12月25日 スザク
生き物の音。心の音。瞳を開けると女性が私のことを見下ろしていた。
「おはよう、スザク」
「────」
スザク。それが私の名前だということを知っている。
私は顎を引いて、女性の腕の中にいる赤ん坊の存在に気がついた。
「私は芦屋朝日。貴方は私の式神じゃなくて……」
え? 違うの?
眉間に皺を寄せた瞬間、赤ん坊が私に向かって手を伸ばしてきた。
「……この子の、芦屋結希の式神にさせる為に私がこの手で生み出したの」
「ッ?!」
この子、の? この赤ん坊の?
「あははっ、ものすごく嫌そうな顔をしてるわね」
視線を朝日様に戻すと、朝日様は心から笑っているように見えた。
「何故、私が赤子の式神になるのでございますか」
「そうね、ごめんなさい。ちょっと急いじゃったわね」
「ちょっとどころではございません」
「あはは、ごめんなさいって。急に欠員が出ちゃったから焦っちゃったのよ」
欠員──その言葉が引っかかる。私はずっと見ないようにしていた朝日様の背後へと視線を向け、青色の式神と目を合わせた。
「…………」
彼は何故黙っているのだろう。無表情を貫いているけれど、その顔には何故か影が見える。
「彼はセイリュウで、私の式神よ。セイリュウ、挨拶しなさい」
「えぇ、そうですね。初めまして、スザク。私はセイリュウです」
同じことを朝日様から聞いていたから、なんの為に口を開いたのだろうと思って視線を伏せた。
「二人とも、仲良くね」
その言葉の意味がわからなかった。
「あぁ〜」
まだ言葉が喋れないのだろうか。結希様がまた私に向かって手を伸ばす。
あまりいい空気とは言えないけれど、彼の纏う空気はとても柔らかくて──何故かいい匂いがした。
「…………」
「わかるのかしらね。スザクが自分の式神だって」
手を伸ばすと、結希様も手を伸ばす。結希様は動けないから私が仕方なく進んでいくと、結希様の手が私の指をぎゅっと握った。
「ッ」
「あ〜!」
幼いから、たいした力強さを感じない。陰陽師様の力も感じなくて、けれど、守りたいとは思ってしまって。
「結希、様」
彼の名前を口にする。まだ彼のことは主だと認められないけれど。
「ねぇスザク。式神の家に行く前に少しだけこの子と一緒にいてくれない?」
「え?」
「今日はクリスマスなの。準備をしたいから、セイリュウと一緒に見ていてくれる?」
「承知いたしました」
そう言ったのは私ではなくセイリュウだ。子守りを押しつけられたと思ったけれど、結希様の手は温かかった。




