顔を覗き込む。王族になることには興味があるようだ。
「仮定の話よ。だって、王族の一員や家来になってほしいから貴方を生み出したわけじゃないもの。それに、王様や王族、その家来になったら殺されちゃうからね」
「そうなの? 良かったぁ。わたし、死にたくないもん」
そう。私もコーデリアを死なせたくない。守りたいからこんな話をしている。
「そうよね。誰も、死にたくないものね。でも大丈夫。例え力が発現しても、貴方には英国でみんなの役に立ってもらうわ。でもね、コーデリア。万が一の為に約束をしてほしいの」
「やくそく?」
日本には盗られたくないから、強く強く抱き締める。
「一生子供のままでいなさい」
そうしていたら、王様には絶対にならない。子供が王様になったらその国は崩壊するから。子供のままでいたら、コーデリアはきっと──危ない目に遭わないから。
「こどものままで?」
「そう、大人になっちゃいけないの。……わかった?」
だから約束してほしい。
大人になんてならなくていい。
「うん! コーデリア、オトナにならないっ!」
一生可愛い娘でいてほしいから、そう願った。




