4月21日 鬼寺桜槐樹
確信した。私の子供は半妖だと。
母様も、他の家の現頭首たちも、〝その子〟が産まれた瞬間に同じ確信をしたらしい。虎丸が産まれた時性別が男だったからわからなかったけれど──椿が産まれてきてくれたから、私も理解することができた。
「……半妖」
呟き、周りにいた一族の人間が歓喜に湧く。椿が産まれてきた瞬間に喜んでいた虎丸は、何故周りが遅れて喜んだのか理解していなかった。
虎丸を残して助産師以外の全員が一斉に部屋の外に出ていく。他の一族の人間や、他の《十八名家》の人間にも報せる為だろう。
「虎丸」
「あ、はい!」
虎丸が産まれてから十二年。一族の人間には長い間待たせてしまった、京馬さんには重圧を与えさせてしまった。
「京馬さんに……連絡を」
一族の人間は、私の夫であっても京馬さんを鬼寺桜家の人間だと認めていない。だから私や虎丸からでないとその報せを受け取れない。
「わ、わかりました」
虎丸が携帯電話を持って京馬さんにメールを打つ。私はその間、ずっと椿から視線を逸らさなかった。
ずっと、微かな違和感があったのだ。
椿は半妖だ。私と同じ鬼の子だ。なのに──それだけではない何かをこの子の奥底から感じてしまう。
「槐樹」
「母様」
「その子は、まさか」
「まさか、なのですか」
いつの間にか部屋に来ていた母様も私や椿と同じ半妖だ。同じ半妖だから──感じる。わかる。
「貴方の本能を信じなさい」
そう言われてしまったら、断言しなければならない。私は鬼寺桜家の現頭首、だから──覚悟を決めなければならない。
「虎丸」
「はい?」
「椿は、鬼寺桜家の祖である鬼の生まれ変わりです」
「え?」
椿の赤い髪を撫でる。その額に角はない。小さな口の中に牙はない。椿はどこからどう見ても人間だけれど、半妖で──紅椿の、生まれ変わり。
椿の内側から禍々しい力が渦巻いているのを、私も母様も感じていた。
「私に〝もしも〟のことがあって、椿に〝もしも〟のことがあったら、鬼寺桜家の威信にかけて──」
母様が聞いている。本当はこんなことを言いたくないけれど、現頭首だから。母様から受け継いだ、仕方のない私たちの運命だから。心を殺す。
「──殺しなさい」
虎丸にこんな運命を背負わせたくなかった。虎丸には幸せになってほしかった。
椿。ごめんなさい。貴方を呪いの子として産んでしまって。
どうか、貴方の最期だけは──幸せなものでありますように。そう願うことだけは、土地神様も許してくれるだろう。




