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閑話の閑話その4

 社交会。今年もそのシーズンがやってきた。

 毎年このシーズンになると胃が縮こまるような気がする。

 貴族の嗜み。今でも私は慣れられない。

 だというのに人間側と魔族側。

 このラナ公爵領はその特殊な立ち位置から領主としてどちらの社交会にも顔を出さないといけないのだから堪らない。

 助かっているのは両種族が少しシーズンをずらしてくれているところだろうか。

 それとルリとサラがラナ公爵家の令嬢として何処に出しても恥ずかしくない活躍、所作を身に着けていること。

 もしかしたら私以上に二人は貴族たりえているかもしれない。

 おかけで二人ずつでどちらかの社交会に出席するだけで済む。

 ルリとサラがいなかった頃は私とトリシアで両方に出席しなければならなかったから本当に大助かりだ。

 我が娘とその恋人ながら二人共そのスペックの高さが凄い。


 人間側よりもひと月遅れでシーズンとなる魔族側の社交会。

 今回私とトリシアはこちらを担当。


「お美しいご令嬢様方。シャンパンはいかがですか?」

「いただくわ」

「私もいただくわ。ありがとう」


 燕尾服の魔族からシャンパンを受け取って飲む。

 私もトリシアも私の前世日本で言えばまだ未成年だけど、子供の頃からワインを一般的に嗜むこの世界・時代ではそんなこと関係ない。

 炭酸入りの白ワインとでも表現するべきだろうか。

 独特の渋みと酸味、その中にほんのりと甘さが口の中に広がった。


「おお。アルマとその奥方ではないか!」


 トリシアと二人。シャンパンの味を楽しんでいると私達を見かけて駆けて来るアガレス公爵様。

 このような場でそのような。

 ルリが人間側の社交パーティより魔族側の社交パーティに参加したがる理由がよく分かる。

 正直私もそうだ。


「次はいつ我が領地に来るのだ?」


 満面の笑みでアガレス様からの質問。

 私は少しだけ間を置いてその質問に応える。


「そうですね。娘が近々伺うと言っていたと思います」


 ブロッサム商会はもう私の手にはない。

 娘のルリに百パーセント譲渡している。

 相談を受けたり、稀に一緒に視察をしたりするにはするが、基本的には私は商会のことに口出しはしない。

 ので商会長としてのルリのスケジュールも実はあんまり把握していなかったりする。

 その為自分の応えに少し疑問の残る言い方になってしまった。


「おお、そうか。それは楽しみだ。ところでアルマよ。またバエル様に将棋で完敗したらしいな」

「思い出させないで下さいよ」


 バエル様と初めて将棋を差した時から何度目の再戦となるだろう。

 今もって私は雪辱を果たせていない。

 こちらが様々な局面を勉強して臨んでもバエル様はその上を行く。

 毎回初回と同じように守りを丸裸にされての屈辱的な負け。

 いつか、絶対、いつか、勝つ。


「安心しろアルマ。魔族の誰もバエル様に勝てる者は今もっておらん。お前だけじゃないぞ」

「アガレス様もですか。ああ、私に負けてるのですから当然ですよね」

「むっ。いつか負かすぞ」


「ふふっ」


 私とアガレス様のやり取りにトリシアが笑み。

 その愛らしくも凛とした美しい笑顔を見ていると、私はこの先いくら時が過ぎてもトリシアが好きなこと変わらないだろうなぁと心から思う。


 見惚れて堪能。

 私の視線に気付いて頬を薄く紅に染めるトリシア。


「はしなかったかしら?」

「全然そんなことないわ。綺麗だなって見惚れていたのよ」

「うむ。アルマは可愛らしいが奥方は美しいな」


 私が可愛い?

 アガレス様の言葉で私は首を傾げる。

 私は人並みだと思うのだけど。


「まぁ。アガレス様もアルマの魅力がお分かりになりますか」

「ああ。奥方が夢中になるのも理解出来るぞ。最もアルマが奥方に夢中になるのも分かるがな」

「アガレス様、さすがですわ」

「人間はアルマの魅力に気付かぬのか?」

「いいえ、いいえ。気付かないのは本人ばかりで」

「ふむ。そうか。奥方も気苦労が絶えぬな」

「ええ....」


 トリシアとアガレス様が私を見ながら嘆息。

 完全に置いてけぼり。

 私は何かを訴える二対の双眸を身体に受けながらひとしきり首を捻った。


 それから私達はアガレス様の紹介で今より尚一層様々な魔族の貴族と繋がりを持つことが出来た。

 中にはその場でアガレス様と同様の盟友の契約を結んで下さる方もいてラナ伯爵領と魔族方との繋がりはより強固なものとなった。

 魔族側社交会シーズン。初日が終わりに近づく。


「アモン侯爵にエリゴス公爵、ゼパル公爵とも盟友の契約を結んだか。実に有意義な会であった」

「ええ。アガレス公爵様の口添えのおかげです」

「ラナ公爵家との係わりは強めておきたかったのでな」

「!! もしかしてそれが狙いですか」

「聞けばアルマの娘も人間側の王族・貴族と様々な契約を結んだとか。ならば我ら魔族も、な。おっと。口が滑りすぎたか」


 アガレス様がわざとらしく片目を瞑って茶目っ気。

 私とトリシアは二人それを見て苦笑いする。

 なるほど。やはりこの方も貴族。

 私達はまんまとその手法に乗せられたというわけだ。

 親密さゆえの油断。

 と言ってもこちらも利はあっても害はないけれど。


「どうだ。我が公爵領への訪問も追加せぬか?」

「そうですね。まんまとしてやられましたし」


 今回は予定していなかったアガレス公爵領への訪問。

 私達は急遽伺うことになり、当然将棋に明け暮れることになった。

これにて完結です。

長い間のお付き合いありがとうございました。

拙い文章ですが、読んでいただいた皆さまにお礼申し上げます。


又ブックマーク及び評価をくださった皆様本当にありがとうございました。

心からお礼申し上げます。


最後になりますが新連載開始しております。

世界観はがらりと変わりますが、もしよろしければこちらもよろしくお願いします。


転生したら最強の魔法使い。ルナと愉快な仲間達の異世界ゆる物語。

https://ncode.syosetu.com/n7674fd/

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