出会い
足音。
ゆっくりと。
一定のリズムで。
何かが廃墟の中から近づいてくる。
アエリスは振り返った。
そして固まった。
影の中から、小さな姿が現れる。
彼は瞬きをした。
「……え?」
それは怪物ではなかった。
いや、正確にはそうとは言えない。
その生き物は、せいぜい50センチほどの大きさだった。
灰銀色の毛並みが、灰色の世界の光をわずかに反射している。大きな耳が左右に垂れ、ふわふわした尻尾がゆっくりと揺れていた。
青い瞳が、アエリスをじっと見つめている。
そこに敵意はない。ただ純粋な好奇心だけがあった。
小さな生き物は首をかしげる。
「ぴぃ?」
[解析中…]
[種族:ルミエル]
[危険度:なし]
[特徴:ネロス原生種。友好的。好奇心が強い。]
アエリスは黙ったまま、その生き物を見た。
そしてシステムを見る。
もう一度、生き物を見る。
「……さっきの音、こいつか?」
ルミエルはほっぺをふくらませた。
「ぴぃー!」
そして石の上に飛び乗り、
次の石へ跳び、
足を滑らせて、
そのままアエリスの足元まで転がってきた。
沈黙。
アエリスは一瞬固まったあと——
笑った。
久しぶりの、心からの笑いだった。
ルミエルは不思議そうに見上げる。
「ぴぃ?」
アエリスはしゃがむ。
「……危険じゃなさそうだな」
ルミエルはそっと小さな手をアエリスの手に置いた。
その瞬間。
体にわずかな熱が走る。
そして空中にウィンドウが現れた。
[条件達成]
ネロス原生生物との初の友好接触
[スキル取得]
▶ エンパシー(共感) Lv.1
効果:生物の感情や意図を簡易的に感知できる
アエリスは目を見開いた。
「……スキルだと?」
ルミエルは首をかしげる。
そしてその瞬間——
アエリスは“理解した”。
言葉ではない。
感覚として。
この存在に敵意はない。ただの好奇心だと。
もう一つのウィンドウが現れる。
[特殊条件達成]
初めてのリンク形成
[スキル取得]
▶ 直感コミュニケーション Lv.1
世界が静かになる。
そして——
声が響いた。
頭の中に直接。
「お兄ちゃん、へんな人だね」
アエリスは固まった。
「……喋った?」
ルミエルはゆっくり首を振る。
「ちがうよ。君が分かるようになっただけ」
静寂。
しかし今までと違い、この世界は少しだけ“温度”を持ち始めていた。




