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百鬼戦乱舞 ―語草―  作者: 朝日菜
2006年
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45/201

4月21日  鬼寺桜槐樹

 確信した。私の子供は半妖はんようだと。


 母様も、他の家の現頭首たちも、〝その子〟が産まれた瞬間に同じ確信をしたらしい。虎丸とらまるが産まれた時性別が男だったからわからなかったけれど──椿つばきが産まれてきてくれたから、私も理解することができた。


「……半妖」


 呟き、周りにいた一族の人間が歓喜に湧く。椿が産まれてきた瞬間に喜んでいた虎丸は、何故周りが遅れて喜んだのか理解していなかった。

 虎丸を残して助産師以外の全員が一斉に部屋の外に出ていく。他の一族の人間や、他の《十八名家じゅうはちめいか》の人間にも報せる為だろう。


「虎丸」


「あ、はい!」


 虎丸が産まれてから十二年。一族の人間には長い間待たせてしまった、京馬きょうまさんには重圧を与えさせてしまった。


「京馬さんに……連絡を」


 一族の人間は、私の夫であっても京馬さんを鬼寺桜きじおう家の人間だと認めていない。だから私や虎丸からでないとその報せを受け取れない。


「わ、わかりました」


 虎丸が携帯電話を持って京馬さんにメールを打つ。私はその間、ずっと椿から視線を逸らさなかった。


 ずっと、微かな違和感があったのだ。


 椿は半妖だ。私と同じ鬼の子だ。なのに──それだけではない何かをこの子の奥底から感じてしまう。


槐樹えんじゅ


「母様」


「その子は、まさか」


「まさか、なのですか」


 いつの間にか部屋に来ていた母様も私や椿と同じ半妖だ。同じ半妖だから──感じる。わかる。


「貴方の本能を信じなさい」


 そう言われてしまったら、断言しなければならない。私は鬼寺桜家の現頭首、だから──覚悟を決めなければならない。


「虎丸」


「はい?」


「椿は、鬼寺桜家の祖である鬼の生まれ変わりです」


「え?」


 椿の赤い髪を撫でる。その額に角はない。小さな口の中に牙はない。椿はどこからどう見ても人間だけれど、半妖で──紅椿あかつばきの、生まれ変わり。


 椿の内側から禍々しい力が渦巻いているのを、私も母様も感じていた。


「私に〝もしも〟のことがあって、椿に〝もしも〟のことがあったら、鬼寺桜家の威信にかけて──」


 母様が聞いている。本当はこんなことを言いたくないけれど、現頭首だから。母様から受け継いだ、仕方のない私たちの運命だから。心を殺す。



「──殺しなさい」



 虎丸にこんな運命を背負わせたくなかった。虎丸には幸せになってほしかった。


 椿。ごめんなさい。貴方を呪いの子として産んでしまって。


 どうか、貴方の最期だけは──幸せなものでありますように。そう願うことだけは、土地神様も許してくれるだろう。

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